教育資金

高校・大学進学のための教育資金 月々いくら貯めておけばいいの?


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    教育資金は早めに準備しておくことが大切。頭ではそう分かっていても、子どもが小さいうちは現実感がないと感じる方が多いのではないでしょうか。具体的に月々いくら貯めておけば教育資金として十分なのか――。これを知ることで、行動に移しやすくなります。そこでファイナンシャル・プランナー(CFP)の塚原哲さんに、“我が家はいくら貯めればいいのか”“どう貯めればいいのか”の決め方を指南してもらいましょう!

    高校と大学、1年ごとの学費を算出し貯蓄する

    高校入学から大学卒業までにかかる費用は、すべて国公立の場合でも平均566.4万円、すべて私立となると(大学は文系の場合)平均858.2万円だそうです。大学を私立理系にすると974.9万円になるとも。近年、高校の就学支援制度が拡充しましたが、年収制限があり、将来自分の子が高校生になったときに支援の対象でいるとは限りません。きちんと備えておくことは大切です。

    そこで塚原さんが勧めるのは、高校・大学の各学年で必要な学費を、その学年になるまでに少しずつ積立てておくという方法です。

    「まず、国公立高校の1年生の1年間の費用は入学金と在学費用を合わせて約28万円とされています。高校1年生は16歳なので、それまでに貯めれば間に合います。子どもが1歳のときから準備を始めるなら、15年間で28万円を用意すればいいわけです。そうすると

    28万円÷15年間≒1万8,666円

    つまり年間約1万9,000円ずつを積立てておけば、高校1年生の学費を用意しておける計算になります」

    次に高校2年生の学費は平均25万3,000円とされます。これは16年間で貯めればいいので、1年あたり約1万6,000円になります。

    このようにして、大学4年生分まで算出し、合計して12カ月で割ります。

    塚原さんが分かりやすく表にまとめてくれました。

    子どもが1歳のうちに国公立高校1年~大学4年にかかる7年分の学費の準備を始める場合、年間30万4,000円、月々約2万5,000円ずつ積立てておけばよいのです。子どもが2歳のときに貯め始めると、準備期間が1年短くなるので、その分毎年の積立額が上がり、年32万円、月2万7,000円になる計算です。

    きょうだいの分を合計する

    子どもが複数人いる場合、それぞれの子どもについて月々の必要貯蓄額を出します。それを合計すると、毎月いくら積立てればいいのかが分かります。

    例えば10歳と8歳の子どもがいて、2人とも国公立の高校と大学を考えている場合。

    第一子(10歳)は年額59.6万円で月約5万円。第二子(8歳)は年額48.9万円で月約4.1万円。合計で毎月約9.1万円になります。

    私立の高校や大学に行く可能性も考えるなら、下の表を参照して同様に算出します。

    さっそく計算してみましょう。意外に高額になると驚いた方も多いのではないでしょうか。

    「子どもがまだ小さいと、教育費に意識が向かない人は多いようです。でも、先送りにするほど月々の必要積立額は大きくなってしまいます。できるだけ早めに積立を始めたいですね」

    中高齢で家計がだんだんラクになっていく

    塚原式の教育費準備法にはいくつものメリットがあります。

    まずは、子どもが小さく、それほど教育費がかからないうちから実践しやすい点。そして、教育費による出費の波を抑えられるため、「きょうだいで私大に通い、家計が火の車」という事態を避けられる点が挙げられます。

    それどころか、子どもが高校生や大学生になると必要積立額はどんどん減っていきます。なぜなら、高校1年生になったら、1年生のために積立てていた学費を積立てる必要がなくなるからです。高校3年間が終わると、大学の学費分だけを積立てればよいのです。

    ただし、「可能ならそれまでの積立のペースを維持してほしい」と、塚原さん。維持することで、月々の余裕資金が生まれると話します。

    「この時期の余裕資金は、非常に有効です。例えば、子どもが高3になり受験のための塾に行くことになった場合は、高1~3年生のための必要積立額を塾代の一部にあてられます。大学生の子どもが資格取得の勉強をしたいと言い出したときも、費用面で応援できます」

    もし教育費として色分けして貯めていなかったら、手元から毎年数十万~百数十万円が出ていくことになります。すると気持ちに余裕がなくなり、お金を理由に子どもたちの選択肢を狭めたり学習意欲をそいだりする事態になるかもしれません。

    子どもが高校や大学に通うころには積立が習慣化されているので、さほど難しさを感じずに積立のペースを維持できるはず。これも塚原式の長所です。

    予定外の出費がなかった場合は、まとまった額が残ります。そろそろ自分たちの老後資金の心配もしなくてはいけない世代の親にとって、心強いはずです。

    天引きがベスト、学資保険は返戻率を確認する

    では、どう貯めればいいでしょうか。塚原さんは「天引きすべき」と断言します。

    「『パーキンソンの第2の法則』といい、支出は使える額(=収入額)いっぱいまで膨張するという法則があります。

    収入-支出=貯蓄

    という考えでいると、いつまでも貯蓄はできません」

    子どものための積立というと、学資保険を思い浮かべる人は多いでしょう。もちろん、学資保険には親に万が一のことが起きたときの備えという側面があります。しかし貯蓄という視点で考えると、「学資保険は元本割れする可能性もある」と塚原さんが注意を促します。

    「仮に、予定利率が年0.4%という学資保険があったとしましょう。銀行の円定期預金よりはるかに利率がいいので飛びつきたくなるかもしれませんが、実は学資保険では、掛け金から事業経費を差し引いた残額が運用にまわされます。掛け金が1万円なら1,200~1,500円程度が事業経費にあてられます。残額が年0.4%で運用されても、元本には追い付かない商品が存在するという理屈です」

    「予定利率ではなく、返戻率(キャッシュバリュー)、つまり払込んだお金に対していくら戻ってくるのかを確認することが大切です。受取総額を払込総額で割れば簡単に出せます。これが100%に達しないものは貯蓄には向きません」

    つみたてNISAでの投信積立、少額で試してみて

    教育資金を積立てる方法として塚原さんが勧めるのは、投信積立です。

    「多くの場合、月100円や1,000円から積立てることができ、口座引落としも可能です。まずは月1,000円から始めてみるといいのではないでしょうか」

    試してみることで、投資に対する向き不向きが分かるといいます。

    「興味が湧いて情報を集めたりいろいろ買ってみたくなったりする人は、向いているといえます。反対に、1円でも元本割れするのはいやだとか、気になって他のことが手につかなくなるという人は、やめたほうがいいでしょう」

    購入前に理解しておきたいのが、投資には手数料や税金がかかるということ。

    「これがもったいないと思う方には、つみたてNISAをお勧めします。年間40万円、最長20年間の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税になるというものです」

    対象が積立に向いた投資信託に限られるので、教育費を貯めたい人にとっては選びやすい点も魅力です。

    「いずれにしても」と、塚原さん。

    「ものごとには入れ替えられない順序があります。小学校、中学校、高校、大学の順に進むことは入れ替えられません。よく考えずに小学校のうちにどんどん教育費をつぎ込んでしまうと、本当に教育費を必要とする時期に枯渇してしまう可能性もあります」

    将来を見越して、早い時期から準備をすることが大事ですね。

    <塚原氏プロフィール>

    塚原哲 氏

    生活経済研究所長野 所長、CFP ファイナンシャル・プランナー。1970年東京都生まれ。1993年、早稲田大学理工学部卒業、精密機器メーカーに入社。1998年AFP資格を取得。FPの組織化に尽力。2000年CFP資格を取得し、翌年に生活経済研究所長野を設立。以降、日本FP協会関東ブロック・副ブロック長、日本FP協会評議員などを歴任。労働組合コンサルタントとして活躍する一方、家庭向けの家計管理やライフプランニングにも詳しい。著書に『銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識』(日経BP)がある。

    (文/松田慶子)

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    つみたてNISA

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