ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.257(2023年6月9日)国民年金は払うべきでしょうか?損する気がしています…

先日、金融リテラシーやライフプランのこと、大学1年生に講義する機会がありました。今回のコラムタイトルは学生からの質問の一つです。以下、私の回答になります。ご参考まで。

  • Q:
    国民年金は払うべきでしょうか?私たちが受け取る側になる時は80歳は過ぎているだろうし、そこまで生きる予定がなければ損する気がしています。資産運用で個人的に貯めていく方が有用だとは思いませんか?
  • A:

    現状、公的年金の支給開始年齢は65歳です。ご質問では「80歳は過ぎて…」とおっしゃっていますが、現在、日本では支給開始年齢を65歳よりも後ろにずらす、という話は全く議論されていません。

    「議論されていないからって、将来、支給開始年齢が後ろにずれないとは言えないのでは?」と言われれば、おっしゃる通りです。でも、もう1つ覚えておいてほしいのは、日本の公的年金は諸外国にはない、年金額を調整する仕組みがある、ということ。逆に言えば、諸外国ではそうした仕組みがないので、年金財政が苦しくなってくると、支給開始年齢を後ろにずらすことしか打ち手がない、ということでもあります。

    では、日本にあって、諸外国にはない、年金額を調整する仕組みとは何か?公的年金の金額は、原則、賃金や物価水準に応じて改定されるのですが、日本の公的年金ではそれに加えて、現役世代と高齢者の割合であるとか、平均寿命の伸びに応じて、賃金や物価水準による年金額上昇を抑えることができるのです。これが、「マクロ経済スライド」と言われる仕組みです。

    今の高齢者には「物価が上がったのに年金が増えないと困る」という話しになります。でも、皆さんの立場で考えるとどうなるでしょう?今の年金額を抑えると、将来、皆さんが高齢者になった時の年金額がその分確保できる、単純に言えば、そういうことなのです。マスコミ報道では悪名高い「マクロ経済スライド」ですが、その仕組みが年金財政の健全性維持に役立つ、だから、現時点では支給開始年齢引き上げは日本では議論されていない、そんなふうに理解いただきたいと思います。

    なお、「資産運用で個人的に貯めていく」という点は大賛成です。「マクロ経済スライド」による年金額調整が行われると、年金財政の健全性維持には役立つものの、皆さんが高齢者になったときに受け取る年金額が、老後生活を送るのに必要な購買水準に欠ける状態になるかもしれないからです。それでも、公的年金がなくなるわけではないとすれば、保険料を払わずに「資産運用で個人的に貯めていく」という“一本足打法”ではなく、保険料を払いながら「資産運用で個人的に(も)貯めていく」という“二刀流”で備えるほうが、令和時代の今どきの考え方だと思いますよ(笑)。ご参考まで。

  • ※ なお、上記回答は、講義において、基本的な公的年金の仕組み(老齢年金は長生きリスクへの備えであり、その他、障害年金や遺族年金といった保険機能も兼ね備えていること、等)を説明した上でのアンサーだとご理解ください。

大和証券
2022/12/9作成

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