どちらを優先!?子育て世代の「自分の老後」と「子どもの学費」
教育費負担は年々増加。教育費のかけすぎに気を付けて
幼稚園や学校の授業料に、塾や習いごと。子どもの教育費ってほんとうにかかりますよね。
家計相談をしていると、幼稚園や保育園のうちから、スイミングやサッカー、バレエなどの習いごとや、通信教材などで教育を始めるご両親も多く、子どもが小学校に上がると、そこに英語などの学習系がプラスされ、さらに子どもが高学年になると進学塾などに通う子も増えていく、そんな傾向がみられます。
かわいい子どもを思えばこそ、ついついかけたくなる教育費ですが、子どもが中高生になると授業料や塾代などの教育費負担はさらに増していき、部活動の遠征費、参考書、模擬試験などで数千円単位のお金が月に何度も出ていくようになります。また、中高生になると、運動をしている子は特に食べる量も増えますし、子どもによってはファッションのこだわりも出てきたりして、食費や洋服代なども並行して増えていきます。
こうした教育費のピークになると、老後のためにお金を貯めるのは大変なもの。場合によっては、貯蓄を取り崩してでも教育費をねん出しなくてはいけないこともあります。
老後資金が足りない!高齢出産夫婦、年の差夫婦は要注意
目先のことで手一杯になりがちな子育て世代ですが、子育てが終わったときのこともちょっとイメージしておきましょう。
厚生労働省「人口動態統計」によると、2014年の第一子の平均出産年齢は30.6歳。グラフで見ても、初婚年齢も出産年齢も年々右肩上がりに上昇していることがわかります。そこで考えてほしいのが、末っ子の子育てが終わったときに、夫婦が何歳になっているかということです。例えば、出産した時に夫が40歳、妻が35歳だった夫婦の場合、子どもが22歳で大学を卒業した時には、夫が62歳、妻が57歳になることがわかります。60歳定年の会社に勤めていた場合、子どもが大学生のうちにすでに定年退職を迎えます。
65歳まで雇用延長制度がある会社も近年は増えていますが、60歳以降の給与は減ることが一般的です。そのため、大学の授業料をねん出しながら、老後資金を貯めるのが難しくなることは覚悟しておきましょう。
高齢出産夫婦、年の差がある夫婦、子どもの数が多い夫婦は特に、子育て後に老後資金を貯める期間が短くなる計算です。教育費のピークに突入する前に、子育てと並行して老後の準備を始めておく必要があるでしょう。
夫婦で必要な老後資金は約3100万円
ところで、老後資金はどのくらい用意しておけばいいのでしょうか?夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦だけで暮らしている無職世帯の毎月の家計収支について、総務省の『家計調査報告(2015年)』で調べてみました。
(1)60歳から65歳までの5年間
年金の受け取りが始まる65歳までの5年間は、まだ年金収入がありません。ここでは、その他の収入も0円と仮定して、不足額を計算したいとおもいます。
24.4万円×12か月×5年間=1464万円
(2)65歳から87歳までの22年間
65歳からは老齢年金の受け取りが始まります。実収入から非消費支出(税金・社会保険料等)を差し引いた可処分所得18.2万円に対して、消費支出は24.4万円ですから、65歳以降はひと月あたり6.2万円不足することがわかります。
続いて、厚生労働省の簡易生命表より、平均寿命をみていきましょう。平成27年度の男性の平均寿命は80.79歳、女性の平均寿命は87.05歳となっていますので、ここでは女性の平均寿命87歳まで生きると仮定して、65歳から87歳までの22年間に必要な資金を計算していきます。
6.2万円×12か月×22年間=1636.8万円
(1)1464万円+(2)1636.8万円より、老齢年金等以外に自分で用意しておきたい老後資金は、3100.8万円とわかりました。
老後資金、全国平均データの落とし穴
約3100万円という数字を見て、どんな感想を持ったでしょうか?「3100万円なんてどうすれば貯まるの」と、思考停止状態に陥った人もいるかもしれません。また、「まとまった退職金がもらえるから大丈夫」と思った人もいるかもしれませんね。
ここで気を付けておきたいのが、全国平均データの落とし穴です。思考停止したり、安心したりする前に、もう少し詳しく、データの内訳を見ていきましょう。
全国平均データにおける住居費の割合は、消費支出の7.2%。金額にすると、ひと月1.8万円程度です。この金額って、一戸建ての場合なら住宅メンテナンス費用、マンション住まいの場合には管理費や修繕積立金が払えるかどうかという金額です。つまり、老後もずっと賃貸で暮らしていくつもりの人は一生分の家賃を、購入でも60歳以降にも住宅ローンの返済が残っている場合には、その分も上乗せしてお金を用意しておく必要があることがわかります。
そのほか、教養娯楽費の割合は、消費支出の10.7%。月に2.6万円と考えるとそれなりに思いますが、年間にして夫婦で31.3万円。仕事を終えたリタイア後の暮らしで、日々本を読んだり習いごとをたしなんだり、年に数回は国内外の旅行を楽しみたいと思っている人には、物足りない金額ではないでしょうか?
ここで覚えておいてほしいのは、3100万円という数字ではありません。ここで示した計算方法を参考にして、ぜひ、老後のために必要な額を自分たちのケースに当てはめて計算してください。老後まで時間がある子育て世代だからこそ、いまからできることがあるのです。
教育費や住宅ローンと老後資金を同時並行で準備するには
子育て世代は、住宅ローンの返済を抱えながら、年々増えていく教育費をねん出している家庭が多いもの。そんななかで、どうやって老後資金まで貯めていけばいいのでしょうか?
お勧めの方法は、目的別にお金を分けた積立です。教育費は教育費、老後資金は老後資金と目的別にお金を分ければ、目的に合わせた運用期間とリスク許容度を選択できます。一般的にすぐに使うお金は投資には向きませんが、すぐに使わない老後資金や余裕資金の運用は投資に向くと考えられています。
いま35歳の人が60歳に向けてあと1000万円貯蓄を増やしたい場合を想定してみましょう。毎月3万円ずつ今から25年間積み立てをすると、金利0%では25年後に900万円にしかなりません。しかし、投資信託などを活用して仮に年利3%で運用できれば、25年後には1330万円となって目標を達成することができます。このように、長期でお金を増やすことを考えるなら、投資信託の積立による資産運用も検討してみましょう。
少額からでもはじめてみる個人型確定拠出年金
このほか老後に向けた資産運用の一つとして、個人型確定拠出年金(iDeCo)という制度もあります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金を補完して、老後の生活を支えるための制度です。投資信託のように運用の成果次第で将来の受取額が変動するタイプの年金で、掛け金は全額所得控除になるため所得税や住民税の優遇が受けられる点が大きなメリットとなっています。ただし、受取り開始は原則60歳以降のため、途中でお金が引き出せない点には注意が必要です。老後のための資産形成が目的ならば、税制優遇のメリットは大きく、この制度を利用する価値は大きいでしょう。
文:ファイナンシャルプランナー 氏家祥美
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