わが家の家計診断

世帯年収800万円でも貯蓄できない……。どうすればいいの?


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    誰もがかかえる家計に関する悩み。悩みや疑問は人によりさまざまです。
    「貯金ができない」「家計が赤字」「子どもの教育費や老後資金が心配」など、実際に寄せられたご相談に対し、家計の専門家であるファイナンシャル・プランナーが収入、支出、貯蓄額、家族構成などの状況を確認しながら具体的にアドバイスします!

    世帯年収800万円でも貯蓄できない……。どうすればいいの?

    皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする「わが家の家計診断」。
    今回は高校受験を控える中学生と小学生の2人のお子さんがいる公務員家庭で、危機感を募らせるご主人からの相談です。ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします。

    月々のやりくりでは追いつかず、ボーナスから補填する生活です。妻のパートで赤字はやや減少したものの、長女は私立高校・大学に行かせられるのでしょうか?

    少し前まで貯蓄が全くできず、ボーナスから補填する以外に、貯蓄を取り崩して生活していました。1年半ほど前から、ようやく妻がパートに出始めたのですが、それでも貯蓄は月1万円で、預金残高は約80万円から100万円になっただけ。一昨年までは長女にバレエを習わせるなど、妻は教育熱心で子どもにお金をかけ、家計を圧迫。私が家計の危機を伝え、教育費や車関連費の削減を訴えても、説得できません。4月から管理職に昇進し、月々の手取りが若干減るため、今年度の支出予定(下の表参照)で考えても、貯蓄は難しい状況です。中3の長女は高校受験で私立を希望しているのも悩みどころ。下の子は6歳違いのため、長女が大学を卒業すれば、下の子の教育費は何とかなると思うのですが、私立理系大学は無理でしょうか。老後の生活も不安ですが、まずは今後必要な教育費をどう貯めたらいいか教えてください。

    相談者プロフィール ギリ(仮名)さん

    千葉県在住
    性別:男性
    年齢:43歳
    職業:公務員

    家族構成
    妻(45歳、パート勤務)
    子ども2人(14歳、8歳)

    ギリさんの家計内訳

    40代で税込年収800万円の世帯にしては貯蓄が少なすぎます。家計の予算分けは貯蓄分を先に引いてから、優先順位をつけて必要なものから振り分けましょう。

    答えてくれたのは…
    ファイナンシャル・プランナー
    井戸美枝さん

    ファイナンシャル・プランナーとして家計相談などを行なうほか、社会保険労務士として年金・保険・介護などの公的保障にも詳しく、マネーサイトや新聞・雑誌・本などの執筆、講演のほか、テレビ・ラジオなどにも出演し、活躍中。

    アドバイス1 妻が貯蓄に関心が薄いのは、夫が公務員で安定した収入があるからでしょう。客観的なデータを示して、夫婦で子どもの進学先などを話し合うことが重要

    ご応募いただいた書類には、「妻は家計管理や将来設計にはあまり関心がなく」と書かれています。その代わり教育には熱心で、幼少期から子どもにお金をかけてきたことや、何かとお金のかかる今のワンボックスカーを軽自動車などに買替えることも頑として受入れないことなどに、ご主人は頭を痛めているようです。

    ご主人は公務員で、毎年の収入も安定しているため、妻は「月々の家計は赤字になっても、ボーナスから支払えばいい」という意識があり、これまで貯蓄の必要性を感じずにこられたのでしょう。しかし、いくら公務員とはいえ、毎年の収入をほぼその年中に使い切ってしまうような「きりぎりすの生活」ができるのは、子どもが小さいころだけです。
    中学、高校へと進むと、習い事などをやめても教育費はかさみ、家計の支出も増えていきます。大学に進学するとなれば、さらにまとまった学費の支払いが生じるため、貯蓄がなければ乗り越えられません。大学資金をすべて奨学金に頼るようになれば、子どもに将来の借金を背負わせることになるのだと認識すべきでしょう。

    ご主人から妻へ意識改革を迫るなら、世の中の家庭の平均的な金融資産の額や、進学費用などのデータを示してみるのもいいかもしれません。
    例えば、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(二人以上世帯・2018年)によると、金融資産がある世帯の場合、世帯主が40代だと平均金融資産の額は1,238万円です。金融資産がない世帯を含めた平均額でも、40代は942万円、30代では660万円、20代は249万円なので、ギリさんのご家庭は20代の家庭より金融資産が少ないということです。収入から考えても、これはかなり困ったものだといえるでしょう。

    進学費用についても、甘い考えは禁物です。文部科学省の「子供の学習費調査」(2016年度)によれば、私立高校に進むと1年目は約128万円、2年目は約98万円、3年目は約86万円で、3年間で平均300万円以上かかります。公立高校でも初年度は約52万円、3年間で約135万円です。
    大学は学校納付金だけで国公立でも4年間で250万円前後、私立大学では4年間で文系が約428万円、理系は約589万円(下図を参照)。芸術系や薬学部系はもっと高くなります。

    お子さん2人が私立高校・私立大学(1人が文系、もう1人が理系)に進んだ場合、これから先、トータルで1800万円くらいの教育費がかかることになります。残念ながら、今の家計管理のやり方や貯蓄額では、高校・大学ともに私立に進むのは難しいでしょう。このような現状を理解した上で、今からすぐできることを考えてみたので、試してみてください。

    アドバイス2 思い切って家計全体を見直し、児童手当のほかに月々3万円を天引き貯蓄に。ボーナスからも3分の1は貯蓄として先に取り分け、教育費として確保して

    ご主人は手取り額が減った4月以降の家計で月々の支出予定を考え、ボーナスから支払う予定の金額も昨年度の実績を基に細かく決めています。2019年度は長女の高校受験用の費用も計上し、想定外の出費さえなければ、収支はほぼプラスマイナス・ゼロでいけると考えています。しかし、その通りにしていたら、貯蓄ができない家計が今後も続くということ。
    それでは困るから相談されてきたわけなので、ご主人の考えた予算立てはいったん白紙に戻し、新たに考え直してください。

    まずは今までの予算分けの考え方自体が、間違っていることに気づいてください。
    家計の予算を考える際は、最初に「最低でもこれくらいは貯蓄に回したい」という金額を決めて、それを除いた金額を基にして、優先順位をつけて必要な支出から予算を振り分けていくというのが基本です。

    一般的に、共働き家庭では手取り月収の2割は貯蓄に回したいところですが、ギリさんのご家庭では厳しそうなので、まずはご主人の手取り月収の1割、月3万円を給与天引きの貯蓄に回しましょう。今は1万円なので、あと2万円増やすということです。天引き貯蓄なら、口座に振り込まれる前に積立に回るので、確実に貯められます。
    また、今は使ってしまっている児童手当も、振込先を給与口座とは別の口座にして、教育費として貯めていきましょう。児童手当は長女が中学を卒業すると支給されなくなるため、減ることになりますが、そのまま貯め続ければ、下の子の教育資金として80万円ほど確保することができます。

    そのうえで、早急に長女の高校・大学向けの教育資金の準備が必要です。私立高校でも、学費が現在長女にかけている教育費の年間76万円以内で済む学校なら、進学は不可能ではありません。しかし、私立高校では部活や行事にかかる費用も公立より高めになり、塾通いは私立でも必要な場合があります。それらを月々の家計から支払えるかどうかが問題です。できれば高校までは公立に進むほうが、無理のない選択といえるでしょう。
    大学進学に向けてもあまり時間はないので、夫のボーナスから約3分の1の50万円を教育資金として取り分け、定期預金で貯めていきます。今年度と長女の高校3年間、ボーナスから年間50万円ずつ貯めれば、大学進学までに200万円を準備できます。学資保険の120万円と合わせて320万円あれば、国公立なら問題なし。私立文系でも初年度と2~3年目くらいの費用に充てられるので、不足分は大学1~2年目のボーナスから貯めれば何とかなるでしょう。

    下の子の大学資金についても、長女の大学3年目以降、ボーナスから毎年50万円ずつ貯めていくと、大学進学までの3年間で150万円。下の子用の学資保険と養老保険、児童手当の80万円を合わせて490万円になるので、私立理系も不可能ではありません。不足する学費は在学中のボーナスから充てればいいでしょう。

    ちなみに、今ある貯蓄の約120万円は、世帯の手取り月収の3か月分ですから、不測の事態に備える資金としてできるだけ手を付けず、確保しておきます。月々の積立3万円も、そのまま続けていけば、受験費用などに充てられるほか、老後資金のベースになります。

    アドバイス3 月々、ボーナスともに、貯蓄分を取り分けたら、削れる支出を検討。車関連費やレジャー費などは年間単位で予算を大幅にカットしたい

    月々とボーナスから貯蓄分を取り分けたら、残りのお金で暮らしていくために、今の予算分けを見直しましょう。住宅ローンを別にすると、最もお金がかかっているのは教育費で、年間125万円。今年度は受験があるとはいえ、通常の年でも年間115万円ほど。受験に備えるなら習い事はやめるなど、どうしても必要な支出だけに絞りましょう。
    次が車関連費で年間61万円なので、見直しは不可欠です。月々のガソリン代などを節約し、近いうちにご主人の言うとおり負担の少ない車に買替えを。自動車保険や税金、車検代もぐんと安くなるはずです。

    月々の家計は、児童手当を貯蓄に回し、天引き貯蓄を2万円増やすため、車関連費、食費、その他の支出から合計4万円カットします。今は家族の小遣いを決めずに、食費やレジャー費、その他の支出に紛れています。例えば、夫の小遣いを2万円として、食費に含まれる夫の昼食代1万円もそこから出します。妻も小遣いを1万5000円と決め、ママ友とのランチ代や化粧品、美容院代もそこから出すのがいいでしょう。

    ボーナスからの支出についても、貯蓄50万円と住宅ローンの48万円を除くと、使える金額は約63万円。教育費を削れないなら、レジャー・旅行費や外食代を抑えるしかありません。妻のボーナスは妻の洋服代と決めているようですが、であれば、その他の支出から出している洋服代を見直すなど、年間単位でかけすぎの費用をカットしましょう。
    昨年度の実績にこだわらず、今年度から気持ちを切り替えて「これしか使えない」と思うことが大切。どうしても必要な費用から予算を取れば、今よりスリムな家計になるはずです。教育費に備えて貯蓄習慣が身につけば、その後は老後資金も貯めやすくなるでしょう。

    相談者ギリさんより

    先取り貯蓄はやってきていたのですが、これまでも結局足りないものは下ろして使う状況がありました。恐らくは月3万円、ボーナス50万円と先取りしても、結局は下ろさざるを得ない状況になると思います。実績を並べてみても、このくらいはかかってしまうかなという……。

    そうするとやはり、車関連と教育費を削るしかないのではと思います。維持費の少ない車に替えるために、この記事を妻に見てもらいます。あとは収入を増やすしかないと。来年度も昇格する可能性があり、そうなればもう少し楽になり、先生のご指導の額で先取り貯蓄が出来ると思います。苦しいのはこの1年なのでなんとか乗り切りたいと思います。

    いずれにしても、具体的な月々の貯蓄額、ボーナスからの貯蓄額を提示いただけ非常に参考になりました。ありがとうございました。

    取材・執筆/光田洋子

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