ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.154(2021年6月4日)老後資金2000万円が55万円になっても変わらないこと

いわゆる「老後資金2000万円問題」の根拠になっていたのが、2017年の高齢夫婦無職世帯の家計収支。月平均の赤字が5.4万円、30年間だと不足額が2000万円になる、という計算でしたね。実は、2020年の家計収支だと、月平均の赤字はわずか1541円!2000万円問題と同じ計算をすると不足額は55万円に減っているのです。金融庁の報告書でも「あくまで平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる」とありますので、不足額のブレは百も承知ですが、実際にどれくらいブレているのか少し確認してみました。

高齢夫婦無職世帯の家計収支差

高齢夫婦無職世帯

これだけブレる数字だと、2000万円という数字自体はあまり参考にならないことが改めて理解できますね。また、2019年と比べて2020年の収支差が大きく改善したのは新型コロナの影響です。収入では特別収入が大きく増えています(2019年比で+1.3万円、以下同様)。新型コロナの特別定額給付金によるものですね。支出では教養娯楽(▲0.4万円)と交際費(▲0.5万円)に加え、外食・被服及び履物・交通費も減っていますので、コロナ禍の外出自粛が如実に統計に表れているのでしょう。収支は改善したけど素直には喜べない、そんな統計結果だと思います。新型コロナ感染者数のリバウンドは困りますが、家計収支の支出がリバウンドできるような状態に早く戻って欲しいものです。

ところで、私が現役世代の皆さまにご認識いただきたいと常々思っているのは、高齢夫婦無職世帯ではなく、高齢夫婦勤労者世帯の家計収支差です。前者と同じように時系列で比較した結果は以下の通りです。

高齢夫婦勤労者世帯の家計収支差

高齢夫婦勤労者世帯

無職世帯と同様、数字自体はブレています。勤労者世帯においても2020年には新型コロナの影響が出ていることもうかがえます。でも、高齢になっても働いていれば、毎月の収支は常に黒字です。また、どの年代も収支は改善傾向にあるので長く働く人が増えているのでしょう。つまり、老後資金2000万円が55万円になっても、長く働くことの大切さは変わらず、その重要性はさらに増している、ということだと思います。

  • ※出所:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」、収支差(=実収入−実支出)は筆者が試算

大和証券
2021/3/26作成

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