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目指せ、脱・初心者!知っておきたい米国の経済指標


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    新聞やニュースでは耳にする、アメリカの「GDP」や「雇用統計」といった経済指標。日本株にしか投資をしていないという人にも、実はとても大事なデータなのです。そこで今回、米国の経済指標がマーケットに影響を与える理由や、押さえておきたい経済指標について紹介します。これをきっかけに、投資スキルもワンランクアップを目指しましょう!

    (専門家プロフィール)

    横山利香さん

    国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー、相続士。自身の投資体験を元に株式や不動産、外貨、投資信託など、資産運用をテーマとした執筆や講演活動、投資塾などを行なう。All Aboutでは「投資をはじめてみよう」ガイドをつとめる。著書に『リスクが嫌いな人のお金の教科書』(WAVE出版)他多数。

    米国の経済情勢が世界に影響する

    米国の経済指標を見ていく前に、そもそも米国経済はなぜ注目されるのでしょうか。そこから考えてみましょう。

    その理由は第一に、米国の経済規模です。2022年の名目GDP(国内総生産)は、およそ25兆米ドルに達し、世界ランキングは第1位。米国の経済における影響がわかります。

    また、米ドルが通貨で世界経済の中心的な地位を占める「基軸通貨」だということも見逃せません。その背景には、米国の経済規模に加え、金融市場の透明性、信頼性、さらには強大な軍事力も関係しています。そしてその結果、貿易や金融取引がドル建てとなり、各国の外貨準備もドル建てが最大となっています。

    そんな米国経済の動向は、日本を含め、他国にも影響を与えます。その理由について、テクニカルアナリストの横山利香さんはこう説明します。

    「米国経済はシェアが大きいですから、多くの国は貿易相手国として大きな影響を受けます。例えば、米国経済が弱まれば、消費が落ち込みますから、日本の自動車産業のような輸出の売上比率が大きい産業にとっては、業績低下の要因になりかねないということになります」

    株式市場では、NYダウやナスダック、S&P500といった米国の代表的な株価指数が上がれば、連動して日本の株価指数も上がる。一方、米国が下がれば日本も下がる。そういった傾向が見られるのも、アメリカ経済の大きさを示す現象ともいえるでしょう。

    経済指標はFRBの金融政策の結果

    日本の株価に影響を与える米国経済ですが、それはすなわち、米国経済の状況、今後の方向性がわかれば、米国はもちろん、日本の株式市場についても大きな判断材料になるということです。

    そして、そういった米国経済の現状や先行きについて教えてくれるのが、今回のテーマである、定期的に発表される米国の、さまざまな経済指標です。

    しかし、ここでもうひとつ押さえておきたいのが、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会=The Federal Reserve Boardの略)が打ち出す金融政策の中身です。特に世界から注目を集めているのが、米国の政策金利であるFFレート(誘導目標金利)。米国景気が拡大している時期は金利を引上げ、縮小しているときは引下げます。

    「現在は物価がインフレ傾向にあるため、FRBは金利の引上げを継続しています。それに対して、経済指標はその答え合わせのような側面があります。FRBの金融政策の結果、経済にどういう効果、影響を与えたのか。あるいは、景気は回復しているのか。それを確認するのが経済指標ということ。したがって、FRBの動向や、FOMC(FRBの政策金利等を決定する会合)の結果も、経済指標同様に注目しておきたいところです」(横山さん)

    個人消費関連のCPIにまずは注目

    では、特に投資ビギナーの方は、具体的にどのような米国の経済指標を見ればいいのでしょうか。横山さんは、個人消費関連の指標をまずはチェックしてほしいと言います。

    「アメリカ経済を支えているのが個人消費というのが、その理由のひとつです。米国のGDPのおよそ7割は個人消費が占めています。したがって、個人消費関連の指標には注目してほしいと思います」

    「具体的な経済指標として、まずはCPI(消費者物価指数)があります。生活に関わる物やサービスの価格の動きを把握する指標で、インフレがどの程度進行しているかを判断するものとして、政策金利の今後の動きにも影響を与えるとされる、注目度が高い指標のひとつといえるでしょう」

    他には、注目したい住宅関連指数として、中古住宅販売件数があります。住宅着工件数も景気の先行指数ではありますが、中古住宅の方が市場規模が大きいため、より注目度が高くなっています。また、雇用統計の中では、失業率もチェックしておきたい指数です。雇用の最大化は、物価の安定とともに、FRBによる金融政策において目標としているところ。今後の金融政策の方向性を判断する材料にもなります。

    変動に一喜一憂せず大局をつかむ

    下の表で示したのが、米国の主な経済指標です。米国経済の実態、さらに今後の方向性を示しているものとして、チェックしてみるとよいでしょう。

    ただし、その際に注意も必要だと、横山さんはアドバイスします。

    「個人投資家、特にビギナーの方であれば、多くの場合、投資スタンスは中長期のはず。指標に大きな動きがあれば、米国やそれに連動して世界の株価も変動する可能性がありますが、それに逐一反応して急いで売買するのは、別のスタンスで投資をしている人たちです。個人投資家の方は、そういったことに一喜一憂せず、米国の経済の大きな方向感、それを大局的につかむための材料にするだけでも、自身の投資にきっと役立つはずです」

    米国の主な経済指標

    経済指標 内容 発表予定 発表機関
    国内総生産(GDP) 一定期間内に国内で生産された物やサービスの付加価値の合計(名目GDP)と、そこから物価の変動の影響を除いた実質GDPがある。 速報値は当該四半期終了後の翌月末(1~3月期であれば4月末) 米国商務省
    ISM製造業・非製造業景気指数 製造業および非製造業の景況感を示す指数。各企業の受注残や在庫状況、価格の変化などをアンケートにより調査する。 製造業は毎月第1営業日、非製造業は毎月第3営業日 全米供給管理協会(ISM)
    小売売上高 国内で販売される小売業・サービス業の売上高を集計したもの。米国内の個人消費の動向を示す指数として注目される。 毎月第2週ごろ 米国商務省
    消費者物価指数(CPI) 米国内の衣料や食料品など約200項目の品目の価格の変化を示す経済指標。インフレ率を分析する重要指標のひとつ。 毎月中旬 米国労働省
    住宅着工件数 米国内で1カ月間に建設された新築住宅戸数。毎月公表されるが、季節のばらつきが大きいため、調整をかけた上で年率換算されて発表される。 毎月第3週 米国商務省
    中古住宅販売件数 1カ月間に販売された中古住宅戸数。住宅の販売は家具、家電製品などの需要との関連性が高く、景気に対して先行性が高いといわれる。 毎月25日ごろ 全米不動産業者協会
    耐久財受注 米国内での自動車や家具など、耐久年数3年以上とされる耐久財の新規受注額を集計した経済指標。民間設備投資の先行指標として注目される。 毎月下旬 米国商務省
    失業率 労働力人口に占める失業率の割合を示した数値。FRBの金融政策に影響を与える重要な指標のひとつ。 毎月第1金曜日 米国労働省
    非農業部門雇用者数 米国の農業部門を除いた産業で働く雇用者数のこと。失業率とともにFRBの経済政策の判断材料となる重要な雇用統計。 毎月第1金曜日 米国労働省
    個人支出(個人消費支出) 自動車や家電などの耐久財、食品や日用品、衣料などの非耐久財、旅行や外食などサービス支出の、3つの支出金額について集計した経済指標。また、個人消費支出のうち、変動の大きい食品とエネルギーを除いた「PCEコアデフレーター」は、インフレ指標としてFRBが重視する指標。 毎月月末に前月分の数値を発表 米国商務省
    個人所得 個人の給与や賃貸収入、利子、配当金などの合計から社会保険料を差し引いた、実際の所得。 毎月月末に前月分の数値を発表 米国商務省

    取材・執筆 清水 京武

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