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お金が貯まらない理由は本能にあった!?行動経済学で考える、貯められる人になる方法


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    つい衝動買いしたり、ムダ遣いをしてしまったり……。お金を貯めたいと思いながらも、私たちはしばしば感情のままに行動しがち。頭では分かっているのに、なぜこのような行動を取ってしまうのでしょうか?それを解説してくれたのが、「行動経済学」を研究する友野典男先生。今回は行動経済学の見地から、お金が貯まらない原因と、貯められる人になるコツを、友野先生に教えてもらいましょう。

    お金が貯まらない人の特徴とは?

    そもそも、お金が貯まらない人には共通した特徴があるようです。特に欲しいものがなくてもコンビニに寄るのが習慣になっている、限定商品を見ると買ってしまう、レジ横の商品を「ついで買い」する癖がある……。お金が貯まらない人は、このような行動を取ってしまいがちです。後々、罪悪感を抱えてしまうこともありますが、実はこの行動、人間の本能によるところが大きいのだとか。では一体、どのような本能が貯金の邪魔をするのでしょうか?その理由を行動経済学で紐解いていきましょう。

    お金が貯まらない原因は理性が弱いから?行動経済学の考え方

    「行動経済学」と聞いて、まず疑問に思うのが通常の経済学との違いです。友野先生によると、行動経済学には人の脳内で働く「理性」と「感情」が大きく関わってくるのだとか。

    「標準的な経済学では、“常に”合理的、理性的な人が経済活動を行なっていることが大前提です。一方、理性だけでなく感情や直感も加わるのが、行動経済学。感情に振り回されたり、直感を働かせて間違ったりといった、もっと生身の人間が取る行動や、その結果、何が起こるのかを考察する学問です」

    衝動買いもムダ遣いも、元を辿れば理性が働かなかった結果として起こること。となると、私たちが「貯金したいから、お金を遣わない」という、合理的な考えで行動するのは難しいのでしょうか?

    「行動経済学では、人間が“常に”合理的であることを否定しています。かといって、無茶苦茶なことばかりするわけではありません。ある程度は合理的な行動を取りながらも、その合理性には限界があると考えられており、これを“限定合理性”と呼びます。例えば、行動が一貫せずに周りの状況や気分で変わるのも、限定合理性によるもの。“キャベツが10円安いから、あちらのスーパーへ行く”ということはあっても、“1万円の洋服が10円安いから、あちらのお店に行く”となることはまずありません。本当に合理的に考えるなら一貫した行動を取るはずなのに、同じ10円でも単価が安いキャベツのときの方が価値が高いと思ってしまうのです」

    なお、判断や意思決定を下す際、「私たちの脳内では二つのシステムが働いています」と、続ける友野先生。

    「これは“二重プロセス理論”と呼ばれる考え方で、感情や直感をシステム1、理性や熟慮をシステム2と呼びます。脳内では、この二つのシステムがせめぎ合いながら判断や決定が行なわれています。ポイントは、感情は強いものだということ。私たちはよく、感情を象、理性を象使いに例え、強くて大きい象が暴れ出すと象使いが抑えるのは難しい、といった説明をしています。理性より感情が強いのは、言うなれば人間の性。買い物に行った際、空腹だと満腹のときより多く食べ物を買ってしまったり、“限定品”や“タイムセール”などの言葉に弱かったりするのも、感情や直感が判断に影響を与えていることの表れですね」

    つまり、理性が働いていれば、「そんなにいっぱい食べられない」「いつも割引しているよね」と考えられるということ。とはいえ、暴れる象と同じように、感情や直感をコントロールするのはなかなか難しそうです。

    「これはもう、仕方のないことなんです。何十万年もかけて人間が進化する中で、サバンナのように過酷な環境を生き延びるために身に付けた本能とも言えるもの。例えば、かつて食べ物が少なかった時代には、目の前においしそうなものがあればすぐに食べていた。取っておくと誰かに奪われたり、腐らせたりしますから。これはまさに感情や直感の働きによるものですが、現在の環境にはそぐわない行動です。また、感情や直感は間違えやすいという特徴があるので、誤った判断をしないためにも、理性の力は不可欠となります」

    わが家にお金が貯まらない理由かも!「認知バイアス」ってどんなもの?

    友野先生によると、「直感や感情(システム1)によって間違った考え(”認知バイアス“と言います)が生まれ、それを理性(システム2)で修正できないことが多いのが人間の特徴」とのこと。

    「認知バイアスにはさまざまな種類がありますが、お金を貯められない最大の理由と言えるのが“現在バイアス”。将来的な価値を非常に低く評価し、目先の利益を優先してしまうもので、近視眼性とも言います。“欲しいものがあるから、今買っちゃおう”という状況ですね」

    例えば、しばらく待てばバーゲンで安く手に入るのに、待ちきれないから今、定価で買ってしまうというのも、“現在バイアス”と言えます。また、ムダ遣いの理由としては“同調バイアス”、“サンクコスト効果”なども挙げられるのだとか。

    「“同調バイアス”というのは、“ママ友がみんな持っているから私も欲しい”というような考え方。これも進化の過程で生まれたもので、かつて自分の身を守るためには集団行動が欠かせなかったことから生じています。また、“サンクコスト効果”は、すでに費やしたコストに囚われて合理的な判断ができないこと。このコストには、金銭だけでなく時間や労力なども含まれます。“習い事のピアノが上達せず、子どもも辞めたがっているのに、これまでにかかったお金がもったいなくて辞められない”といった状況は、まさに“サンクコスト効果”ですね。このほか“希少性”によるバイアスもムダ遣いの要因。例えばテレビの通販番組の“今から30分以内にお電話を!”や“オペレーターを増員してお待ちしています”などの売り文句は、つい購入したいと思わせる効果があるんです」

    深く考えないのが正解?お金が貯まる・増える人になるコツ

    私たちは先祖代々、お金が貯まらない性質を引き継いできた……。そう考えると「貯金はやはりムリなのかも」と落ち込んでしまいそうです。でも、大丈夫!「知ることは、理性を働かせる助けになる」と、友野先生は語っています。

    「例えば、バイアスを利用して商品を売っていることを知ると、“これからは店に乗せられないようにしよう”と気を付けるようになり、ムダ遣いを抑えることに繋がります。家計簿をつけて現状を知り、ムダをチェックすることも役立つはず。また、感情に訴える方法も有効です。例えば家を買うために貯金したいなら、理想の家とその庭で遊ぶわが子の絵を描き、飾っておく。人は身近なものに感情を込めやすいので、夢を形にして常に見られるようにしておくんです。逆に、“足りないと困る”という方向でも感情が強く動きます。「老後資金が2000万円不足する」というフレーズがセンセーショナルだったのも、この表れです」

    そう語る友野先生ですが、最も効果的な方法として挙げたのは「脳に考えさせずに貯金する」でした。

    「多くの人が実践しているとは思いますが、給与天引きや自動積立など、毎月定額を自動的に貯めるしくみを活用しましょう。自分で毎月いくらと決めて入金するのは面倒ですが、こうしたしくみなら最初からなかったお金として刷り込まれますから。また、投信積立つみたてNISAなどを利用するのもよいでしょう。預金金利があまりにも低いこの時代、投資信託を定期的に積立てながら長く保有すれば、リスクを抑えた運用ができる可能性があります。そこで気を付けたいのは、損得を気にしすぎて短期的な値動きに一喜一憂したりすることです。「儲けを大きくしよう」「もっといい商品はないか」と思い始めると、そこで認知バイアスが働いてしまって損をすることにもなりかねません。例えば、今注目を集めている商品に飛びついてしまったり、売りが進んでいるというニュースを耳にしたら自分も売りたくなったりする(“同調バイアス”)、これまで保有していた商品を損切りできない(“サンクコスト効果”)といった行動に陥りがちです。短期的な値動きはあまり気にせずに長期で保有するのがよいと思います」

    生身の人間に寄り添った行動経済学の視点から見れば、お金を貯められないのは当たり前。大切なのは、それを理解した上で、行動することです。これからは買い物の前に一歩踏みとどまって考える、金融機関のサービスを賢く利用するといったことを実践して、お金が貯まる人を目指しましょう。

    文/石川由紀子

    <専門家プロフィール>
    友野典男さん

    明治大学大学院情報コミュニケーション研究科兼任講師。元明治大学情報コミュニケーション学部教授。専門はミクロ経済学、行動経済学。研究テーマは、経済行動に及ぼす心理的・社会的・生物的要因の理論的・実証的研究。著書に、『行動経済学 経済は「感情」で動いている』(光文社新書)、『感情と勘定の経済学』(潮出版社)などがある。

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