ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.343(2025年2月7日)退職金とiDeCo/iDeCoを先、退職金を後に受取る場合

令和7年度税制改正では退職金税制が一部見直されました。退職金とiDeCoの関係で影響があるのは、iDeCo一時金を先、退職金を後に受取る場合になります。どれくらいの影響があるのか、改正前と改正後で比較してみましょう。

さて、改正前とは現行税制ですから、退職金を受取る「前年以前4年内」にiDeCo一時金を受取っていた場合、退職金について退職所得控除の調整が必要となります。そのため、5年以上前にiDeCo一時金を受取っていた場合(例えば、60歳でiDeCo一時金、65歳で退職金受取)が、税制上、最も有利な受取方になります。

なお、お勤めの方の退職金は60歳支給が多いと思いますが、改正前を前提とすると、今後、定年が65歳になる(昭和42年4月2日以降生まれの)公務員の方々が取り得る選択肢となったはずです。具体的には以下のようなケースです。

この場合、iDeCoが先で、5年後に退職金を受取るので退職所得控除の調整が不要となります。また、退職所得控除として、それぞれ480万円(=40万円×12年[1年未満切上])、2410万円(=40万円×20年+70万円×23年)を差し引くことができるので、税金はかからないことになります。

次に改正後、令和8(2026年)以降にiDeCo一時金を先、退職金を後に受取る場合、退職金の「前年以前9年内」のiDeCo一時金は退職所得として退職所得控除の調整が必要となります。調整対象期間が拡大されて増税になるのですが、先ほどのケースで実際の影響を試算してみます。

まず、iDeCo一時金を受取る年、一時金よりも退職所得控除が大きいので税金はかかりません。では、退職金を受取る年はどうなるのか?iDeCo受取時は退職所得控除を使い残しているので、受取済の一時金(300万円)から計算される「みなし勤続年数(300万円÷40万円=7年[1年未満切捨])」をもとに、使用済の退職所得控除は280万円(=40万円×7年)となり、調整後の退職金受取時の退職所得控除は2130万円(=2410万円-280万円)、課税対象額は35万円(=[2200万円-2130万円]×1/2)になります。税金と言ってもそれほどかからないので、まだiDeCo積立期間が長くない公務員にとって、「iDeCoを先、退職金を後の受取パターン」は、改正後も検討に値する選択肢だと思います。

*なお、60歳で受取らず、より長く、より多く積み立てて、税金がかかってもiDeCo資産自体を増やすという選択肢があることも、念のため、お伝えしておきます。

  • ※1 公務員のiDeCo上限額(2024/12まで月1.2万円、2025/1以降は月2万円)で2017/1から2028/3まで積み立てた193.2万円を年率8%で運用すると、iDeCo資産は約300万円。
  • ※2 地方公務員の定年退職金平均額は2000万円~2200万円(令和5年度)

大和証券
2025/1/9作成

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