日本の年金制度は国民皆年金であり、国民年金保険料の納付が義務づけられています。しかし、国民年金保険料の未納率の高さが問題視されており、「国民年金保険料の未納問題」と呼ばれています。
未納の理由としては、「経済的に支払うのが困難」が大半ですが、年金制度への不安や不信などから意図的に未納にしている人も少なくない状況です。
そこで本記事では、国民年金保険料が未納だと一体どのような不利益を被ることになるのか、主なデメリットについて紹介します。
※本記事は2022年6月時点の法令に基づいて作成しています。公的年金に関する最新の情報については日本年金機構や関係省庁のサイト等でご確認ください。
日本の公的年金制度では、加入者は職業や年齢などに応じて以下のように3つの区分に分かれます。第1号被保険者と第3号被保険者は国民年金に加入し、第2号被保険者は国民年金と厚生年金(または共済)に加入します。
対象者 | 年金保険料の納付方法 | |
---|---|---|
第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満の自営業者・学生・無職の人など | 自分で納付書などを用いて納付する |
第2号被保険者 | 会社員や公務員など | 保険料が給与天引きされる |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者 | 自分で納める必要はない(保険料は加入する年金制度が負担) |
自営業者や学生などの第1号被保険者は、月額約1.6万円の国民年金保険料を自分で納付する必要があります。納付の義務がある以上、国民年金保険料は払わなければいけませんが、実際には、さまざまな理由から未納になっている人がいる状況です。
平成30年度分の国民年金保険料の納付率は68.1%で、約3割の人が未納になっています。国民年金保険料は本来の納付期限から2年が経過すると原則として納付できなくなりますが、2年が経過する令和2年度までに納めた人も含めた平成30年度分保険料最終納付率は77.2%です。
最終納付率でみても2割以上の人が国民年金保険料を納めていません。5歳階級別にみると25~29歳で納付率が最も低く、おおむね年齢が上がるにつれて納付率が高くなる傾向にあります。
会社員など第2号被保険者は年金保険料が給与から天引きされるので未納になることはなく、会社員の妻や夫など第3号被保険者も保険料の納付が不要なので未納の問題は起きません。
しかし第1号被保険者は自分で保険料を納付するため、さまざまな理由で未納になる場合があります。国民年金保険料を未納にする理由として、最も多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という理由です。
国民年金保険料を納付しない理由 | 割合 |
---|---|
保険料が高く、経済的に支払うのが困難 | 76.0% |
納める保険料に比べて、十分な年金額が受け取れないと思う | 6.1% |
年金制度の将来が不安・信用できない | 5.4% |
うっかりして忘れた、後でまとめて払おうと思った | 3.6% |
厚生労働省・日本年金機構が信用できない | 2.8% |
これから保険料を納めても加入期間が短く、年金がもらえない | 2.1% |
すでに、年金を受ける要件を満たしていたから | 0.5% |
その他 | 3.7% |
出典:「令和2年国民年金被保険者実態調査」(厚生労働省)
次に多い理由が、「納める保険料に比べて、十分な年金額が受け取れないと思う」と「年金制度の将来が不安・信用できない」ですが、これは高齢社会で年金受給者の数が年々増えていることや出生率の低下などへの不安感が要因と言えるでしょう。
国民年金保険料を未納にするとさまざまなデメリットが生じます。未納のままにすると、必要なときに年金を受け取れないなど、自分自身が困る可能性があるので注意が必要です。
以下では国民年金保険料が未納だと一体どのような不利益を被ることになるのか、主なデメリットについて紹介していきます。
令和4年度の国民年金保険料は月々16,590円で、20歳~60歳までの40年間にわたって保険料をすべて納めると、65歳から年間で約78万円、1カ月あたり約6.5万円の年金を老後に受け取ることができるとされています。
実際の国民年金受取額は物価変動などを考慮して変わる場合があり、令和4年度の年金額は1カ月あたり64,816円です。
ただし、老後に老齢基礎年金を受け取るためには以下の要件を満たす必要があり、要件を満たさない場合には受け取ることができません。
受給資格期間には、第1号被保険者として国民年金保険料を納めた期間や第2号被保険者として厚生年金保険に加入していた期間などが含まれます。しかし国民年金保険料が未納だった期間は含まれません。
未納期間が長くて受給資格期間が10年に満たないと老後に年金を一切もらえず、定年で収入が途絶えた後、年金もなく生活に困る可能性があります。
また受給資格期間が10年以上あって老齢基礎年金をもらえる場合でも、年金を満額でもらえるとは限りません。満額で受給できるのは保険料をすべて納めた人です。
年金額は、20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金保険料の納付月数や厚生年金の加入期間等に応じて計算されるため、仮に未納期間があると、受け取れる年金が満額よりも少なくなります。年金額は以下の式で計算するので、未納期間については年金額に反映されません。
出典:「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(日本年金機構)
仮に40年間のうち保険料を納めた期間が10年間しかなく30年分が未納の場合、年金額は満額の4分の1になるため年間で194,450円となり、1カ月あたり約1.6万円しか年金をもらえません。
国民年金保険料を払っている人が一定の要件に該当すると、障害基礎年金や家族が遺族基礎年金を受け取ることが可能です。
障害の状態になって収入が減った場合や、一家の働き手が亡くなって家族が残された場合でも、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができれば生活費などに充てることができます。
ただし、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取るためには国民年金保険料をしっかり納付していることが必要です。年金保険料の未納期間によっては受給要件を満たさず、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れません。
さらに、国民年金保険料が未納だと未納保険料納付勧奨通知書(催告状)が届き、電話や個別訪問によって保険料を納付するように督促が行われる場合があります。滞納処分や財産の差し押さえが行われて、未納分を強制的に徴収される場合もあるので注意が必要です。
一定の所得があり、国民年金保険料を払えるにも関わらず長期間滞納している場合は、財産の差し押さえ等が行われる可能性があると考えたほうが良いでしょう。
国民年金保険料の納付は義務付けられており、未納のデメリットや年金受給額にかかわらず、しっかり納付することが大切です。
経済的な理由などで国民年金保険料を払えない場合、所得が一定額以下などの要件を満たせば、保険料の免除制度や納付猶予制度、学生納付特例制度を利用することができます。
これらの制度の適用期間は未納の扱いにならずに済むため、保険料の支払いが難しい場合は申請手続きを行いましょう。
しかし、未納の扱いにはならずに済みますが、老後の年金額は減ってしまいます。これらの制度を利用した場合は、10年以内であれば追納が可能です。追納すれば老後の年金額が減らずに済みます。
また、保険料の追納は年金額を減らさずに済むだけでなく、節税につながるというメリットもあります。
国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象で、その年の1月1日から12月31日までに納付した保険料は全て今年の所得控除の対象になります。節税効果が期待できるので、保険料を払えるようになったら可能な限り追納をしましょう。
なお、免除制度や猶予制度を利用していない方でも、納付期限から2年以内であれば後から収めることが可能です。ただし、2年を過ぎてしまうと後から収めることはできなくなってしまうので注意が必要です。
日本の年金制度は国民皆年金となっており、保険料を納付することは国民に義務付けられています。全額が社会保険料控除の対象になっており、万が一の際には障害年金や遺族年金を受け取ることも可能です。
積極的に納付を行い、将来や万が一の際に備えましょう。
前述の通り年金の支払いは国民の義務ではありますが、年金受給額だけでは老後の資金が賄えないと不安の声が多いのも確かです。
国民年金保険料をしっかり支払っていたとしても、将来受け取れる年金額は月々64,816円です(※1)。この金額では足りないと不安を感じるのも不思議ではありません。
(※1)令和4年度の老齢基礎年金(満額)
令和2年の「家計調査報告(家計収支編)」によれば、世帯主65歳以上の2人以上世帯(無職世帯)では1カ月平均230,514円の消費支出が発生しています。
夫が自営業、妻が専業主婦でともに第1号被保険者である場合、老後に受け取れる年金額は満額で1カ月あたり約6.5万円×2人分となるため、夫婦あわせて約13万円です。
国民年金だけでは、平均的な支出額に対して1カ月あたり10万円ほど生活費が不足する計算であり、老後の資金としては決して十分な金額ではありません。「老後に必要な生活費を賄えず、困るのではないか」と不安に感じる方がいるのも無理はありません。
年金受給額だけでは不足してしまう生活費は、資産運用で補う必要があります。
以下では、通常の年金受給額だけでは老後が不安という方に、老後の資金対策としての資産運用方法を紹介します。
外貨預金とは、外国通貨建ての預金のことです。金利は通貨によって異なりますが、現在の金利環境において、通貨によっては、円預金よりも好金利で運用できる可能性があります。さらに、為替相場動向によっては為替差益も期待できます。
ただし、為替相場の変動によって為替差損が発生し、円ベースで元本割れとなる可能性もありますので、注意が必要です。
株式は株式会社が資金を出資してもらった株主に対して発行する有価証券です。多くの投資家が売買益を得ることを目的として株式投資を行っています。
株式は債券と比べると値動きが大きく、売買益によって大きな利益を得られる可能性がある半面、大きな損失を被るリスクもあります。売買タイミングや銘柄の選定には知識と経験が必要となるでしょう。
投資信託とは、投資家から集めたお金を専門家が運用し、その運用益が投資家に配分されるという金融商品です。また、投資信託は複数の株式や債券などに分散して投資するため、リスクを軽減することが可能です。
ただし、投資信託は種類が多く、選定にはある程度の知識が必要です。また、専門家が運用するため、運用管理費(信託報酬)などの手数料が発生します。コストがかかりやすい点に注意しましょう。
以上のように、資産運用にはさまざまな方法があります。家計への負担を軽減するためにも、なるべく早いうちから資産運用を始めるとよいでしょう。
しかし、資産運用が初めての方の中には、どの商品をどのようなタイミングで購入したら良いか分からず、資産運用になかなか踏み切れないという方もいるでしょう。そのような方には、今話題のロボアドバイザーを活用した資産運用がおすすめです。
ロボアドバイザーとはロボットがインターネットやスマートフォン上で投資のアドバイスを行うサービスであり、資産運用を一任して自動化することができます。資産運用に関する知識が不足しがちな初心者でも、手軽に「長期・積立・分散」という資産運用の王道を実践できます。
たとえば、大和証券のロボアドバイザー「ダイワファンドラップオンライン」は、最先端のテクノロジーと金融工学に基づき、ロボアドバイザーが資産運用の目的や運用期間に合った最適な運用プランを無料で提案してくれます。
運用が自動化されているので国内外の株式・債券・REITへの国際分散投資が可能で、投資初心者でもリスク分散を実践しながら資産運用を行うことができるでしょう。
また、月々1万円から手軽に始められる定期積立サービスによって、計画的な資産形成をサポートします。
老後のことを考えて計画的に資産形成を行う方は、ロボアドバイザーを活用した資産運用をぜひ検討してみてください。
国民年金保険料の支払いは国によって義務付けられていますが、現状は約3割が未納となっており問題視されています。
未納の背景には年金受給額への期待感の薄さや制度への不安がありますが、支払わないままでいると障害基礎年金の受給への影響や財産差し押さえなどのリスクもあるためしっかり納付しましょう。
公的年金だけでは老後の生活が不安という方は、資産運用によって老後資金対策を行うことも選択肢のひとつです。日本年金機構のWebサイト「ねんきんネット」を使えば、現在までに支払った年金保険料から予想される年金受取額が確認できるので、金額を確認した上で、資産運用によって老後の資金をいくら準備すべきか検討してみましょう。
資産運用を行って、老後の生活資金を増やすことができれば、よりゆとりをもった生活を送ることができます。手間とリスクを抑えながら資産運用を行いたい場合には、ロボアドバイザーを活用した資産運用を検討してみましょう。
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大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。
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