教育資金

家計に余裕がなければ私大を選べ!? 知っておきたい学内奨学金制度


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    子どもの教育費を考えるうえで、悩ましいことの一つに挙げられるのが大学選びではないでしょうか。「うちは下にも子どもがいるから、国公立に行ってもらわないと……」「うちは小中高大とオール公立で、自宅からの通学を想定している」。こんな会話があちこちで聞こえます。しかし、「国公立大=お金がかからない」「私立大学=お金がかかる」と決めつけるのは早計かもしれません。ファイナンシャル・プランナーの塚原哲さんは、「家計が苦しい家庭こそ、私立大学を受けるべき」と断言します。その理由とは……?

    受験料、入学金、授業料。やっぱり私立大は高い。でも……?

    そもそも大学4年間で学費はいくらかかるのでしょうか。

    日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」(2020年10月30日)によると、1年間の在学費用は、授業料、通学費、教科書代などを含め、国公立大で105.8万円、私立大文系で143.2万円、私立大理系で183.3万円でした。これに学外での活動費などを加えると、4年間でそれぞれ460万円、608.4万円、768.8万円となります。

    このほか入学にあたって、学校納付金や受験費用、合格したけれど入学しなかった大学への納付金などが必要となります。それら入学費用を見ても、国公立大の77万円に対し、私立文系は95.1万円、私立理系は94.2万円。私立大学のほうが何かと高額になるのは事実です。

    「でも」と塚原さんは切り出します。「私立大学でも、国公立大学より学費を抑えられる可能性はあります。なぜかというと、私大は学内奨学金制度が充実しているところが多いからです」

    実はたくさんある給付型奨学金!活用すれば国立大より早慶のほうが学費が少なくなる!?

    奨学金というと、日本学生支援機構(JASSO)を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

    「高等教育の修学支援新制度の開始に伴ない、給付型の奨学金も登場しましたが、JASSOの奨学金は返還が必要な貸与型が基本です。これに対し、各私立大学が独自に設けている学内奨学金の多くは返還不要な給付型です。しかも一部の成績優秀者だけが対象というわけではありません」(塚原さん)

    少子化が進む今、生き残るために優秀な学生を獲得したいという大学側の意図の表れといえるかもしれません。

    「金額が大きく対象人数が多い制度が多いのも、私大の特徴です。例えば、早稲田大学の『めざせ!都の西北奨学金』。首都圏以外の高校出身者で、親の年収が800万円未満という条件はあるものの、1年間の学費のおよそ半額にあたる45万~70万円(学部による)が給付されます。しかも採用候補者数は約1,200人です。給付期間は4年間で、入学時に申請が通れば、基本的にはそのまま4年間、約半額の学費で通学できるというわけです(毎年進級時に、家計状況や学業成績による継続受給の判定が行なわれます。)」(塚原さん)

    慶応義塾大学にも、同様の制度があります。

    「学問のすゝめ奨学金」は、首都圏以外の高校出身者が対象で、かつ父母の年収が1,000万円未満など条件はありますが、採用候補者数は550人。年額60万円(医学部は90万円、薬学部は80万円)が給付されます。入学初年度には、上記に加え入学金相当額にあたる20万円の給付も。

    通常の学費から給付額を差引くと、以下のようになります。

    文学部の場合

    初年度:1,343,350円(入学金、授業料など) - 800,000円(奨学金) = 543,350円
    2~4年度:(1,143,250円〈授業料など〉 - 600,000円〈奨学金〉)×3年 = 1,629,750円

    本来の学費4年間合計 4,773,100円 → 4年間合計 2,173,100円

    ※学費の金額は慶応義塾大学ホームページより。計算結果は一例です。

    2~4年生は1年あたり約54万円の授業料になります。

    「奨学金を受けずに国公立大に行くよりも、受取って私大に行くほうが学費が少なくなる、という状況が実際に生じ得ることがよく分かるのではないでしょうか」(塚原さん)

    両大学とも、これらのほかにも多くの奨学金制度があり、首都圏出身者を対象にしたものもあります。詳しくは各大学のホームページで確認を。

    他の私大でも、独自の奨学金制度を数多く設けています。中でも塚原さんが「特筆に値する」と挙げるのが、専修大学の「スカラシップ入学試験」。対象人数は100人以内ですが、合格すると4年間の授業料・施設費が免除になります。同大経済学部・法学部の場合、自己負担額は以下のようになります。

    初年度:1,224,000円 - 980,000円 = 244,000円
    2年次:1,060,000円 - 1,026,000円 = 34,000円
    3年次:1,060,000円 - 1,026,000円 = 34,000円
    4年次:1,075,000円 - 1,026,000円 = 49,000円

    本来の学費4年間合計 4,419,000円 → 4年間合計 361,000円

    ※学費の金額は専修大学ホームページより。計算結果は一例です。

    40万円弱で4年間の大学教育を受けることが可能になるのです。

    自宅外通学者の場合、専修大学の経済学部のキャンパスがある神奈川県川崎市の相場からアパートの家賃を月5万4000円と想定すると、

    54,000円 × 48カ月 +108,000円 (敷金・礼金) = 2,700,000円

    これに4年間の学費361,000円を足すと3,061,000円。「一人暮らしをさせるのはムリ!」という家庭にとっても、選択肢の一つに浮上してくるのではないでしょうか。

    なお、法学部の場合は東京都千代田区にあるので、アパートの家賃相場は上がり、月8万6000円を想定。よって、4年分の家賃と敷金・礼金を合わせた4,300,000円に、学費361,000円を足すと4,661,000円となります。

    奨学金の申請は受験前!調べることまでは保護者の役目

    このほか、学校に納める全費用を給付金で賄えるような制度を設けている大学もあります。複数の奨学金を併用可というケースも多く、組合せることで学費がほぼゼロになる可能性もあるのです。

    ところが、「せっかくの制度を知らない人が多い」と、塚原さんが指摘します。

    「ここでは私学の奨学金を紹介しましたが、国公立大にも授業料免除制度はあります。また、民間団体や自治体の奨学金制度も多数あります。しかし、それらを一元化したインターネットサイトのようなものはほとんどありません。受験の候補先が絞れてきたら、その大学のサイトなどで保護者がとことん調べることが大切でしょう。勉強するのは子どもの役目。お金の工面は親の役目です」

    多くの場合、奨学金の申請は一般入試前までに行なうこととなっています。さっそく情報を集めてはいかがでしょうか。

    大学進学資金を貯めるには?

    奨学金をうまく活用できたとしても、大学に行くとなると一般的には数百万円の学費がかかるのが通常です。さらに受験前の塾の費用も無視できません。通う高校が公立か私立かで金額はやや異なりますが、塾に通っている生徒の1/3前後が1年あたり40万円以上の費用を塾に投じているという調査結果もあります(平成28年子供の学習費調査 結果概要/文部科学省)。

    ではこれらの教育費をどうやって蓄えればいいのかが気になるところでしょう。

    「子どもが小学生や中学生なら、積立型の投資信託は選択肢の一つになる」と、塚原さん。「元本割れの可能性があるので、受験が間近に迫ったご家庭にはお勧めできませんが、少額から始められ、購入し忘れがなく、長期的に見れば貯蓄以上にふえる可能性はあります」

    ただし売却益や分配金に20.315%の税金がかかります。

    「長期的に積立てるなら、『つみたてNISA』を利用するのが得策です。分配金と売却益が非課税になります。なお、教育資金を準備する手段としては学資保険が有名ですが、中には元本割れしてしまう商品もあります。貯蓄を目的にしているなら、返戻率を確認し、最低でも100%以上になるものを選びましょう」(塚原さん)

    いずれにしても、「家計が苦しい」を理由に、子どもの進路選択を狭めてしまわないよう、早めに情報を収集して準備することが大事だといえそうです。

    <塚原氏プロフィール>

    塚原哲 氏

    生活経済研究所長野 所長、CFP ファイナンシャル・プランナー。1970年東京都生まれ。1993年、早稲田大学理工学部卒業、精密機器メーカーに入社。1998年AFP資格を取得。FPの組織化に尽力。2000年CFP資格を取得し、翌年に生活経済研究所長野を設立。以降、日本FP協会関東ブロック・副ブロック長、日本FP協会評議員などを歴任。労働組合コンサルタントとして活躍する一方、家庭向けの家計管理やライフプランニングにも詳しい。著書に「銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識」(日経BP社)がある。

    (文/松田慶子)

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