令和時代のパパに聞く!パパもママも子育てしやすい環境をつくるための男性育休とは?
男性の育児休業(以下、育休)についてニュースなどで取上げられる機会が増えるなど、子育てを取り巻く環境は一昔前とは確実に変わってきていると感じます。しかし、企業によっては男性向けの育休制度が整っておらず、休みを取りづらいという方が多いのも現状です。また、保育所の待機児童問題や、在宅勤務時の子どもとの関わり方など悩みはつきません。そこで今回は、認定NPO法人フローレンスみらいの保育園事業部のマネージャー中村慎一さんにインタビュー。15歳、12歳、6歳の三児のパパで、第三子の出産の際には前職のIT企業で半年間の育休を取得したそうです。パパが育休を取得する際には、どのような気持ちで家事や育児に取組むといいのか、ワークライフバランスをどのように考えていけばいいのかなど、お話を伺いました。
目次
育休を取るor取らない?男性が悩む背景
2021年に改正された「育児・介護休業法」が2022年4月以降順次施行され、男性に対する育休制度がますます整ってきました。改正のポイントは2つあります。1つ目は子どもが生まれてから8週間以内に、4週間まで取得可能な「産後パパ育休(出生時育児休業)」が設けられたこと。2つ目が、これまで分割して取得することができなかった「育児休業制度」を2回に分けて取得できるようになったことです。
また、2023年4月から「従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表すること」も義務付けられることになっています。このように、国も男性が育休を取得しやすいよう制度を整え、育児に参加しやすい環境作りを進めています。
男性の育児参加が制度として後押しされている一方、男性の育休の取得率は依然として13.97%(2021年度)と低いままです。この現状に対し、中村さんはこのように話します。
「実は、世界の中で見ても、法律的に日本の育休制度は優れています。取得可能期間も最長2年と世界でもトップレベルの長さです。しかし、実際に育休を取得している男性の数はとても少なく、男女差は大きいです。その要因の一つとしてあるのは、以前よりも改善されているものの、依然として存在する男性の家事や育児に参加する意識の低さではないかと思われます。また、もし男性が育休を取りたいと思っても、周りに参考となる人がいないと、『キャリアが断絶してしまうのでは』『会社にいらないと言われるのでは』『家計が回らなくなるのでは』といった不安を抱くケースもあるでしょう」
こういった不安が起こる理由について、中村さんはこう続けます。
「実は、このキャリアと収入に関する不安が起こる理由は同じところにあります。キャリアと収入に関する不安について、もしかしたら“仕事は男のもの”といった思い込みが要因としてあるかもしれません。しかし、キャリアの断絶や昇進・昇給への影響、収入減といった不安は、男性だけのものではありません。母親である女性も同じ不安を抱えているんです。そのことに気づかず、男は仕事、女は育児という感覚を当たり前に思っている社会が、男性の育休を広がりにくくさせる現状を作り出しているのではないでしょうか」
国も法整備を進めて、各企業も対策を取り、じわじわと取得率は上がってきてはいる中で、変わるべくは男性側の意識なのかもしれません。
スムーズな育休取得のために!仕事面での上手な準備
実際、育休を取得したいと思ったとき、どんなことに気を配ると良いのでしょうか。気持ちよく周りの上司や同僚からの理解を得て、引き継ぎなどの協力をするために、どのような準備をしておくと良いのか、中村さんに聞いてみました。
「私の個人的なエピソードですが、3人目の子どもが生まれ半年間の育休を取る前の7~8年間は定時退社を続けていたという下地がありました。定時退社を始めたきっかけは、妻が第二子を妊娠中に切迫早産になり、私が第一子の保育園のお迎えに行かなくてはならなくなったことです。定時であがるためには仕事の調整が必要ですが、この状況になってはじめて自分が今までいかに残業を前提として働いていたかが分かりました。また、保育園のママ友たちと話す中で、残業できない人たちが限られた時間の中で成果を上げるために、どれだけ努力しているかにも気づかされました」
中村さんはその後も定時退社を続け、常々職場の上司や同僚に、男性が家事や育児に参加することがいかに大切かを話していたそう。最初は、男性が育児参加のために定時退社をするという考え方は周囲にはほとんどなかったので驚かれていたものの、徐々に「この仕事は明日でいいよ」「そろそろお迎えの時間じゃない?」と声をかけてもらえるまでになり、スムーズに社内第一号の男性育休も取ることができたそうです。
とはいえ、これから育休を取得したいと考えている方にとって何年もかけて職場で理解してもらうのはなかなか難しいでしょう。では、どうしたら良いのでしょうか。
「育休を取ろうと思ったら、まずは『なぜ育休を取りたいのか』『育休を取ってどうしたいのか』ということを自分の言葉で伝えることが大切だと思います。そのうえではじめて、周りの理解への道が開けるのではないでしょうか。また業務面では、限られた時間の中で仕事を効率的に進めるよう努力する必要があります。さらに、自分がいないときもつつがなく業務が進むように作業状況を同僚たちと共有し、仕事の属人化を排除することも大切です」
育児や家事は進んで行なう!妻との分担で大切なこと
次に、家事や育児を円滑に進めるうえで家庭の中で押さえておきたいポイントを伺いました。
「夫婦で家事や育児について前もって話し合っておきましょう。そしてその中で大切なのが、話し合いの時点から、男性も主体的に子育てに向き合うことです。心構えの問題でもありますね。例えば、育休期間の家事分担や、第二子以降の育休である場合は上の子の送り迎えの担当など、率先して自分からコミュニケーションを取って話し合うと良いでしょう。子育てに対し、主体的なプレイヤーとして関わってこそ見えてくるものはたくさんありますよ」
育休中のお金事情も気になるところ。男性が育休を取得してもやっていけるのでしょうか。
「収入面に関しては、育休中の収入をシミュレーションできるツールがさまざまなところで提供されています。こういったツールを使うと、もらえる育児休業給付金の額が簡単に分かりますよ。育休中は社会保険料が免除されますから、私の場合実質的には育休前とほとんど変わらず、安心して育休に入ることができました」
また、夫婦でどれくらいの期間育休を取るかも話し合う必要があります。期間に関して中村さんはこう語ります。
「最低でも1、2カ月をみておくと良いのではないでしょうか。それよりも短いと子どもの成長を感じづらいのかなと思います。子どもの成長を感じられることが、育休期間中の喜びだと思いますしね。フローレンス事務局の男性スタッフだと、3、4カ月の育休を取る人が多いです。男性スタッフは100%育休を取得しています」
家事分担や育休期間は、家庭の状況によって異なります。大切なのはそれぞれの状況にあわせてよく話し合うこと。その中で、特に男性は家事や子育てに対して主体的に話してみましょう。
こんなに大変とは…!経験してこそ分かる子育ての難しさ
しっかりと準備を重ね、満を持して育休に突入!…となっても、さまざまなトラブルや慣れない生活の大変さが押し寄せてきます。第三子というベテランパパの中村さんにとっても、育休生活では新しい発見があったそう。
「強烈な思い出としてあるのは、自分で作った料理に飽きてしまったこと。何を作っても似たような味になってしまい食欲が湧かないんですよね…。誰かが作ってくれた料理って美味しいんだなと実感しました。これは実際に体験してみないと分からなかった点ですね(笑)」
と、リアルなセリフが飛び出しました。他にも、“育児は本当に思い通りにいかない”ということにも気づいたそうです。
「仕事は自分の手でコントロールできる範囲が広いですが、育児はとても少ない。だから、計画通りにしようとすればするほどストレスが溜まって疲弊していっちゃうんですよね。そうならないために、思い通りにならないことを前提としましょう。言い方は良くありませんが、頑張らない、手を抜く。そうしていくと段々と『うまくいかないのは当たり前』『ダメだったらこうしてみよう』と、その時々の状況を丸ごと受け止めて、子どもと向き合う時間を楽しめるようになっていきますよ」
また、同じように育休を取るパパがまだ少ない分、育児や家事の大変さを話して共感しあえる相手がなかなか見つからず、孤独に陥りやすいということもあります。
「今まで生活の大部分を会社で過ごしてきた男性が、家で子どもと1対1で向き合うのは、どうしても心理的に行き詰まる部分があるでしょう。地域のパパサークルやパパコミュニティなどを探したり、SNSで相談したりするのも良いかと思います。大切なのは、気持ちの頼り先としていくつかのルートを確保しておいて、外に何らかの繋がりを持っておくことです。ちなみに、私は文章を書くことで気持ちを落ち着けることができるタイプなので、子育ての記録を取るようにしていましたね」
男性が育休を取ることは社会的にもメリットがある!?
男性が育休を取ることは、夫婦が共に子どもと主体的に関わることができ、お互いのキャリアの面でも不公平感がなくなるというメリットがあります。加えて、社会的にも大きなメリットがあると中村さんは言います。
「例えば少子化問題の要因の一つとして性別役割分担の考え方があると思います。その考え方がいまだ存在するために、家事育児の負担・責任が女性側にばかり偏ってしまい、社会も女性にケアを依存するという不均衡な構造が生まれているようにも思えます。性別による役割分担から多くの人が解放され、男性の家庭進出が進めば、国や社会のシステムを変える力になっていくでしょう」
子育てにさほど関わってこなかった世代の男性の中にも、男性の育休取得に関して賛成する人が増えてきています。だからこそ、現役パパ世代が勇気を持って一歩を踏み出す必要があるのかもしれません。
「実際に経験した僕が実感を持って言えるのは、育休を取って良かったと時間が経っても思えることです。育児に主体的に関わると新しい世界が見えてきますし、子どもとのかけがえのない時間を持つことができます」
育休を取って、子どもとじっくり向かい合って過ごす。きっとこの経験は、その後長く続く子育ての礎になるはず。そんな大きなメリットを、ぜひ育休取得から実感してみませんか。
執筆/中山美里
<プロフィール>
中村 慎一(なかむら しんいち)さん
「いろんな家族の笑顔があふれる社会」を目指し、事業運営と政策提言を行なう親子領域の社会課題解決集団「認定NPO法人フローレンス」に勤務。みらいの保育園事業部マネージャー。三児の父であり、第三子が誕生した際には以前に勤務していたIT企業で半年間の育休を取得。その経験を通し、男性の働き方に関する講演活動なども行う他、兼業作家としても活動している。
<関連記事>
絵本の読み聞かせは子どものためだけじゃない!大人も一緒に成長できる絵本5選
子ども4人を東大合格に導いた“佐藤ママ”に聞く、未就学児~小学生でやるべき幼児教育
プログラミング教室に通わせる親が急増!子どもの習い事の最新事情をくわしく紹介
<関連サイト>
<関連キーワード>
RECOMMENDED この記事を読んでいる方へのオススメ
POPULAR SODATTEでよく読まれている記事
カテゴリーごとの記事をみる

ARTICLE RANKING
子育ての
人気記事ランキング
POPULAR KEYWORDS
人気のキーワード
HOUSEHOLD BUDGET SUPPORT
家計応援コンテンツ
わが家の家計診断
誰もがかかえる家計に関する悩み。悩みや疑問は人によりさまざまです。
記事を見る
SPECIAL スペシャルコンテンツ

今日からあなたも始められる!初心者のためのカンタン投資デビュー
投資に詳しくなくても簡単診断と始め方ガイドで、あなたに合った投資を今日から始めてみませんか。
詳しくはこちらから

子供と一緒に楽しく学ぶ「あいうえおかねの絵本」
子供もおかねもパパ・ママもそだつような、そんな「おかねを学ぶはじめの一歩」になれたら幸いです。
詳しくはこちらから
お役立ちコンテンツ
