5、6年前に話題になった、フランスの経済学者ピケティさんの著書、『21世紀の資本』を覚えていますか?先日観た映画版ではピケティさん本人がこんな風におっしゃっていました。
「産業革命の始まる1700年から過去3世紀を見ると、世界経済の成長率は年1.6%です。長期的な資本収益率は4~5%なので、実は資本の収益率は歴史的にずっと経済の成長率よりも高いのです。」
有名なピケティさんの不等式「r>g」のことですね。rは資本収益率のことで、株主や地主が投資で得られる収益率、gは経済成長率のことで、働いて得られる給料の伸び率と言えます。端的に申し上げれば、長期的には働くよりも投資のほうが得ってことですね。でも、それは都合よく切り取りすぎているかも知れないので、近所の図書館で借りた『21世紀の資本』を読んでみることにしました。
700ページもある本なので「r>g」以外にもたくさんのことが書かれていました。その中でも、現役世代の皆さまに役立つと思われる、資産形成の考え方を少しご紹介しましょう。
ピケティさんが検証した4~5%のrは、あくまでも過去の実績で、将来もその水準を維持できるかどうかはわかりません。「r>g」だとしてもrの水準自体が過去のgと同じくらい、つまり、1%程度になる可能性もあるのです。
1年間で1%程度の成長だとたいした変化には感じないかも知れません。でも、時間の枠組みを30年に広げると見方が変わる、とピケティさんは言います。なぜなら、年率1%でも30年の累積成長率は35%以上になるからです。「複利の法則」とも言い換えることができますが、「長期・積立・分散投資」による資産形成にも当てはまる法則だと思います。
ペイゴー方式とは、現役世代の保険料がそのまま高齢者の年金として支払われることで、日本の年金制度も同じです。その反対、つまり、自分の保険料を積み立てて、将来年金として受け取るのが積立方式です。受け取る年金は、ざっくり言えば、積立方式はrで、ペイゴー方式はgで増える計算になります。つまり、「r>g」なら積立方式のほうが良さそうに思えるのです。でも、ピケティさんは、年金制度は積立方式に置きかえるべきではない、と主張します。というのも、「r>g」といってもrはかなり変動率が高いので、老後生活の土台を予測可能な形で確保するためには、ペイゴー方式のほうが望ましいから、というのが理由です。
とは言え、10年、20年待てる人ならrはかなり魅力的だとピケティさんも言います。低成長の時代だからこそ、将来、gで確度高く見込める公的年金を土台にしながら、その補助的役割として個人の資産形成でr(投資)を活用することがもっと重要になる、とピケティさんは説きます。私もそう思います。
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2021/3/19作成
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