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アナリストの目線でドラッグストアを“ぶら散歩”、そこから見えた注目銘柄は?


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    医薬品だけでなく、日用品や食品などさまざまな商品を取扱うドラッグストア。調剤薬局併設の店舗も増え、ますます頼りになる存在になっています。棚に並ぶさまざまな商品には、投資のヒントが隠れているかもしれません。アナリスト目線でドラッグストアを歩くと、どんなトレンドや企業が見えてくるのでしょうか。テクニカルアナリストの横山利香さんがドラッグストアにあるさまざまな商品をチェックし、注目企業を解説します。

    ●お聞きした方

    横山 利香さん

    国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー、相続士。自身の投資体験を元に株式や不動産、外貨、投資信託など、資産運用をテーマとした執筆や講演活動、投資塾などを行なう。All Aboutでは「投資をはじめてみよう」ガイドをつとめる。著書に『リスクが嫌いな人のお金の教科書』(WAVE出版)他多数。

    ドラッグストアは業界全体が好調?

    「ドラッグストア業界は、売上ランキングの上位企業が軒並み前年同期比で増収するなど、足元の業績は順調だと考えてよいでしょう。ただ、新型コロナウイルス感染症が流行し始めた当時ほどの混雑は見られなくなっている状況です。生活スタイルが変化したことに加えて、足元では物価も上昇傾向にありますので、消費者の消費動向には注意が必要かもしれません」(横山さん)

    ドラッグストアの店舗数が増える中、新しい業態のお店も出てきているということですが、新業態のお店は従来店舗とどのような違いがあるのでしょうか。

    「ドラッグストア業界では、新型コロナウイルス感染症による渡航制限によってインバウンド需要が消失しました。そうした背景もあって、インバウンド需要が大きかった化粧品や医薬品等だけではなく、生鮮食品等も販売するスーパーマーケット化、低価格のプライベート商品を販売するディスカウントストア化が図られています。

    また、調剤薬局等を併設したドラッグストアも増えてきています。医薬品等を販売するだけだったドラッグストアは、時代の流れとともに、日常生活をサポートする場として変化し始めています」

    調剤薬局を併設したドラッグストアが増えているとのことですが、その原因は?

    「都道府県知事が特定の機能を持つ薬局を認定する『薬局認定制度』が始まったからです。高齢化の進展により、地域で治療を行なう『地域包括ケアシステム』に介護や医療体制が切り替わってきていることが背景として挙げられます。より地域に密着した店舗形態へと変化し、社会のニーズに応える体制を作っています」

    アナリストの横山さんがチョイスした商品と注目銘柄は

    わたしたちの身近な存在であるドラッグストア。横山さんに、店舗をぐるっと回ってもらい、気になった商品とお勧め銘柄をピックアップしていただきました。

    おいしさに楽しさをプラス

    注目した商品:「生ジョッキ缶」
    銘柄:アサヒグループホールディングス(2502)
    注目理由:
    同社は“家で楽しめる生ビール”と話題の、注ぎ口がまるでビールジョッキのように開いて泡が楽しめる「生ジョッキ缶」等のアルコール飲料でヒット商品を出しています。外出する機会も増えていますが、それでもお家飲みの需要は引き続き高いようです。
    また、おやつ代わりに外出先等でも手軽に食べられるシリアルバーなども人気。
    また、オリジナル商品の株主優待もあって、同社の商品が好きという方なら継続保有するのもお勧めです。

    実力派化粧品ならロート製薬

    注目した商品:「高価格帯基礎化粧品」
    銘柄:ロート製薬(4527)
    注目理由:
    ロート製薬といえば、目薬のイメージが強い方もいるかもしれませんが、美容や健康に関する商品も広く取扱っており、「オバジ」シリーズは根強い人気を誇っています。また、肌荒れ防止、日やけによるシミ・ソバカス防止対策として同社の低価格帯の化粧品や基礎化粧品などもコスパが高いと人気を集めています。
    なお、株主優待では3年以上の継続保有で優遇があるので、長期投資も検討してみてはいかがでしょうか。

    ※3年以上継続保有:毎年3月末日の株主名簿に同一株主番号で、連続して4回以上記載または記録された株主。

    調剤薬局とのついで買いも?気軽に使える介護用パッド

    注目した商品:「介護用パッド」
    銘柄:ユニ・チャーム(8113)
    注目理由:
    第一次ベビーブーム世代が高齢者層に入り始め、日本国内では高齢化が進行しています。身体がまだ健康なうちは、多くの人が介護用おむつを利用することには抵抗がありそうですが、「介護用パッド」であれば、一度は試してみようかと利用する機会も増加するのでは。
    また、最近はドラッグストアと調剤薬局の併設が進んでいますから、通院後にお薬をもらう際に、「日用品も買い足そう」という“ついで買い”需要も増えそうです。

    SNSの口コミから一部では品薄状態との声も、美と健康は乳酸菌から!?

    注目した商品:「乳酸菌飲料」
    銘柄:ヤクルト本社(2267)
    注目理由:
    腸活をテーマにした商品も注目を集めているようで、美と健康のために乳酸菌飲料を飲む人が増えているという調査もあるほどです。中でも、老若男女問わず人気を集めて品薄となったのが「ヤクルト1000」。SNSやテレビなどでも話題です。
    その他、ヤクルトは化粧品事業や一般用医薬品・指定医薬部外品の事業も展開。また、東京ヤクルトスワローズのファンなら、株主優待でオフィシャルファンクラブ入会の権利がもらえるのも嬉しいですね。

    メンズコスメならマンダム!

    注目した商品:「男性用化粧水」
    銘柄:マンダム(4917)
    注目理由:
    韓流ドラマ等の影響なのか、近年は美容に気をつかう男性が増加傾向にあります。スキンケアやムダ毛の除毛など、若いうちから美容に気をつかう男性が増えれば、今後さらなる男性用化粧品を利用する人口が増えるのではないでしょうか。
    男性用の美容商品はまだ少ないこともあり、ドラッグストア内での売り場は小さいですが、実際にモノを見て選べるのが魅力の一つ。価格も手頃で利用のハードルが低い商品が多いので、外出機会が増えるとともに今後利用する人達も増えると予想、おすすめ銘柄としてみました。長期保有を視野に入れてみては。

    ペットの健康維持に注目が高まる

    注目した商品:「ペットフード」
    銘柄:マルハニチロ(1333)
    注目理由:
    ペットブームと同時に、「ペット・ヒューマナイゼーション(ペットの人間化)」という、ペットを家族の一員と捉え、おいしい食事や健康維持に配慮する考えが浸透していっているそうです。それによりペットフードも、肥満防止やオーラルケアといった、健康維持を目的としたものへとニーズが多様化・高級化しています。マルハニチロでは、ペットフード関連の子会社があり、海外でもペットフードの販売が好調とのことです。ペットケア市場は世界的にも今後ますます拡大すると予測されており、注目です。

    企業名 事業概要(※) 株価(※)
    アサヒグループホールディングス(2502) アサヒグループホールディングス(2502)
    東証プライム
    日本国内及び海外において、主に酒類、飲料、食品の製造・販売を行なう。 4,057円
    ロート製薬(4527) ロート製薬(4527)
    東証プライム
    主にヘルス・ビューティケアの領域で、アイケア関連、スキンケア関連、内服・食品関連及びその他(体外検査薬等)の製品を製造・販売している。 2,170円
    ユニ・チャーム(8113) ユニ・チャーム(8113)
    東証プライム
    ベビーケア関連製品、フェミニンケア関連製品、ヘルスケア関連製品、クリーン&フレッシュ関連製品、ペットケア関連製品等の製造・販売を主な事業とする。 4,765円
    ヤクルト本社(2267) ヤクルト本社(2267)
    東証プライム
    主に乳製品及び医薬品等を製造・販売する。 8,860円
    マンダム(4917) マンダム(4917)
    東証プライム
    主に化粧品を製造販売する。その他の主要業務は、香水と医薬部外品の製造及び販売。 1,403円
    マルハニチロ(1333) マルハニチロ(1333)
    東証プライム
    主に漁業、養殖、食品の製造・加工・販売を行なう。 2,433円

    (※)株価などはすべて2023年1月10日の終値で計算しています。
    (※)事業概要は大和証券株式会社HPよりSODATTE編集部作成

    ドラッグストアで銘柄を探す際に注目すべきポイントとは

    横山さんに、ドラッグストアで投資に有望な銘柄を探す際の注意点を伺いました。

    「ドラッグストアには、スーパーマーケットのように食料品を扱うタイプや、ターミナル駅等で若者向けの化粧品や雑貨等を扱うタイプ、調剤薬局を併設した地域密着タイプ等があります。そのため、ドラッグストアから有望銘柄を探す場合には、いろいろなタイプのドラッグストアを実際に見に行ったほうがよいでしょう。

    また、企業の投資家向けのホームページには決算短信等が掲載されていて、売れ筋の商品や注力する事業の記載がある場合もあります。気になる企業の決算内容を確認すると、投資のヒントとなるかもしれません」(横山さん)

    ドラッグストアで実際に売り場を見て、ホームページ等で情報を集める。日常の一コマで、投資家目線を持つことを意識してみてはいかがでしょうか。

    取材・文/大倉愛子

    ※本文中の銘柄は、記事のテーマに基づき横山利香さんが選定したものを掲載しています。
     投資に関する決定は、銘柄選定を含め最終的にはご自身の判断でなさいますようにお願いいたします。

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