ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.279(2023年11月10日)ライフプランセミナーFAQ⑪/なぜ、米国の金融政策が注目されているのか?

20代と30代向けのライフプランセミナーでの質問です。

「米国中央銀行の利上げで、日本の景気に影響が出るとニュースで聞きます。どんな原因で影響が出るのですか?」

基本的なことですが、おさえておくべきは金利はどのように決まるのか。まずは景気と金利。景気が良くなるとモノを買うためにお金を借りる人が増える(資金需要が増す)ので、金利は上昇します。逆に景気が悪くなると、金利は下落します。

そして、物価と金利。物価が上がる、つまりインフレになると、モノを買うためにお金がたくさん必要になる(資金需要が増す)ので、金利は上昇します。逆に物価が下がる、つまりデフレになると、金利は下落します。

以上が景気や物価と金利の関係になりますが、先に金利が動けば景気や物価に影響を及ぼすという逆に関係もあります。これが中央銀行が行う金融政策。景気が悪くなって物価が下がってくるとデフレ脱却を目指すために政策金利を下げたり、逆に景気が良くなりすぎて物価が上がってくるとインフレ懸念を払拭するために政策金利を上げるのです。米国中央銀行の利上げとは、まさに後者のこと。つまり、米国景気と物価上昇を抑制したい、今、米国の金融政策には、そのような意図があるのです。

次は日本の金利への影響。米国の金利が高くなる→米国で資産を運用したほうが得になる→円を売ってドルが買われる→円安になる→輸入製品の価格が上がる(日本の物価が上がる)→日本の金利が高くなる、はずです。ところが、日本の中央銀行である日銀は、現時点では低金利政策を維持したまま。つまり、利上げの米国と低金利な日本では、金利面では円よりもドルの魅力が更に増すことになる、だから米国が利上げを始めた昨年来、円安が進んでいるのです。

あとは日本の景気への影響。米国は日本にとっては中国に次ぐ貿易相手国、利上げで米国景気が抑制されれば、日本の景気も悪くなるのでしょうか?面白いのは、そうとは限らない、ということ。というのも、米国中央銀行が目指しているのは、物価の安定と持続的な経済成長を実現し、雇用の最大化を図ることだからです。利上げで米国景気をほどよく減速させ、持続的な経済成長を後押しできれば、それは日本の景気にも好影響が期待できるでしょう。一方、急速な利上げで米国景気にブレーキをかけすぎると、日本にもマイナスの影響が及びますし、利上げが中途半端で米国景気が過熱しすぎると、かつてのバブル崩壊のようなことが起こらないとも限りません。ですから今、米国中央銀行に求められているのは、とてもデリケートな政策金利の匙加減。だからこそ、日本の景気のみならず、世界の景況感を推し量る上でも、最も注目されているのが米国の金融政策なのです。

大和証券
2023/9/29作成

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