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マイクロファイナンスの現場から お金を借りることで生活の糧を稼ぎ、家畜や貴金属ではなくお金を貯蓄できるようになった!よりよい生活をおくる手助けとなっているマイクロファイナンスの実態について実務者の視点から解説!(隔週更新)

[更新日:2010年4月28日]

第7回 マイクロファイナンスを技術協力事業に併用させることの弊害

技術協力とマイクロファイナンス

ODA(政府開発援助)やNGOの実施する援助事業の中で、何らかの技術協力活動の一部としてマイクロファイナンスを実施するものがあります。例え ば母子保健事業として妊産婦や乳幼児の保健衛生の改善に取り組むと共に、対象となる女性の家庭内での経済力を強化するために、小額貸付けによって収入創出 活動(例えば縫製業、養蜂業)を支援するようなものです。こうした事業は、女性が夫の収入に依存している限り、家庭内での発言力は強まらず母子保健への取 り組みが進まないという経験を踏まえています。したがって、母子保健事業の一貫として女性の経済力を強化するための起業支援に取り組んでいます。あるい は、有機農業といった特定の農法を広めたり、果樹などの栽培技術を伝える上で、これを促進するために対象となる農家に小額貸付けを行うような事例です。所 得の低い地域の農家に対して、単に技術を伝えただけでは援助事業の目的は達成されないため、資金面でのサポートをあわせて実施する必要があると考えられて います。こうした事業は、技術面と資金面の支援をあわせて多面的・包括的に協力に取り組むもので、一見、とても効果的な事業のように見えます。実際こうし たタイプの事業も多く実施されています。しかし、途上国におけるマイクロファイナンスの実務者の間では、この種の支援事業の評判は総じて芳しくないです。 現地のマイクロファイナンス事業全体を歪めてしまうので止めて欲しいといわれます。金融がそもそもの目的ではない技術協力活動にマイクロファイナンス活動 を組み入れて実施することは、いったいどこが悪いのでしょうか。

目的の不一致

第一の問題は技術協力活動とマイクロファイナンスの目指すものが必ずしも一致しないことです。技術協力活動が目指すのは、当然ですが本来の技術協力 の目的達成です。上の事例であれば、母子保健の改善や有機農法の普及となります。これらの目的が達成されなければ、他にどのような効果があったとしても当 該援助事業は成功したとはみなされません。一方、マイクロファイナンスは小額貸付け事業であり、事業を持続的に運営してゆくためには、貸付金がきちんと返 済されることが重要です。返済を最優先に考えた場合、当該援助事業が技術協力の対象としていないビジネスに資金を投与したほうが有望であるかも知れませ ん。例えば、母子保健事業でも夫に貸し付けたほうが当該世帯にとってビジネスの成功に繋がるかもしれませんし、技術協力が対象とする有機農法よりも、携帯 電話のレンタル業でも始めたほうが儲かるかもしれないです。その場合、事業者側はどう対応するのでしょうか。返済には目をつぶり、技術協力の目標達成を優 先するならば、マイクロファイナンスとしての持続性は失われることになります。

責任の所在

第二の問題は返済の責任が曖昧になりがちになる問題です。技術協力事業のアドバイスに忠実にしたがって、なんらかの収入創出事業や特定の農法に着手 して、その後になって仮にビジネスが失敗したらどうなるのでしょうか。失敗の責任は誰がとるのでしょうか。借入人としたら当然に返済の免除を求めるでしょ う。しかし、いったん返済を免除してしまえば、ここでも事業の持続性は失われてゆきます。

事業終了後の運営

第三の問題は事業終了後の資金の運営です。ODA事業でもNGOの事業でも、技術協力活動は長くても3年から5年程度を期限に実施されるのが通常で す。事業の終了後、技術協力事業の活動費は無くなり、外国人専門家も帰国します。一方、マイクロファイナンスは貸付資金が返済されれば内部に留保され、そ れが次の対象者に貸し付けられます。資金が返済される限り、半永続的に貸付は実施されます。通常、技術協力事業の終了後、資金の管理は、事業の現地側の協 力団体(カウンタパート)に引き継がれることになります。しかし、現地カウンタパートの多くは金融が専門ではなく、保健医療とか農業といった当該分野の専 門家集団です。マイクロファイナンス事業を適切に実施する能力に長けている保障はありません。仮に何らかの理由で一部の借入人の返済が滞り返済が免除され れば、他もこれに追従するのは必然であり、小額の貸付事業はいつのまにか小額の「贈与」事業に転じかねません。現地カウンタパート側としても通常業務に手 一杯であり、片手間に事業を続けるメリットも感じず、こうした流れを止めるだけの能力も意欲もありません。

地域に根ざした金融サービス

本来、マイクロファイナンスは半永久的に続いてゆくはずの事業であり、数年間という期限のある技術協力事業にはなじまないものです。技術協力事業に 安易にマイクロファイナンス活動を組み込むことは持続性が無いだけでなく、「返済しなくても済む」という誤った認識を現地住民にもたらす恐れがあります。 途上国で技術協力事業を実施する際に、対象地域の受益者の資金不足が、事業目的を達成するための制約になっていることは少なくないでしょう。しかし、ここ で安易に事業にマイクロファイナンスという活動を付け加えることは賢明な選択ではありません。対象地域でマイクロファイナンス専業の事業者が活動していれ ば、こうした事業者との連携をまず考えるべきです。そうした専業事業者が存在しない地域でも、いきなり貸付を行うのではなく、住民に対して貯蓄を奨励した り、頼母子講といったその地域に昔からある互助制度を活性化したりすることからはじめるべきです。

 

(三井久明)

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ライタープロフィール
三井久明(みつい ひさあき)
専門分野はマイクロファイナンス、公共財政、民間部門振興、援助政策。 早稲田大学大学院経済学研究科修士課程およびUniversity of Sussex (IDS) Mphil課程修了。1990年に財団法人国際開発センターに入職し、現在は主任研究員。明治学院大学および早稲田大学にて非常勤講師を勤める。主に東南 アジア、南アジア地域において貧困削減、産業振興、国営部門改革にかかわる各種の調査研究に従事。
鳥海直子(とりうみ なおこ)
専門分野はマイクロファイナンス、農村金融、開発経済、農村開発。 世界銀行認定マイクロファイナンス・トレーナー。Institute of Social Studies 開発経済学修士課程修了。民間企業勤務、アジア経済研究所開発スクール、留学を経て、1994年に財団法人国際開発センターに入職し、現在は主任研究員。 市場経済移行諸国における農業開発、アフリカ農村地域の生計維持についての調査研究等、農業・農村開発分野を中心とした複数の調査研究に従事。
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