夫は会社員ですが、私は非常勤で老後の年金が少ないのが心配。iDeCoやつみたてNISAに加え、どんな方法で貯めればいいですか?
誰もがかかえる家計に関する悩み。悩みや疑問は人によりさまざまです。
「貯金ができない」「家計が赤字」「子どもの教育費や老後資金が心配」など、実際に寄せられたご相談に対し、家計の専門家であるファイナンシャル・プランナーが収入、支出、貯蓄額、家族構成などの状況を確認しながら具体的にアドバイスします!
夫は会社員ですが、私は非常勤で老後の年金が少ないのが心配。iDeCoやつみたてNISAに加え、どんな方法で貯めればいいですか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする「わが家の家計診断」。
今回の「わが家の家計診断」は夫が会社員で、2人の子育てをしながら非常勤の学校職員として働く主婦から、老後資金の準備の仕方についてのご相談です。ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします!
子ども2人は私立の中学生ですが、教育費は家計からやりくりしています。春から私は個人事業主になるため、老後のためにどう準備すればいいですか?
子ども2人は中学受験を終えたので、今後しばらくは旅行代などを節約し、2人分の学費も家計からやりくりするつもりです。大学費用も現在の貯蓄などから、無理のない範囲で用意する予定。会社員の主人は今まで転勤も多く、私は子育てと仕事を両立しながら、扶養の範囲で働いてきました。社会保険の扶養を外れる、130万円の壁は超えることはなかったのですが、103万円を超えて税金も少しは払うことがあり、2019年から節税と貯蓄を兼ねてiDeCoを始めました。当初は定期預金にしていましたが、毎月の手数料がかかるのに、利息がほとんどつかない定期預金ではもったいないと気づき、年1回の拠出に変更。貯まった定期預金はそのまま残し、新たに積立てる分は3種類のファンドに配分変更し、つみたてNISAも2種類のファンドで始めました。私が行なったiDeCoの配分変更と、つみたてNISAの選択は正しかったでしょうか。
また、今春から非常勤講師になり、年収が130万円を少し超えるため、扶養を出て個人事業主になります。そのため、将来のことも考えて月4万円で国民年金基金にも入ろうと思いますが、もっとほかに適したものはありますか?
老後の公的年金は夫婦ともに70歳まで繰下げ受給をするつもりですが、そうすると70歳まではどれくらいの収入を得たらいいかも教えていただけるとうれしいです。
相談者プロフィール アバタモエクボ(仮名)さん
性別:女性
年齢:43歳
職業:非常勤講師
家族構成:
夫(46歳・会社員)
子ども2人(14歳、12歳)

アバタモエクボさんの家計内訳



老後資金の積立て先を増やせば管理が複雑になります。iDeCoの拠出額を増やして対応し、家計のお金の流れも整理しましょう。

答えてくれたのは…
ファイナンシャル・プランナー
井戸美枝さん
ファイナンシャル・プランナーとして家計相談などを行なうほか、社会保険労務士として年金・保険・介護などの公的保障にも詳しく、マネーサイトや新聞・雑誌・本などの執筆、講演のほか、テレビ・ラジオなどにも出演し、活躍中。
アドバイス1: 個人事業主の老後資金は「iDeCo」と「つみたてNISA」の併用で十分でしょう。さらに積立額を増やすなら、「小規模企業共済」という選択肢もあります
ご相談者のご主人は今までずっと同じ会社で厚生年金に加入していますが、ご自身は国民年金だけなので、老後の年金が少ないことを心配しています。そのため、iDeCoやつみたてNISAを始め、今年になって自分でリスク許容度や性格判断を使って選択したファンドが、果たして正しかったのかどうかを知りたいというご相談です。
iDeCoは節税を兼ねているのであまり冒険はしたくないと考え、バランス型ファンドに75%、残りを先進国の債券型と株式型の3種類に分け、つみたてNISAは長期保有で少しは冒険してもいいと思い、バランス型のインデックス・ファンドと米国株式のインデックス・ファンドの2種類にしたそうです。
結論から言うと、これらは当分そのままにして積立を続け、スイッチングなどは考えなくていいでしょう。投資信託での積立は10年、20年という長期で運用することで複利効果が期待できるため、日々の価格の変動や評価損益に一喜一憂する必要はありません。数年経ってからリターンなどを考慮して、資金の配分変更を検討するという見直し方をすればいいと思います。
さらに月4万円で国民年金基金に加入することも検討されていますが、残念ながら今から加入する人にとって、あまり有利とは言えません。個人事業主だと国民年金第1号(※1)の被保険者になりますが、将来、1号でなくなれば、その時点で積立はできなくなり、資金は65歳まで据え置かれます。今後もずっと1号でいる予定でも、新たに加入するなら小規模企業共済で積立てるほうがいいでしょう。
小規模企業共済なら、掛金は全額所得控除になる点は基金と同じですが、こちらなら仕事をやめた時点で、積立てた分を退職金代わりに一時金で受取ることができます。
また、国民年金基金とiDeCoは併用できますが、掛金の上限は両方を合計した額のため、国民年金基金で使ってしまうのはもったいないと思われます。また、iDeCoは口座管理手数料がかかるので、掛金の上限額まで積立てをしたいところです。積立額を増やすなら、iDeCoの掛金を増額することをお勧めします。
一方、ご主人はiDeCoを定期預金で積立てています。掛金が所得控除になり、所得税・住民税が低くなりますが、利息が非課税になるメリットはほとんどありません。公的年金にプラスαで貯める資金なので、月2万円は国内外の株式・債券で運用するバランス型ファンド1本に変更してはいかがでしょう。ご主人の会社は65歳定年のため、会社員は65歳までiDeCoの積立を続けられる点でも制度を目いっぱい活用し、老後資金を増やしやすくなります。
※1 20歳以上60歳未満で、個人事業主・自営業の方/農業者や漁業者、学生および無職の方/上記の配偶者の方(厚生年金や共済組合などに加入しておらず、第3号被保険者でない方)などが対象となる。
アドバイス2: 夫の老齢厚生年金は妻が65歳になるまで加給年金が加算されるため、公的年金の繰下げ受給は妻のみか、妻と夫の基礎年金だけにすると有利
ご相談者は、自分は老後の年金が少ないので繰下げ受給しかないと考え、ご主人も女性のほうが長生きすることを考えて、繰下げ受給に同意しているそうです。現在の見込み額では、65歳から妻は老齢基礎年金で月6万5,000円程度、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月21万円弱。夫婦合計で27万4,000円くらいですが、2人とも70歳まで繰下げれば、夫婦合計で月39万円弱に増えることを年金試算で確認したそうです。
とはいえ、妻は夫より3歳年下なので、夫が65歳から受取る老齢厚生年金には、妻が65歳になるまでの約3年間、年に約39万円の加給年金(※2)が加算されます。しかし、夫が2つとも繰下げ受給にすると、この分を受取ることができません。繰下げして加給年金を受取らなかった場合、夫が85歳より長生きするならば、年金の受取り総額は多くなります。しかし、命の長さは誰にも分かりません。70歳までの間、年金が受取れないことで生活費が窮するなら、繰下げは妻のみにするか、妻と夫の老齢基礎年金だけにして、夫の老齢厚生年金は65歳から受給するほうがいいでしょう。
繰下げを妻のみにした場合でも、65歳から3年間は、夫が月に17万6,500円程度の年金を受取れるため、70歳まで働き続けるとしても、夫婦で月に15万円程度の収入を得れば、夫婦2人の生活を十分に維持することができます。これにiDeCoで積立てた分も年金として加われば、旅行費用などの余裕も生まれます。2人とも70歳を過ぎたら、夫婦合計で月32万~33万円程度の年金となるため、平均的な生活水準なら年金だけで暮らしていけると思います。
※2 厚生年金の被保険者が65歳に到達した時点で、被保険者が扶養する子どもや配偶者がいる場合に支給される年金。
アドバイス3: 月々の家計から出すものと、ボーナスから支払うものを整理して夫婦の貯蓄バランスと預金の預け先も見直しましょう
このご家庭は、月々の給与の残りとボーナスから大きな支出を賄っていて、年間単位で見れば世帯の手取り収入の範囲でやりくりできています。しかし、実際のところ、月々の生活費はいくらなのか、あまり正確には把握できていない点が気になります。
できれば毎月の生活費は予算を決めて管理し、予備費とボーナスは別口座に移して、何にいくらかかるのかをしっかりつかんでおくといいでしょう。別口座から出した支出は、通帳にメモすれば、家計簿を見なくても年間での合計額を簡単に知ることができます。今後は子ども2人の塾代や学校関係の細かい費用も増えることが多くなるので、家計の予算は、毎年一度は見直して、その都度調整していくといいでしょう。
一方、現在の貯蓄の仕方を見ると、妻が毎月の積立額を4万円増やすと、妻が合計9万6,000円になり、夫はiDeCoの月2万円だけで、夫婦の貯蓄バランスが偏っています。生活費の予算を見直したり、妻の収入が増えたりしたら、夫名義の貯蓄をもう少し増やしましょう。その分は給与口座にセットする自動積立などでかまいません。今は老後のための積立以外はあまりできていないので、万一に備えるお金や車の買い替えなどのためにも、夫名義の預貯金を増やしておくことをお勧めします。
また、子どもの大学費用については現在の貯蓄から充てる予定なら、その分の貯蓄はしっかり分けて管理していくことも大切です。定期預金に預けたままのお金は、半分くらいは個人向け国債にして、少しでも利回りをアップする方法もあります。
2人の子どもが中学・高校生の間は、けっして家計に余裕があるわけではないので、老後資金に向けた積立だけでなく、何にでも使える貯蓄を少しでも増やすことを考えましょう。
相談者アバタモエクボさんより
このたびは診断ありがとうございました。制度が難しく不安要素だった年金部分がクリアになり、いろいろと今後の方針を立てることができそうです。
その第一が「月々の生活費」の把握です。おっしゃる通り、ボーナス頼りにしている部分があり、「先取り貯蓄」でなく「残し貯め」で安心していた部分がありました。主人のiDeCoの内容や学費を管理する口座の名義など、相談してアンバランスにならないように改善したいと思います。
40~50代で何らかの事情で仕事をやめてしまった方、主婦業メインでやってきて急に「共働きで厚生年金がないと老後資金が枯渇する」と言われ、不安に襲われている方がいると思います。「国民に分かりやすい制度の周知」「フルパワー2馬力でなくても安心して子育てできる社会的援助」があれば、もっと不安なく過ごせるのに……と改めて思いました。
取材・執筆/光田洋子
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