ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.277(2023年10月27日)ライフプランセミナーFAQ⑨/老後は年金と貯蓄だけでは足りないのか?

20代と30代向けのライフプランセミナーでの質問です。

「資産運用等をしなければ平均寿命くらいまで生きた場合、年金と貯蓄だけでは足りないのか」

そうですね、このご質問を聞いて思い出すのは4年前のこと、世間で話題というか炎上した「老後資金2000万円問題」のことですかね。もうコロナ禍前のことになりますので、改めてこの問題を振り返ってみましょうか。

事の発端は金融審議会市場ワーキンググループ報告書、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均的な姿を見ると、毎月の赤字額が約5万円となっている、とのこと。そして、不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1300万円、30年で約2000万円の(金融資産の)取崩しが必要になると指摘しました。

この指摘を受けて、SNS等で「老後は年金だけでは過ごせないのか?これでは話しが違うじゃないか!」と炎上したわけですが、よくよくこの報告書を見てみると、こんな記述もあるのです。

「老後の生活においては年金などの収入で足らざる部分は、当然保有する金融資産から取り崩していくこととなる。65 歳時点における金融資産の平均保有状況は夫婦世帯、単身男性、単身女性のそれぞれで、2252万円、1552万円、1506万円となっている」

ですので、かつて大炎上した「老後資金2000万円問題」の報告書にある分析や記述に基づいて、ご質問に回答するのであれば、「平均寿命くらいまで生きた場合、年金と貯蓄だけで足りないことはない」と言えるのではないでしょうか。

最後に、この報告書を読み解く上で、支出と貯蓄、そして収入に関する留意事項を申し上げておきます。ご参考まで。

  • ① 毎月の不足額が約5万円になる高齢夫婦無職世帯の収支には、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいない
  • ② かつては10年預貯金すればお金が2倍になる時代もありましたが、今や超低金利、預貯金だけではお金は増えない時代ですから、報告書にある65歳時点の金融資産を鵜呑みにしない
  • ③ 一方、高齢夫婦無職世帯の年金収入は、専業主婦世帯が前提ですが、今や共働きが当り前の時代ですから、報告書にある平均的な姿ではなく、それぞれの世帯構成にあわせて見積もるべき(なお、老後の定期収入を確保する上では、“共働き”こそが最強の選択肢だと思います)

  • ※出所:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)

大和証券
2023/9/15作成

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