先日、年金事務所の方と一緒にセミナー講師を務めました。年金事務所でお客様相談に携わっている方の話はさすがです。複雑な公的年金の制度を順序良く噛み砕いてご説明されていて、こんな相談員なら私も年金相談に行ってみたい、という気持ちになりました。私はこの相談員の方には遠く及びませんが、今回は、私がセミナーで話す公的年金の鉄板ネタをご紹介します。
セミナー終了後、「知らなかった」とか「気付かせてくれてありがとう」と感謝の声を聞くのが、国民年金保険料の「免除」と「納付猶予」は違う、ということです。「免除」には1/4、半額、3/4、全額の4種類がありますが、年金額は全額免除の月でもゼロではなく、0.5カ月分として計算されます。なぜなら、国民年金の半分は税金で賄われているからです。一方、「納付猶予」は保険料の「免除」ではなく、納付時期を遅らせているだけです。保険料をさかのぼって納付することを「追納」といいますが、「追納」をしないと、「納付猶予」の月の年金額はゼロで計算されるのです。
令和元年度の国民年金保険料は月16,410円、1年分で約20万円になります。学生だとそんな大金はおいそれとは出せないでしょうから、学生納付特例制度を利用されていた方が多いはずです。そうした方々に「学生の納付特例は免除ではなく納付猶予です。10年以内に追納しないと将来の年金額に結びつきません。老後資金準備の第一歩はお金を貯めて追納することですね。」とお伝えすると、皆さん、慌てた様子でセミナーを熱心に聞き始める、というわけです。
こんな風にセミナーの場が温まってきたところでご紹介するのが、「追納」のメリットです。まず、「追納」すると当然、将来の年金額が増えます。例えば、2年分で40万円の保険料を追納すると、生涯にわたり年金額が約4万円増えることになります。さらに、国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。つまり、年末調整か確定申告をすれば節税になるのです。所得税率10%、住民税率10%とすると、税負担が約8万円(追納した40万円×20%)軽減されます。これは社会人になり、国民の義務として税金を納めているからこそ得られるメリットです。
ここまで説明すると、「学生の頃、国民年金保険料は親が払ってくれました。社会人になって親に返しています。この返済分は社会保険料控除の対象になりますか?」という質問をたまに受けます。私は「残念ながらなりません」と答えた後、それ以上説明するか迷ってしまいます。なぜなら、質問された方が学生の頃、親御さんが社会保険料控除による税制メリットを受けていたと思われるからです。つまり、親が子の国民年金保険料を払うと節税になるのです。もし、質問された方の親への返済金額が、保険料の額面通りで節税分を考慮していなかった場合、親子喧嘩の元にもなりかねないのです。「子ども想いの親だと感謝していたのに、ちゃっかり節税して、子どもからは多めに回収していたなんて、阿漕(あこぎ)な親だ!」と憤っている方に、さらに、「実は、国民年金保険料はまとめて払うと割引になるんですよ」なんて説明すると、親子喧嘩の火に油を注ぎそうですね。。。
大和証券 確定拠出年金ビジネス部
2019/12/6作成
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