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目指せ、脱・投資初心者!決算で注目すべきポイント


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    株式投資で最も難しいことは、マーケットや株価が今後どう動くかを予想することではないでしょうか。特に投資ビギナーは、何をヒントにそれを判断すべきか、頭を悩ませているはずです。そこで、ぜひ参考にしたいのが、各企業が公表する決算内容。今回、その基本的な知識から読み方、活かし方まで、テクニカルアナリストの横山さんに伺いました。

    (専門家プロフィール)

    横山利香さん

    国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー、相続士。自身の投資体験を元に株式や不動産、外貨、投資信託など、資産運用をテーマとした執筆や講演活動、投資塾などを行なう。All Aboutでは「投資をはじめてみよう」ガイドをつとめる。著書に『リスクが嫌いな人のお金の教科書』(WAVE出版)他多数。

    決算発表のタイミングを押さえよう

    まずは企業の決算発表について、整理しておきましょう。

    証券取引所に株式を上場している企業は、業績や財務状況を決算として、一定期間ごとに公表することが義務づけられています。

    決算を行なうために期間を区切りますが、基本的な期間を事業年度(会計年度)といいます。事業年度が4月1日から翌年の3月31日までなら、毎年3月がその企業の決算月(決算期)となります。実際、決算月を3月としている企業が最も多く、次が9月。資本金1億円以上の企業では、3月決算が全体の半数を占めます。

    事業年度の決算は「本決算」、四半期ごとは「四半期決算」となります。ただし、第2四半期決算は、半年間の決算を公表するため、慣例として「中間決算」とも呼ばれます。

    また、正式な決算書である「有価証券報告書」の公表の前に、その情報をコンパクトにまとめた、速報版ともいえる「決算短信(通期決算短信)」が公表されます。四半期報告書の公表前にも同様に「四半期決算短信」が公表されます。

    有価証券報告書が決算日から3カ月以内の公表が法令で義務づけられているのに対して、本決算の決算短信は証券取引所より同日から45日以内の公表が適当とされています。また、四半期報告書の公表は45日以内と定められていますが、決算短信は30日以内が望ましいとされています。

    以下の表は、決算月が3月の企業の、一般的な決算公表スケジュールです。関心のある企業、株式を保有している企業の決算を見逃さないよう、公表予定日を押さえておきたいところ。各企業の具体的な決算公表スケジュールは、証券会社や証券取引所のWebサイトの他、経済紙、専門紙などでも確認できます。

    決算短信や有価証券報告書などの公表時期(決算月が3月の企業の場合)

    計算期間 各書類の公表時期
    第1四半期決算 4月1日~6月30日
    四半期決算短信 7月下旬頃~8月半ば頃
    四半期報告書 8月半ば頃
    第2四半期決算
    (中間決算)
    4月1日~9月30日
    四半期決算短信 10月下旬頃~11月半ば頃
    四半期報告書 11月半ば頃
    第3四半期決算 4月1日~12月31日
    四半期決算短信 翌1月下旬頃~翌2月半ば頃
    四半期報告書 翌2月半ば頃
    本決算 4月1日~翌3月31日
    決算短信 翌4月下旬頃~翌5月中旬頃
    有価証券報告書 翌6月下旬頃

    ※決算の公表時期は一般的な目安

    株価は決算発表の中身に反応する

    投資会社のファンドマネージャーはもちろん、一般の個人投資家も、決算発表に注目します。株式を保有している企業、注目している企業の決算発表であればなおさらです。テクニカルアナリストの横山利香さんは、その理由をこう説明します。

    「投資する銘柄を選ぶとき、その企業の決算内容が良くなければ、やはり積極的に買いたいとは思いません。その銘柄を保有していれば、売却を検討する人も増えるでしょう。結果、決算内容と株価は連動しやすいため、そのチェックは欠かせないものになります」(横山さん・以下同)

    特に、決算短信を公表するタイミングは、株価が変動しやすい傾向があるようです。

    「決算短信はよりタイムリーに企業の決算情報を投資家に伝えることが目的ですから、マーケットもその時点で反応します。その意味で、個人投資家の方も、できれば決算短信から確認しておく方がいいでしょう」

    では、そもそも決算短信の中身はどのようなものなのでしょうか。

    決算短信に記載されている内容は主に(1)経営成績、(2)財政状態、(3)キャッシュ・フローの状況、(4)配当の状況、(5)業績予想の5つに大別できます。このうち(1)~(4)は本決算でも四半期決算(ただし(3)は第2四半期のみ)でも、必ず明記されています。(5)については上場企業に公表義務はありませんが、多くの企業が公表しています。

    注目すべきは経営成績と業績予想

    この決算発表の中身では、特に投資ビギナーであれば、まずは(1)の経営成績を見てほしいと横山さんはアドバイスします。

    「大事なのは、(1)の経営成績をしっかり見るということ。売上高、営業利益、当期純利益などを、すべてチェックしましょう。対して(2)と(3)は、(1)と比較すれば優先順位は下がります。売上が上がらなければ、利益が上がらず、キャッシュ・フローも回らない。そうなると、一般的には財政状態もきびしいことが想定されます。したがって、(1)の中身を十分確認した上で、(2)と(3)についても目を通しておく、というような流れで順番に確認していくといいと思います」

    具体的には、経営成績の各金額について、前期や前年同四半期と比較して、どの程度伸びたのかが重要となります。企業の成長性や安定性が表れるからです。利益が出ていても、対前期増減率や対前年同四半期増減率がマイナスだったり、市場の予想を下回ると、株価は下落する傾向があります。

    「また、売上高は伸びたのに、純利益はさほど伸びていない場合、その原因は確認していくべき。最近であれば、インフレや円高による原材料の高騰でコスト高になっていることが影響している、そんなケースが多くなっています。そうであれば、今後はその企業の製品やサービスを値上げすることで改善される可能性もある。決算短信にある経営成績だけでも、そういうことが見えてくるわけです」

    もうひとつ、決算短信でチェックしておきたいのが、(5)の業績予想です。業績予想については、何を公表するか、決まった形、ルールはありませんが、多くの場合、来期以降の業績を具体的な金額で示します。また、以前に出していた業績予想の修正があれば、ここで確認ができます。

    「業績予想はあくまで予想ですから、必ずそうなるとは限りません。強気に高い数字を出す企業もあれば、慎重な企業もあります。その企業のカラーがよく出る部分ともいえるでしょう。それでも、企業が決算発表の場で出す数字ですから、どの程度信憑性があるかは別としても、チェックしておくべき部分だと思います」

    また、決算の内容が良くてもその企業の株価が必ずしも上がるわけではありません。逆に下がってしまうというケースもあります。

    「それは、そもそも株価と決算内容では、見ているところ、いわゆる時間軸が異なるからです。株価はいわば先行指標。その企業の半年、1年、さらにその先の評価が反映されています。対して、決算は足元の評価が、数カ月遅れて出てくる。つまり過去の評価、実績です。したがって、決算内容はいいに越したことはありませんが、それが将来の成長性、利益拡大にダイレクトにつながるかは、また別の問題ということになるわけです。業績予想に株価が反応するのも、株価が先行指標であることを示しています」

    数字に一喜一憂せず投資継続のツールとして

    決算発表はそこから、企業の状況が分かり、今後の成長性、方向性も見えてきます。それは、投資をする上で重要な情報となります。ただし、実際の決算にある数字、金額を的確に投資判断の材料とすることは、投資ビギナーにとっては、そう簡単ではないかもしれません。

    「大事なことは、公表された内容、またそれに反応するマーケットに一喜一憂しないことです。特に今は、世界情勢も含めて、マーケットがどう動くか、判断が難しい時期です。ならば、最初は勉強のつもりで、決算の内容とその後の株価がどういう動きをするのか見ていく。それだけでも、決算とマーケットの関係性が分かってきますし、それは今後の投資活動に役立っていくと思います」

    「資産形成において特に大事なことは、長期的に投資を継続することです。貯蓄をしているだけでは、資産はほぼ増えていかないことは確かです。決算発表は、投資を継続して行なっていくための重要な情報源のひとつなのです」

    取材・執筆 清水 京武

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