ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.299(2024年3月29日)新NISA批判へ回答②/中間層の資産形成促進策なのか?

ちょうど新NISA前夜の昨年末、私のもとに以下のような取材依頼がありました。

「新NISAは金持ち優遇制度なのではないか。あるいは、新NISAは中間所得層の資産形成の促進策であって、投資に回せる余裕のない低所得者層には恩恵がないことを考えれば、中間所得層と低所得層の間の不公平に繋がらないか。これらの批判についてコメントを頂戴したい」

前回お伝えしたように、この取材で私はまず、「年間投資枠の大幅拡大も、非課税保有期間の無期限化も、新たに導入された非課税保有限度額とセットで考えれば、新NISAは金持ち優遇制度だとは言えない」と申し上げました。今回は、新NISAが中間層の資産形成の促進策だと言えるのかどうか、検証してみます(なお、中間所得層と低所得層の間の不公平感に繋がるか否かは、次回お伝えする予定です)。

新NISAは中間所得層の資産形成の促進策なのか?

さて、そもそも新NISAとは中間所得層の資産形成の促進策なのでしょうか?NISAの利用状況を踏まえると、その答えはYes。昨年12月に開催された日本証券業協会の証券戦略会議の資料から、いくつかのデータを紹介しましょう。

■NISA口座の所得区分別利用状況

  • 一般NISA利用者のうち、約7割は年収500万円未満
  • つみたてNISA利用者のうち、約7割は年収500万円未満
  • 一般NISA、つみたてNISAともに中間層を中心に利用されている(日本の平均給与は433万円)

■NISA口座の保有金融資産別利用状況

  • 一般NISA利用者のうち、約4割は金融資産1,000万円未満
  • つみたてNISA利用者のうち、約7割は金融資産1,000万円未満
  • 一般NISAは中間層の高齢者(資産活用層)を含め幅広い世代で利用されているため、金融資産は高くなる傾向があり、つみたてNISAは中間層の資産形成層である若年層に多く利用されているため、金融資産が低くなる傾向がある(日本の家計の平均保有金融資産は単身世帯で1,062万円、2人以上世帯で1,563万円)

上記データに基づき、一般NISAとつみたてNISAをあわせて考えると、NISA利用者の約7割は年収500万円未満であり、過半数は金融資産1,000万円未満となるので、NISA制度は中間層の資産形成のために活用されていると言えるでしょう。

  • ※出所:日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会「直近のNISAの利用状況と新しいNISAに向けた官民の取組みについて(2023年12月)」

大和証券
2024/3/15作成

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