先日、60代後半の知人がこんなことをおっしゃっていました。「今、働いていて、年金を受け取るとカットされるから、受け取っていない。これからもなるべく受け取らずに働いて、将来、俺が亡くなった後、妻が受け取る年金を増やしたい」
とても奥さま想いの、そんな旦那さんなのですが、このコメントの中には、在職老齢年金と繰下げと遺族厚生年金、この3つが複雑に絡み合っていて、少し誤解されている部分もあるようです。今回は、この三角関係を一つずつ、解きほぐしていきたいと思います。
① 在職老齢年金と繰下げの関係
在職老齢年金で年金がカットされるなら、年金は繰下げて、退職してから増額された年金を受け取りたい、これはよくある誤解でしたよね※。残念ながら、在職老齢年金で支給停止される額は繰下げの増額対象にはなりません。
② 繰下げと遺族厚生年金の関係
では、年金の繰下げ中に、その旦那さんが亡くなった場合、奥さまが受け取る遺族厚生年金は繰下げによる増額率だけ増えるのでしょうか?実は繰下げて増える対象は、本人が受け取る老齢厚生年金であって、本人が受け取らない遺族厚生年金は増えません。
また、繰下げと遺族厚生年金の関係だけで言えば(旦那さまが65歳以降、働いていないとすると)奥さまが受け取るのは、旦那さまが65歳時点の年金額で計算された遺族厚生年金になります。
③ 遺族厚生年金と在職老齢年金の関係
ところで、在職老齢年金で年金がカットされている旦那さんが亡くなると、奥さまが受け取る遺族厚生年金もカットされるのでしょうか?これも②と同じ考え方、在職老齢年金でカットされるのは、本人が受け取る老齢厚生年金であって、本人が受け取らない遺族厚生年金はカットされません。そして、奥さまが受け取るのは、旦那さまが亡くなった時点の年金額で計算された遺族厚生年金になります。
つまり、奥さまが受け取る、遺族厚生年金の観点から考えると、旦那さまの在職老齢年金による年金カットも繰下げによる年金増額も、どちらも関係ないのです。
なお、奥さまは遺族厚生年金の他、旦那さまへの未支給年金(65歳から亡くなったときまでの年金)も受け取ることになりますが、これは旦那さまが受け取るはずだった年金ですから、在職老齢年金調整後の金額になります。また、年金の時効は5年ですので、年金を繰下げている旦那さまが70歳を過ぎて亡くなった場合、65歳からの支給分を一部受け取れなくなりますので、こちらも要注意ですね。ご参考まで。
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2024/11/29作成
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