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元気なうちから始めたい「介護と相続」


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    まだまだ先とは思うけれど…親が元気なうちに話しておきたい「介護・相続」ってどんなこと?

    アラフォーの筆者ではありますが、最近、久しぶりに会った親がだんだん年取っているなあと感じています。少し先ではあるけれど、親や義両親に何かあったら大変だと思っていたところ、ちょうどよいセミナー(しかも無料!)があると耳にしました。行ってみると、まさに「目からうろこ」の話ばかり。今回は、デュアル世代が知っておきたい「介護と相続」について紹介します。

    今回参加したのは、日経DUAL主催のセミナー「~いざというときに慌てない~三世代で考える、お金のこと 相続のこと」。最初に、日経DUALの連載でもおなじみのファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の井戸美枝さんによる「身近な人と話しておきたい介護・相続のこと」という講演がありました。

    人生100年時代だけど、最後には介護の問題もある

    「人生100年時代と言われます。2016年の厚生労働省のデータによると、男性の9.1%、女性の25.2%が95歳まで生きます。でも注意したいのが、『平均寿命』よりも短い『健康寿命』があるということ。ずっと元気であれば楽しいのですが、実際は男性で平均約9年、女性で平均約12年という『健康ではない期間』があります。一人だけでは生活しづらく、介護を受ける際に健康保険だけでは足りずに、自分の持ち出しが必要になります。私はその費用として、一人あたり800万円程度必要だと考えています。例えば、つみたてNISAという制度が始まりますが、40万円を20年間積み立ててるとちょうど800万円になります。早めにコツコツ積み立てて“お金を先送りする”ことが重要です」と、井戸さんは話します。

    なるほど、介護費用というのは、自分がおじいちゃんおばあちゃんになってから慌てて準備するのではなく、今のうちからコツコツ貯めておくことが大事なのですね…。

    「元気なうちに、プラスの資産もマイナスの資産も親子で一緒に確認しておくことが大事です」と言う井戸美枝さん

    元気なうちに資産を親子で一緒に確認しておく

    井戸さんは、約1年前にお母さまが亡くなられたそうです。その際に、初めて分かったことがたくさんあったと言います。

    「私の母も少し認知症になり、通帳がどこにあるかわからなかったり、保険にたくさん入っていたりということがありました。知らないうちに親が保険にたくさん入っているというケースは要注意です。元気なうちに、プラスの資産もマイナスの資産も親子で一緒に確認しておくことが大事です」(井戸さん)。

    「最近は(保険などを)ネットで登録することが多いので、アカウントやパスワードも共有しておきたいですね。ネットで登録すると書類が送られてこないことが多いので、アカウントとパスワードが分からないとお手上げです。必要な書類をすべて写真に撮ってクラウドにあげておくのも良い方法です」

    井戸さんは、親の体調変化を、早めに察知することも大事だと言います。

    「親御さんが離れたところに住んでいる場合、こちらから電話やメールをして様子をうかがっても、親は子どもに心配をかけたくないので『元気だよ』というものです。年末年始などで2泊3日くらい滞在するときは、ぜひ親の変化に気をつけてください。変化を早めに察知できれば、自治体に相談して使えるサービスを教えてもらえるほか、介護保険を使えるケースもあるのです」

    介護保険を使うことで、お金の面で助かるだけではなく、プロの人にみてもらうことで、症状がよくなる可能性もあるそうです。「母の場合は、要介護2の状態でいったん有料老人ホームに入ったのですが、半年後に要支援1で帰ってくることができました。異変を感じたら、早めに自治体や地域包括支援センターに相談することをおすすめします」(井戸さん)

    確かに、親の介護というのは突然やってくるもの…。異変を感じたら、地域の相談窓口にすぐに相談するということを覚えておこうと思います。

    井戸さんによると、女性は介護を3回経験する可能性があるそうです。1回めはご両親です。2回めは夫。3回めは自分自身です。

    「私の場合、子どもに迷惑をかけたくないので、なるべくお金を払ってプロの人にみていただこうと思っています。子どもに迷惑をかけたくなければ、自分自身でコツコツお金を貯めておく必要があります。ペットがいる方は、亡くなった後にペットをどうするかも確認しておくといいといいでしょう。その他、SNSを閉じておく、銀行口座の数を減らすなど、残された人が困ることのないように元気なうちに準備をしておくことが大切です」(井戸さん)

    なるほど、仕事も子育てもあるなか、介護の手続きに追われることになっては大変…。親が元気なうちに話し合っておかなくては!と思いました。

    相続税の対策は、早いうちからの準備が正解

    セミナーの第二部では、大和証券ウェルスマネジメント部次長の白川智絵さんが「家族で考えるこれからの相続対策」と題して、相続について説明してくれました。

    大和証券ウェルスマネジメント部次長の白川智絵さん

    「2015年に税制改正があって、実は相続税が増税になりました。お父様が亡くなって、お母様と子ども3人(合計4人)が相続する場合、以前は9000万円までの財産には相続税がかからなかったのですが、2015年からはその基準が5400万円に減っています。つまり相続税がかかる対象が広がったのです。実際に相続税がかかった家は、2014年までは亡くなった方の4~5%程度でしたが、2015年は8%と約2倍に増えています」(白川さん)

    正直、増税になったことも知りませんでした・・・。白川さんによると、相続に関しては、覚えておきたい3つの期限があるそうです。

    「一つ目が相続の放棄・限定承認が可能な期間。相続を放棄する場合、亡くなったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ行かなければなりません。限定承認とは、相続人が『借金はプラスの財産範囲内でしか引き継がない』という条件で相続すること。これも3カ月以内に決める必要があります。二つ目が(亡くなった方の)所得税の申告期限。これは、4カ月以内に行なう必要があります。三つめが、相続税の申告・納税の期限。相続税を支払う場合は、10カ月以内に原則現金で支払う必要があります。亡くなられると銀行や証券会社の口座はいったん凍結されるので、すぐに出金できない状態になります。葬儀代などもかかるなか、納税のための現金をしっかり準備しておくことが大事です」(白川さん)

    相続に関して、覚えておきたい3つの期限

    生命保険で相続税を軽減できる

    相続では、いかに“もめないようにするか”が大事なのだそう。

    「遺産分割でもめるケースは年々増えています。もめないための方法は2つあります。一つは遺言書を活用する方法。遺言書には、一般的には自筆と公正、秘密という3つ方法があり、それぞれ決まりごとがあります。遺言書があると、一般的には円滑に遺産分割ができるので、おすすめです」

    遺言書の3つの方式

    「もう一つが、生前に生命保険に入ることです。メリットは3つあります。1つは、相続人が死亡保険金で相続税を支払えること。保険会社に連絡すると、通常10日程度で現金が振り込まれます。もう一つは、死亡保険金を確実に受取人に渡せること。死亡保険金は遺産分割協議の対象外なので、相続人の間で話し合うことなく受取人が保険金を受け取れるため、“この人に残したい”という思いを実現できます。3つめは、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)を相続税評価額から差し引けるため、相続税を軽減できること。死亡保険金が5000万円で相続人が3人だとすると、相続税の対象が3500万円に減ります」(白川さん)

    生命保険を活用すれば、相続税を軽減できる

    生前贈与で相続税対策

    元気なうちに“生前贈与”をすることで、相続税の対策もできるのだとか。

    「ご存命のうちに、お子さんやお孫さんにコツコツと贈与すれば、最終的に相続財産を減らすことができます。贈与を受ける方一人あたり、年間110万円までは税金(贈与税)なしでもらうことができます。年間110万円以上贈与して贈与税を多少支払ったとしても、将来の相続税を減らす効果があります」(白川さん)

    何かと物入りなデュアラーに、相続税対策も含めて毎年贈与をしてもらうことができればとても助かります。さすがに義両親には伝えにくいので…親に伝えてみようかな。

    「例えば、相続財産2億円のケースで、毎年110万円をお子さんやお孫さんなど、3人の方に10年間贈与したとします。そうすると、3300万円を無税で贈与できますので相続財産は1億6700万円になり、相続税を減らせます。生前贈与は時間がかかりますが、節税効果が大きいので検討する価値はあります。注意しなければならないのは、相続に関する税務調査で生前に行なっていた贈与が『贈与者(親)の預金』として指摘される場合があることです。贈与をした認識を双方が持ち、しっかり記録を残すことが重要です」(白川さん)

    生前贈与をすることで、相続財産を引き下げる効果がある

    実は、生前贈与に役立つ生命保険があるそうです。それが、「生存給付金付終身保険」です。

    「生存給付金受取人をお子様などにすることで、給付金をスムーズに贈与資金として活用することができ、死亡保険金の非課税枠の活用も可能。『生前贈与』と『死亡保険金』のW非課税枠を活用できることになります」(白川さん)

    生存給付金付終身保険で、「生前贈与」と「死亡保険金」のW非課税枠を活用できる

    みんなが元気なうちからできる相続対策があるのですね。勉強になります。

    大和証券では「相続トータルサービス」というサービスを提供しているそうです。「遺言書作成の支援や簡易相続税試算などの事前サポートと手続きなどの事後サポートをさせていただきます。ワンストップでお手続きできますし、税理士や司法書士など提携している専門家のご紹介もできます。専門家に依頼いただく場合は実費がかかりますが、それ以外は無料でご利用いただけます」(白川さん)

    相続という未知の世界の話。でも、いつか必ずやってくる大切な話。大切なポイントを勉強できたので、実家に帰省した際によく話しあっておこうと思います!

    ※内容は2017年12月16日に行なわれたセミナーを元に作成しています。

    セミナー動画を公開中!

    本文で紹介した日経DUAL主催セミナー「~いざというときに慌てない~三世代で考える、お金のこと 相続のこと」の動画が公開されています。ぜひご覧下さい。

    「身近な人が元気なうちに話しておきたい介護・相続のこと~人生100年時代に備えるライフプラン~」

    「ダイワの相続セミナー 家族で考えるこれからの相続対策」

    文:ひがししょうこ

    撮影:清水真帆呂

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