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投資の先輩#07 「投資をしていなければ、お金がふえるのは月に一度のお給料日だけ」


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    積極的に投資を行なっている人の、投資内容や家計状況はどのようなものなのか。投資の成功談、失敗談を交えながら、普段なかなか聞けないリアルな話を、先輩に聞く連載企画。第7回は、34歳の会社員、あにさんの登場です。

    インデックス型の投資信託(※1)を中心に、NISA制度などを利用しての積立投資を続けています。投資歴は6年と、それほど長くはありませんが、すでに自身の投資法、投資との付き合い方を確立し、今や年間投資額はおよそ400万円。その中身を、あにさんの投資への思いとともに見ていきます。

    (※1)日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価や債券の指数(インデックス)に、ファンドの基準価額が連動するような運用を目指す投資信託のこと。

    投資の先輩プロフィール あにさん(仮名)

    性別:女性
    年齢:34歳
    職業:会社員
    家族構成:夫(会社員・33歳)、長男(5歳)、次男(3歳)
    投資歴:6年

    世帯収支の内訳(月単位)

    あにさんは34歳という若さですが、ご夫婦とも正社員で世帯収入は額面で1,000万円を超えています。したがって、お子さん2人を加えた4人家族ながら、家計的に余裕もあり、つみたてNISAとジュニアNISAはともに上限まで活用。iDeCoへの拠出や特定口座での投資を行なっています。

    一見すると、投資に偏りがちと思われるかもしれませんが、年間で見れば貯蓄もでき、あにさんが目標とする資産配分(貯蓄額と投資評価額の割合が5:5または4:6)を達成するための、計画的な投資額だということが分かります。

    世帯資産の内訳

    では、今回の投資の先輩は、どのようなきっかけで投資を始め、どのような考えで資産形成をしているのか、探ってみましょう。

    独身時代の貯蓄、結婚を機にどうするか……

    今回の投資の先輩「あにさん」は、結婚当初、本人名義の貯蓄がおよそ1,000万円ありました。独身時代は「貯めどき」とも言われますが、20代でこれだけの貯蓄額の達成は相当な貯蓄ペースだったことが窺えます。

    結婚を機に、その貯蓄をどうするか。あにさんは「生活費とは別に管理したい」と考えます。何でも「万が一、離婚したときのため」がその理由なのだとか……。たとえ可能性は低くとも、人生の重大なリスクになりえるなら、できるだけ備える、ということでしょうか。

    ともあれ、結果的にその貯蓄が投資の原資となっていきます。そのきっかけは、結婚後に地元から東京に移り住んだ際の転職先が、証券系のシステム開発を手掛ける企業だったということ。

    「職場の人たちはみな証券口座を開設していました。投資信託の積立なら、無理なく続けられるし、リーマンショックも乗り越えられた。逆に、そのとき買い増しをしてプラスになったという体験談も聞いたので、ならばやってみようと。また、投資を経験することは、自分の仕事にもプラスになると考えました」

    手始めに、ネット証券で口座を開設。インデックスファンドを3本、それぞれ月1万円で積立投資を開始します。結婚して3年目の28歳のときです。本人の思いは「1年間でどれだけ利益が出るか、実証実験のつもり」。そして1年後、数万円の利益が出ます。

    ジュニアNISAで世帯の非課税投資枠がグンと拡大

    投資を体験し、「積立投資が大体どういうものか理解した」というあにさんは、翌年の2018年からご夫婦それぞれNISA口座を開設し、同年、制度が開始されたつみたてNISAを始めます。長男が生まれれば、すぐにジュニアNISAをスタート。次男の方も同様です。

    実はここが、あにさんの投資の特徴のひとつ。NISAの積極的な活用です。NISAは、投資において配当金や売却時の譲渡益等にかかる税金が非課税となる制度。中でも、未成年者が開設できるジュニアNISAの活用が目を引きます。

    ジュニアNISAは、子育て世帯に向けた非課税制度ですが、2023年末で廃止が決定しました(※2)。しかし、既存の利用者には、それが逆に功を奏した形となります。

    それまで同制度の(1)子どもが18歳になるまで引出せない、(2)非課税期間は5年間、という2つの制限が2024年以降からはなくなり、引出しはいつでも可能、非課税期間も子どもが18歳になるまで延長が可能(※3)となったからです。

    「それを知って、購入額を上限の年間80万円まで引上げました」

    実は、ジュニアNISAの大きなメリットが、世帯全体の非課税投資枠を増やせる点。あにさんはお子さんが2人ですから、年間80万円×2人分、非課税投資枠が増えることになります。

    「ジュニアNISAは、投資できる金額も限られていますので、あくまで教育資金準備の一部です。投資である以上リスクはありますが、積立ですし、下がってもさほど大きなマイナス幅にはならないと推測しています。子どもが18歳になるまでの間に、どこかで利確(利益確定売り)をする予定です」

    (※2)2020年度の税制改正により、ジュニアNISAは2023年末での制度終了が決まり、それ以降の新規加入、新規購入はできない。ただし、2023年末の時点で投資している分については、名義人が18歳になるまで非課税で保有可能、資金の引出しはいつでも可能(ただし口座を廃止し全額引出す形)となる。

    (※3)18歳となるまでに延長するには、5年間の非課税期間終了時に継続管理勘定に移し替える「ロールオーバー」の手続きが必要。

    ノーロードで信託報酬はできるだけ低いものを

    6年前に投資を始めて、着実に投資額を増やし続けている、あにさん。現在保有する投資信託は、総合口座とNISA口座に計14本。その内訳は、インデックス型が11本、アクティブ型(※4)が3本。投資先も国内株式、先進国株式、世界株式、新興国株式、世界債券、そしてREITと、広く分散されています。

    「購入時のポイントはノーロード(※5)で、信託報酬ができるだけ低いものを選んでいます。あとは投資先が偏らないことと、インデックスのみでも構わないのですが、アクティブも試したいと思い、多少購入しています」

    コストを抑えたインデックス型の投資信託を、時間、地域(投資先)、商品(株式、債券、REIT)の分散を意識して購入する。これから投資を始める人のお手本になるような、基本を押さえた投資スタイルです。

    「銀行に眠らせっぱなしにしておくよりも、お金にも少しは働いてもらおう、という考えで投資を行なっています。だからといって、ハイリスク・ハイリターンは望まず、結果的に銀行金利を上回ればうれしいかな、という思いです」

    投資に対するこのスタンスであれば、無理に個別株を売買せず、インデックス型の投資信託を積立で購入していくことは、必然と言えるでしょう。

    そして、ご主人にもこのスタイルを勧めましたが、「夫は株式の短期売買も多少していて、自身のお小遣いを稼いだり、株主優待を楽しんでいます」。そういった夫婦での投資手法の違いもまた、世帯で見れば、分散投資の効果を生んでいるのかもしれません。

    (※4)運用会社やファンドマネジャーが独自の見通しや投資判断に基づいて、ベンチマーク以上の収益を目指すファンドのこと。

    (※5)購入時に発生する販売手数料(購入時手数料)がかからない投資信託のこと。「ノーロード型」「ノーロード型ファンド」ともいう。

    NISA以外は長期保有にはこだわらない

    現在、貯蓄額と投資商品の評価額は、割合にして「2:1」程度。これを「5:5」または「4:6」くらいになるように調整しているといいます。それが、現時点での望ましい資産配分と考えてのことです。したがって、あくまで投資はリスクを抑えるスタンスながら、投資額や投資比率は増やしていく方向です。

    あにさんの世帯の毎月の投資額は30万円程度、年間で400万円近くにもなります。今後はどういう投資を目指すのでしょうか。

    「年間10万~15万円利益が出ればいいという気持ちで、投資を始めました。そして、NISA口座は別としても、特定口座で保有する投資信託については、あまり長期では持たず、5年程度保有した時点で利益が出ていれば、それを売却していく。保有する本数は今後増えていくでしょうが、そのイメージは今も変わりません」

    長期で持つより、5年程度のスパンでキャピタルゲインを得る=売却することを目標にする。これもまた、あにさんの投資の特徴と言えるでしょう。

    しかし、その目標達成も容易ではありません。だからこそ、投資コストを意識し、リスクを抑えた積立を行なっています。と同時に、相場が下がったときは積立のチャンスととらえます。市場が大きく値を崩した2020年のコロナ禍では、積極的に買い増したと言います。

    結果、現在保有する投資商品は元本に対して評価額は18%のプラス。個々の商品の保有年数はまちまちですが、最長でも5年程度と考えれば、十分なパフォーマンスだと言えるのではないでしょうか。

    最後に、今回の先輩に、投資をして良かったことを伺いました。

    「投資をしていなかったら、月一度のお給料日にしかお金がプラスになる日はなく、あとは毎日減っていくのみですが、投資をしていると日々評価額が変わるので、ふえているとチェックするのが楽しいです。もし、評価額が下がっていたら……、そのときは見たくない気持ちにもなりますね」

    編集後記

    的確なリスク許容度や試算配分を割り出す

    あにさんは、貯蓄もしっかりされている点が目を引きます。現在、年間の貯蓄ペースは実質100万円超。「貯蓄だけではふえない」と理解しつつも、少しでも金利の高い銀行のインターネット支店を利用し、必要な現金も確保しています。家計状況や家族構成、ライフプランに合わせて、そのときどきで的確な投資のリスク許容度や資産配分を割り出せる。そこが、今回の先輩の強みなのでしょう。

    取材・執筆/清水京武

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