ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.224(2022年10月21日)20代のお金の知恵/21歳、国民年金の損得勘定に異議あり

先日、ある大学で証券投資実践講義の1コマとして、ライフプランニングの授業を受け持ちました。受講者のほとんどは大学3年生。21歳になり、人生ではじめて自分のライフプランを考える、そんな人が多かったようです。

学生が一番イメージしづらいのが老後資金。ですから、まずは公的年金(老齢年金)とは、現役世代から高齢者への仕送りであり、障害年金や遺族年金といった保険機能も備えている、そんな仕組みを説明しました。その後、「国民年金は保険なので、損得だけで語ることはできないのですが…」と前置きしたうえで、こんな説明をしたのです。

「令和4年度の国民年金保険料は月16,590円、40年間だと約800万円になります。同じく、老齢基礎年金の満額は年777,800円ですから、ざっくりではありますが、10年と少し、年金を受け取れば保険料の元が取れますね」

あくまでも分かりやすさを優先し、あえて紹介した損得勘定なのですが、学生からはこんな感想が寄せられました。

「国民年金の損得勘定について800万を40年間で支払い、10年で元がとれると言っていましたが、あくまで支払も受取も令和4年の計算であるため、本当に支払った額が10年で元がとれるとは思えないです。保険料は年々上がりますし、受取額も減っていくため、“今”ではなく、“今後”に視点を置き計算してほしかったです」

この学生の感想、言葉尻をひとつひとつ解きほぐすこともできますが、それはちょっと大人げない…(苦笑)。「“今後”に視点を置き計算してほしかった」との要望に真摯に応えようと色々と調べてみたところ、一つの試算にたどりつきました。

1995年生まれの国民年金給付負担倍率※1

1995年生まれの国民年金給付負担倍率

これは厚労省による公的年金の財政検証結果レポートからの抜粋、レポート作成時の2015年に20歳、1995年生まれの試算です。経済前提は8つのシナリオのうち、真ん中辺りの2つと下から2番目、年金給付額は保険料を払い終える60歳時点の平均余命まで長生きすると想定。それぞれの保険料負担額と年金給付額を、賃金上昇率で65歳時点の価格に換算※2、つまり、“今後”に視点を置き計算したものです。今後、保険料の負担は増えますが、それを上回る給付額が見込める、そんな試算になっています。

もちろんこれも単なる試算、公的年金の保険機能(安心のメリット)を考慮したものではありません。ただただ、学生の声に真摯に応える、そんな試算としてご確認いただければと思います。機会があれば本人にも伝えたいですね(笑顔)。

  • ※1 厚生労働省年金局数理課「平成26年財政検証結果レポート」を参考に筆者が作成
  • ※2 正確には、さらに物価上昇率で現在価値(平成26年度時点)に割り引いた金額

大和証券
2022/8/5作成

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