ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.326(2024年10月4日)財政検証のオプション試算で占う、公的年金制度改正の行方

2024年7月、厚労省より公表された公的年金の財政検証結果では、各シナリオごとの前提条件等を投影した将来の見通しを作成するとともに(言わば、財政検証におけるメイン試算)、今後、想定される制度改正等を踏まえた、いわゆる、オプション試算も示されています。逆に言えば、このオプション試算の内容を読み解けば、今後の公的年金の制度改正の方向性や確度を類推できる、ということにもなります。そこで、今回のコラムでは、財政検証のオプション試算について、一つ一つ、その試算の意味合いを確認し、これからの公的年金の制度改正の行方を占ってみましょう。
2024年財政検証オプション試算の概要とその影響※1

さて、上の表はオプション試算の概要と保険料や給付への影響をまとめたもの。大きくわけると①と④、⑤が厚生年金の改正、②が国民年金の改正で、③が両方の改正。但し、②は財政検証が公表された社会保障審議会で、国民に保険料負担を強いるのは難しいので早々に改正は断念。そうなると、厚生年金の改正ばかりになりますが、決して、国民年金の財政状況改善を断念したわけではないと思います。その理由として考える筆者の見解※2は以下の通りです。
- A)
今回のメイン試算では女性や高齢者の労働参加が進み、公的年金の財政状況改善が示されましたので、①の「被用者保険の更なる適用拡大」が進むでしょう。
- B)
④の「在職老齢年金制度の見直し」は高所得者優遇と捉えられかねず、将来の給付水準も下がるので、公的年金の議論だけでは実現は難しそうですが、高齢になっても長く働く人たちのインセンティブ確保の観点と、⑤の「標準報酬月額の上限見直し」で高所得者の負担増とセットであれば、実現可能かもしれません。
- C)
特に①と⑤の改正で厚生年金の財政を更に改善させ、③の「マクロ経済スライドの調整期間の一致」、簡単に言えば、厚生年金の一部財源を移転することで国民年金の財政も改善する、そんな狙いがあるように思います。
以上、あくまでも筆者の個人的見解ですが、ご参考まで。
- ※1 出所:厚生労働省HP「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」をもとに筆者が作成
- ※2 なお、本コラムは筆者の個人的見解に基づくものであり、筆者が勤務している大和証券の公式な見解を示すものではありません
大和証券
2024/8/16作成
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