ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.270(2023年9月8日)ライフプランセミナーFAQ②/自宅を売却したときの税金

50代と60代向けのライフプランセミナーで、実際に寄せられたご質問です。

「相続者がいないため、家を引き払う(取り壊す)時に注意することがあれば教えていただきたい。(税金など)」

いろいろなケースが想定され、一概に言えない部分もありますので、自宅を売却した時の税金のこと、整理してみます。

不動産を売却したときの利益に税金がかかる

不動産を売ったときの利益は「譲渡所得」と呼ばれ、所得税と住民税がかかります。「譲渡所得」は売却金額そのものではなく、取得費(不動産の取得にかかった費用)や譲渡費用(売却のときにかかった費用)を差し引いた残りが基準になります。この残りがマイナスだと税金がかかりません。

不動産の所有期間で税率が変わる

「譲渡所得」には長期譲渡所得と短期譲渡所得があります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら短期譲渡所得となり税率は39%※1、所有期間が5年超なら長期譲渡所得となり税率は20%※1です。税法上の決め事ですが、例えば12月に売却しても所有期間は1月1日時点での判定になります。この点は要注意ですね。

譲渡所得の税金は、他の所得とは別に計算する

不動産を売却したときの税金は、確定申告で納めます。この利益に対する税金の計算は、給与などの他の所得とは別に計算します。これを分離課税と言いますが、所得税や住民税の負担が増えることに違いはありません。そうなると、気になるのは社会保険料への影響ですが、給料を基準に計算される健康保険や共済組合の社会保険料が増えることはありません。一方、総所得を基準に計算される国民健康保険では、不動産を売った翌年の社会保険料が一時的に上がる可能性があることには注意が必要です。

自宅の売却にはさまざまな特例が設けられている

自宅の売却代金はその後の生活で必要な資金でもあることから、さまざまな特例が用意されています。特に確認したい特例が「居住用不動産を譲渡した場合の3000万円特別控除」。自宅の売却なら譲渡所得から3000万円を差し引ける特例で、譲渡所得が3000万円までなら税金がかからないのです。先ほどの国民健康保険でいう総所得にカウントされるのは、控除後の譲渡所得になりますので、控除が適用されるかどうかが大きなポイントになりますね。主な適用条件としては「自宅の売却、または住まなくなってから3年後の年末までに売却」、「売却した年、前年、前々年に買い換え特例※2や住宅ローン控除の適用を受けていない」などになります。所有期間は問われない特例ですが、10年超所有なら、譲渡所得6000万円以下の部分について税率が14%になる軽減税率も合わせて利用できます。ご参考まで。

  • ※1 いずれも令和19年までは復興特別所得税が上乗せされ、短期39.63%、長期20.315%となります
  • ※2 自宅を売って新しい自宅に買い換える場合、税金を繰り延べできる特例(今回の質問は引き払いが前提のため、説明は割愛)

大和証券
2023/7/19作成

ライフプランコラム
「いま、できる、こと」トップページ

TOP