ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.186(2022年1月21日)介護費用の相場観/未経験者と経験者の驚きのギャップ

正直、介護って考えたくないですよね。だからこそ、自分事(じぶんごと)として備えられないのだと思います。それでは逆に、他人事(ひとごと)ではあるものの、介護には平均的にどれくらいのお金がかかるのか、そんなことを知るのも介護に備える第一歩になるかもしれません。今回は、先日公表された「生命保険に関する全国実態調査※1」から、介護費用の相場観を確認したいと思います。

まずは、まだ介護を経験したことのない人が、その費用をどれくらいだと考えているのか。世帯主または配偶者が要介護状態となった場合に、公的介護保険の範囲外の費用として必要と考える資金を尋ねたところ、平均値は初期費用で234万円、月々の費用は15.8万円、介護の必要期間は181.2か月(15年1か月)となっています。初期費用と月々の費用に必要期間をかけあわせた費用の合計額は総額で3,097万円※2。あれほど騒がれた、老後資金の2,000万円でも全然足りない、そんな金額なのです(驚)。過去4回(2009〜2018年)の調査結果から計算しても、同じくらいの金額になりますので、介護未経験者は「介護に備えるには3,000万円必要だ」と考えているようです。

一方、この実態調査では、介護を経験したことがある人や今、介護真っ只中の人にも同じように、実際に介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)や介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)を尋ねています。介護費用として、平均値は一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)が74万円、月々の費用は8.3万円、介護期間は61.1か月(5年1か月)となっています。一時費用と月々の費用に介護期間をかけあわせた費用の合計額は総額で581万円※3。少し数字を丸めると、介護経験者は「介護費用は600万円くらいだ」と言っているのです。つまり、実際に介護でかかった費用は、未経験者が介護費用として必要と考える資金の1/5なのです(驚)。

この大きなギャップをどういう風に考えればいいのか。備え方としては、2つあると思います。1つは介護未経験者の立場から、3,000万円という金額は、そうやすやすとは準備できませんので、介護保険を活用する、という備え方。もう1つは介護経験者の知見を参考に、600万円という金額を土台として作る、という備え方です。どちらも一理ありますが、私のお薦めは後者です。

なぜなら、老後のリスクは「介護」だけではないからです。もしかしたら「がん」や「臓器不全」に悩まされるかもしれません。あらゆるリスクに保険で備えようすると、お金がいくらあっても足りませんし、他の用途にも使えません。であれば、まずは貯蓄や投資で介護に備えた土台を作り、老後のリスクに柔軟に対応できるようにする、そんな風に考えれば、介護に備えた第一歩も踏み出しやすくなると思います。ご参考まで。

  • ※1 出所:生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」
  • ※2 3,097万円≒234万円+15.8万円×181.2か月
  • ※3 581万円≒74万円+8.3万円×61.1か月

大和証券
2021/11/5作成

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