子育て

コロナ禍でも注目を集める中学受験 受験&中高一貫校進学の本当の価値とは


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    中学受験熱が高まっています。コロナ禍においても受験者数が前年を上回り、その傾向は続いていると専門家らが分析しています。一方で、「小学生のうちから勉強漬けなんてかわいそう」という意見もあります。そもそも、中高一貫校と公立中学では何が違うのでしょうか。中高一貫校で6年間を過ごすことにはどのような意味があるのでしょう。そして中学受験は子どもに無理を強いることなのでしょうか。教育ジャーナリストのおおたとしまささんに、中高一貫校進学の“本当の価値”を聞きました。

    コロナ対応がカギに? 2021年も中学受験者は増加

    「首都圏中学模試センターの推計によると、2021年春の首都圏の中学入試では、私立・国立中の総受験者数が14年ぶりに5万人の大台を超えました。コロナ不況が心配されるなかでの入試だったので、意外な結果だといえます」と、教育ジャーナリストのおおたとしまささんは解説します。

    「要因の一つとして、2020年春の全国一斉休校期間の対応の違いがこの結果を生んだのではないでしょうか。私立中学が授業のオンライン化などに迅速に対応したのに対し、公立ではまともに対応できない学校もあった。それを見た保護者が、がんばってでも私立に入れようと考えたのだと推測できます」(おおたとしまささん、以下同)

    もともと大学進学実績や地元中学の雰囲気などから、私立中高一貫校を進学先の一つとして考えていた家庭が、コロナ対応の違いに背中を押されて決めた。そんなケースが多かったのかもしれません。

    では、教育の専門家から見た私立中高一貫校の魅力とは、何なのでしょうか。

    中高一貫が世界標準 6年間でこそ存分に思春期を経験できる

    「そもそも、高校受験のある国のほうが珍しいんですよ」と、おおたさんは切り出します。

    「子どもの精神的な成長を考えると中高一貫のほうが自然です。というのも、中学高校時代、特に14~15歳ごろは思春期の真っただ中にあたります。本来この時期に、子どもは自分と社会を相対的に見るようになり、葛藤を抱え、批判したり反抗したりするなかで精神的に自立していきます。しかし、そのタイミングで高校受験があることで、大切な思春期を存分に謳歌(おうか)できなくなってしまうのです」

    受験勉強に追われ思索に没頭できない、内申点を気にして“いい子”を演じ続けなくてはいけない……。その結果、精神的な自立や批判的な思考の経験が不十分なまま、見た目だけ大人になってしまうおそれがあるのだと話します。

    「思春期というひとまとまりの時期を、分断されることなく同じ環境で過ごせる点が、偏差値にかかわらず中高一貫校の優れているところです」

    私立の学校という点では、「ハビトゥスを身に付けることができる」とも。

    「ハビトゥスとは社会学用語で、ある特定の集団における考えや振る舞いのパターンのようなものです。“勢いがある”“お嬢さまっぽい”など、その学校のスタイル、あるいは“らしさ”といってもいいでしょう。何かに悩んだときに、“自分は〇〇校の生徒としてどうしたらいいかな”と考える参照点になり得るものです」

    これを身に付けることで、悩んだときの判断軸が増えるわけです。

    「ハビトゥスが明確な学校は伝統校に多いですね。学校説明会などで校長先生が説く建学の精神からうかがえますよ」

    中学受験は親子でできる大冒険 一生の宝を手に入れられるチャンス

    では中学受験自体をどう捉えればよいでしょうか。その説明の前に、おおたさんが意外な数字を示してくれました。

    少し前のデータになりますが、ベネッセ教育総合研究所の『第1回 放課後の生活時間調査 [2008年]』によると、中学受験を予定している子どものグループと、予定していないグループの遊び時間の比較では、“予定なし群”のほうが長かったものの、その差はわずか16分ほど。代わりにテレビやDVDなどのメディアを使った時間が、“予定なし群”では約30分長いと分かりました。

    「保護者のみなさんが子どもの頃と違って、最近は外でのびのびと遊ぶというお子さんも少なくなりつつあります。特に小学校高学年ともなると、ゲームやスマホで時間を潰す子どもたちが増えます。つまり、“外で遊ばせるか、受験勉強をさせるか”の選択ではなく、“子どもの時間をゲームやスマホに費やすか、受験勉強をさせるか”の選択ということになります」

    そんな都市部において、中学受験は「親子の大冒険」の機会になり得ると、おおたさんが続けます。

    「子どもは受験勉強をするなかでさまざまな試練に遭遇します。がんばっても成績が伸びなかったり、ほかの子に抜かれてしまったりということもあるでしょう。友達からの遊びの誘いを受けるかどうか、志望校はどこにするかなど、大小さまざまな選択も迫られます。それらを乗り越えるには、親が子どもに寄り添い、がんばりを支えなくてはなりません」

    こんなに親子で力を合わせて何かに立ち向かう機会は、子どもがまだ小さい小学生の間だからこそ。中学生以降の人生においては、そう何度もあるとは限らないのではないでしょうか。

    「この冒険を通し、親は子どもに価値観を伝えることができます。そして試練のなかで、努力を続ける力、失敗しても気持ちを立て直す力、自分を卑下しない自己肯定感といった非認知能力を育むことができます。中学生以上になると反抗期を迎え、親の影響力は徐々に減っていくのは必定です。これから自我や価値観が育つ小学生のうちに、こんな力を身に付けられれば、その子は一生自分の足で歩いていける。すばらしい財産だと思いませんか?入試に向かう努力の中で人生の宝を獲得し得ることが、中学受験勉強の真価だと僕は考えます」

    おおたさんは「受験に向いている子、向いていない子とはどういう子どもか」と質問されることがあるそうです。でも「受験に向いていない子はいない」と断言します。結果的に志望校に受からなくとも、努力を成長につなげることができた子が“受験に向いている子”であり、受験の“勝者”ならぬ“笑者”なのだと話します。

    親は子どもの目を見て寄り添って

    では、親はどのように子どもを支えればいいのでしょうか。

    「とにかく子どもを見ることです。1日が終わったとき、口では“疲れた”と言っていても、ほっとした表情をしている、あるいは落ち着いている様子が見られたら、そのまま続けさせても大丈夫です。反対に、“1日終わったね”と声をかけてもうれしそうな顔を見せない、全身からエネルギーが感じ取られないと思ったら、休ませてあげないと危険です」

    親が子どもの微妙な変化に気づけるものでしょうか。

    「黙って子どもを見ていれば、親御さんなら目の奥に光があるかどうか分かるはずです。幼い頃、何か好きなことに熱中しているときに見せていた目の輝きのことです。本当は悔しいけれどがまんしているときや、がんばろうとしているときなどは、目の奥で光がともっています。それを見逃さず、“がんばっているね”とフィードバックする。そっと肩に手を置くだけでもいいでしょう。それだけで子どもは応援されていると感じることができ、がんばれるのです」

    反対に、「私の言うことを聞いていれば間違いない」と自信を持ちすぎている親は要注意だといいます。

    「どんなときも偏差値を上げることを最優先させる。夜中の2時、3時までかかっても課題を終えるべきだと揺るがない。志望校に入れないと“失敗だ”と決めつける。これでは子どもは自分を認めてもらえていないと感じ、自己肯定感が低くなってしまいます」

    偏差値を伸ばすのは塾の仕事。親がすべきは、子どもの人生にとってこの大冒険をどうすれば価値あるものにできるか考えることです。どうしても入試の結果だけに注目が集まりがちですが、中学受験というプロセスが親子にとっての一生の宝になるよう心がけることが大切といえるでしょう。

    <プロフィール>

    おおたとしまささん

    教育ジャーナリスト。1973年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科を中退し上智大学英語学科へ。卒業後はリクルートで雑誌編集に携わったのち独立。

    「いい学校やいい教育とは何か」をテーマにWeb・雑誌・新聞での執筆、メディア出演、講演を続けている。近著『なぜ中学受験するのか?』(光文社)や『中学受験「必笑法」』(中公新書ラクレ)ほか、著書は70冊以上。

    (文/松田慶子)

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