「イエ充」志向から読み解く、これからの注目銘柄は?
コロナ禍でおうち時間をより充実させる「イエ充(家充)」に注目が集まっています。テレワーク環境を整えるための家具や雑貨、DIY。そして、家事をラクにしてくれるスマート家電や健康器具まで。これまで以上に家で過ごす時間が増えた中で、消費行動にも変化が生まれています。そこで「イエ充」志向の高まりと今後を予想しながら注目銘柄を紹介します。
目次
コロナ禍で確実に広まった「イエ充」志向
「イエ充」とは、自宅での生活を充実させている人、あるいはその状態のこと。このコロナ禍にあって、一気に脚光を浴びています。
この言葉、実は10年近く前から存在していました。主に休日の過ごし方として、わざわざ旅行や人混みの多い繁華街に出掛けるより、家でのんびりすることに価値を見出す人たちを指すという点では、今と同じです。ただし、根本的に違うのは、当時は「あえて」イエ充を選択していたということ。
対して現在は、選択の余地はゼロではないにしろ、家にいる時間は確実に増えました。家での生活が充実していない(楽しめない)と明るい毎日が過ごせない、そんな世の中になりつつあります。
冒頭、ややネガティブな内容となりましたが、実はその追いつめられた状況が、イエ充というライフスタイルを一気に開花させたといえます。
例えば、飲食。自宅での食事や家飲みの回数増加で、積極的に料理の幅を広げたり、お取り寄せでその土地の味を楽しむ。あるいは外食しなくても、これまで自宅で味わえなかった「高級店の味」をデリバリーやテイクアウトで楽しむ。コロナ禍によって生まれた、ニューノーマル(新常態)による典型的なイエ充です。
こういった傾向は数字でも見て取れます。厚生労働省の調査(2020年12月発表 『新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する 調査結果概要について』)によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比較し、感染拡大後は「食事の量が増えた」と回答した人は11.8%で、「減少した」と答えた6.9%を大きく上回りました。もちろん、「増えた」と回答した人のすべてが「家での食事を楽しんでいる」とは限りませんが、そういう層の増加を予想させる結果でもあります。
「イエ充」の拡大、定番化で今後注目するテーマは?
さて、この「イエ充」志向、これを株式投資という「眼」で見てみるとどうなるのか。マーケットアナリストの藤本誠之さんはこう言います。
「自宅で過ごす時間が増えたことで、その中でより快適に過ごそうという欲求が当然生まれます。それはつまり、そのためにお金を使う人が増えたということです」
景気に対してコロナ禍という逆風が吹く中、イエ充が新たな消費を生む。それは同時に、投資の好機、チャンスを意味します。では、具体的にその恩恵を受けるのは、どのような業種なのでしょうか。
「最たる例は住宅と住環境でしょう。テレワークの推進、常態化により、住宅購入は通勤などの利便性よりも広い家、一戸建ての需要が高まりました。また、既存住宅であれば、書斎スペースの増加、テレワークに適したデスクや椅子、PC等の機材の拡充。それに関連した自宅のリフォーム、さらにはインテリア、ガーデニングを楽しむといった層も増えています」
つまりはそういった関連業種は、イエ充ニーズにマッチしていることになります。しかし、テレワークが進んだとしても、そのすべてが快適につながらず、ストレスを解消しきれない部分もあるはず。藤本さんはそれを踏まえて、新たなニーズとして「ながら族の増加」を挙げています。
「映像コンテンツより、ながらに適した音声コンテンツに注目しています。思えば、会社やカフェで仕事をしているときは、周りの人たちの声や話を聞きながらだったと思います。なので、誰かの存在を近くに感じられるような、リアル感覚に近いサービスが広まっていくと考えます。例を挙げればYouTube Live、17LIVE、ラジオの復権など。そういったサービスの中でも、話題のClubhouseのような、人との雑談を配信するサービスはいろいろな形で増加する可能性があります」
2021年の「イエ充銘柄」を探そう!!
では、イエ充のニーズ拡大で好業績をあげた企業、いわゆる「イエ充銘柄」は、実際に株価も上昇しているのでしょうか。まずは、その代表的な銘柄の業績から見てみましょう。
外出自粛やeコマース市場の急拡大という恩恵を受けた宅配業界。佐川急便のSGホールディングス(9143)は、2021年3月期(20年4月〜21年3月)の通期純利益が前年同期比42.7%増の675億円になるとの見通しを発表しました。
巣ごもり需要と直結したゲーム業界も大躍進。ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』の販売数が累計3100万本を突破した(2021年2月時点)任天堂(7974)は、2021年3月期の通期最終利益が4000億円程度になる見通しだと発表。ソニー(6758)もPS5発売、さらに「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の超大ヒットで、昨年4月~12月の累計純利益は1兆648億円と、初めて1兆円の大台に乗せました。
他にも、株主優待銘柄としても人気のカゴメ(2811)は「家庭用調味料として汎用性が高い(同社社長コメント)」ケチャップの売れ行きが好調。自転車部品の世界的ブランドであるシマノ(7309)も感染リスクの低い自転車のニーズが高まり、業績を伸ばしています。
次に、これらの銘柄の株価ですが、2020年の動きをまとめたのが<表1>です。同年の最安値と最高値、さらにまだ新型コロナウイルス感染の影響を受けていない年初(同年1月6日)の終値とをそれぞれ比較してみました。結果、いずれもコロナ禍前の水準を上回り、同時に日経平均株価より高いパフォーマンスだったことが、数字から窺えます。
表1 代表的「イエ充」銘柄の2020年の株価の動き
銘柄(コード) | 年初価格(A) 1/6の数値 |
最安値(B) | 最高値(C) | 上昇率1(C÷A) | 上昇率2(C÷B) |
---|---|---|---|---|---|
SGホールディングス(9143) 東証1部 ※ |
1,189 | 1,019 (3/16) |
3,120 (11/30) |
+162% | +206% |
任天堂(7974) 東証1部 |
42,740 | 32,950 (3/16) |
67,600 (12/17) |
+58% | +105% |
ソニー(6758) 東証1部 |
7,420 | 5,633 (3/16) |
10,405(12/21) | +40% | +85% |
カゴメ(2811) 東証1部 |
2,541 | 2,062 (3/13) |
4,095 (11/24) |
+61% | +108% |
シマノ(7309) 東証1部 |
17,570 | 13,240 (3/16) |
25,050 (12/1) |
+43% | +89% |
日経平均株価 | 23,148 | 16,552 (3/19) |
27,568 (12/29) |
+19% | +67% |
※株式分割後の終値
とは言え、ここで紹介したのは誰もが知る大企業。投資を考えている人は、できれば、今後の株価上昇が期待できる、「これから」の銘柄を知りたいところ。そこで、藤本さんに注目銘柄をピックアップしてもらいました<表2>。キーワードとなるのは「リフォーム・ガーデニング」「小物家電」「中食」の3つです。
表2 2021年に注目したい「イエ充」銘柄
銘柄(コード) | 事業概要 | 注目理由 | 株価(※) | 株主優待 |
---|---|---|---|---|
タカショー(7590) 東証1部 |
ガーデニング用品販売で国内トップクラス。家庭用とプロ用で展開 | 心を癒してくれるガーデニング需要増大 | 767円 | ①ポイント付与500株以上~5,000株以上/3,000ポイント~60,000ポイント ②優待特別販売カタログ 100株以上/優待特別販売カタログ発送 |
DCMホールディングス(3050) 東証1部 |
主に同社と連結子会社10社、関連会社1社で構成されるホームセンターの最大手。連結子会社のカーマ、ダイキ、ホーマックがホームセンター業に従事。DIYのための道具や資材を販売 | DIY需要などの急拡大 | 1,136円 | 株主買物優待券 100株以上~1,000株以上/継続保有3年未満:500円~2,000円継続保有 3年以上:2,000円~5,000円 |
アイ・オー・データ機器(6916) 東証1部 |
デジタル家電周辺機器の製造・販売を行なう。主な製。品には、ネットワークカメラ、ブルーレイドライブ、テレビチューナー、ハードディスク(HDD)など | テレワーク・自宅でのネット環境整備 PCのスピーカー・マイク、カメラ需要増大。デイトレーダー向けに複数・大型モニター需要増大 | 1,071円 | なし |
ヤマダホールディングス(9831) 東証1部 |
旧名はヤマダ電機。主に家電・情報家電等の販売事業を行う家電量販店の最大手。住宅・家具などの企業買収なども進めている | テレワークの普及などで、イエ充を支える家電や、住宅・家具などに追い風 | 595円 | 100株以上~10,000株以上/優待券(500円)1枚~50枚 |
STIフードホールディングス(2932) 東証2部 |
水産原料素材の調達から製造・販売までを行なう。セブン‐イレブン向け売上が8割を超える | 自宅での時間が増え、中食需要増大。セブン-イレブンでの焼き魚などの水産食品の需要が増大 | 4,810円 | なし |
(※)2021年3月18日の終値
(※)事業概要は大和証券株式会社HPよりSODATTE編集部作成
今後は当たり前のように生活に根ざすとも言われる「イエ充」志向。周辺を見回せば、期待できそうな銘柄がまだまだ見つかるはず。自分だけのイエ充銘柄を探して、そして買ってみる。その行為自体が株式投資の面白さであり、王道でもあるのです。
お話を伺った方
藤本 誠之さん
「相場の福の神」と呼ばれるマーケットアナリスト。年間300社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。ラジオの看板番組に加え、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多い。All About「株式」ガイドとしても活躍中
取材・文/清水京武
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