2024年7月、厚生労働省より公的年金の財政検証結果が公表されました。今回は財政検証資料から、公的年金制度における積立金の役割を確認してみたいと思います。 さて、財政検証資料※1には積立金の役割が以下のように記載されています(赤字、フリガナは筆者によるもの)。
公的年金制度では、年金給付に要する費用をそのときの現役世代の負担によって賄う「賦課(ふか)方式」を基本としつつ、一定の積立金を保有しそれを活用する財政方式を採用している。このため、保険料と国庫負担が財源の中心であり、積立金は補助的な役割となっている。
一方、公的年金の財政状況、2023年度の実績見込みは収入が109.8億円(うち運用収入54.8億円)、支出が54.6億円で、収支が+55.2億円になりますが、収支から運用収入を除くと+0.3億円。つまり、保険料と国庫負担で支出が賄えているのです。でも、運用収入が50億円以上で積立金残高が290兆円もあるので、「補助的な役割」と言われてもピンとこないかもしれませんね。
但し、これは単年度の状況。公的年金は将来に渡る安定的な給付が求められているので、単年度ではなく、もっと長い期間で確認する必要があります。そんなことも踏まえているのでしょう、今回の財政検証では、おおむね100年間に渡る公的年金のバランスシートが作成されています。
公的年金の給付と財源の内訳(バランスシート)※2
今後の経済前提次第で、バランスシートの数字自体は変わりますが、おおよそ変わらないのは財源に占める積立金の割合、「補助的な役割」とご理解頂けるでしょう。そして、これを個人の老後における財源と考えれば、保険料とは国の保障、国庫負担は勤め先の保障で積立金は自助努力と言えるかもしれません。国と勤め先の大きな土台があって、プラスアルファで自助努力を考える、そんな人生100年に備えるためのセオリーも確認できるのが、今回の財政検証だと言えるでしょう。
大和証券
2024/7/19作成
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