いくら渡してどうさせるのが正解?お小遣いの与え方
子どもが小学生くらいになると、「そろそろお小遣いを渡そうかな」と考えるご家庭も多いのでは?でも、「1年生なら100円?2年生なら200円?」とあまり深く考えずに渡したり、周りの友達と同じようにしたりと、基準が明確でないケースも多いかもしれません。実はお小遣いは、「金融教育」につながる大事な側面があるのでしっかり考えたいところ。今回は「お小遣い」の考え方や相場、渡し方などについて、家計管理の専門家に聞きました。
目次
(専門家プロフィール)
二宮 清子さん
独立系FP事務所「合同会社リーフ」代表。家庭科教師として勤務後、結婚退職、出産を経て、FP資格を取得後に独立。現在は、相談・執筆・講師に加え、賃貸経営を取り入れ、ファイナンシャルプランナーとして活躍中。住宅ローンアドバイザー、生命保険募集人、損害保険募集人等の資格も保有。情報サイトAll Aboutで家計簿・家計管理ガイドをつとめる。
お小遣いは、そもそも何のためにあるの?
子どもが小学生になると、そろそろ「お小遣い」をあげようと考える人も多いのではないでしょうか。いくらあげたらよいのか、金額で悩みがちですが「実は、その前に考えるべきことがあります」と、ファイナンシャルプランナーの二宮清子さんは言います。
「まずお小遣いには、目的があることを念頭に置いてください。目的とは『お金を使って、小さな失敗体験と成功体験を得るもの』ということ。自分の身の丈に合ったお金をやりくりして、失敗や成功を重ねていくことが、金銭感覚を養うことにつながります。
ときどき、『無駄遣いをするから、お小遣いは渡さない』というご家庭もありますが、それでは失敗体験も成功体験も積むことができずに大人になってしまいかねません。大人になってからお金で失敗をすると、失敗する金額が大きくなり、人からの信用も失ってしまいますし、最悪の場合、金融機関からの信用も失いかねません。
子どものうちは、何かがあっても保護者がフォローできる時期。大人になるための練習期間ととらえて、ぜひ成功体験だけでなく、小さな失敗体験も積ませてあげてください」(二宮さん、以下同)
大人になってからも大切な「金銭感覚」は、今日明日、すぐに身に付くものではないからこそ、子どものうちからじっくり取組むことが大切なようです。
「お金は一生ついてくるものですので、お金を扱う力は、生きる力でもあります。『自分のお小遣い』として自腹を切って体験を得ることで、よりリアルな学びになるのではないでしょうか。また小学生、中学生と年齢に応じた金銭感覚を養うツールにもなります」
二宮さんのご家庭でも、お子さんが中学生のときに、まさにお小遣いを使うからこそ得られた発見があったのだとか。
「家族でよくうどんを食べにいくのですが、娘は肉うどんが好きでよく頼んでいたんです。でも、肉うどんってちょっと高めですよね。親が払うときは気にせず注文していたのですが、中学1年生のときに友達とうどんを食べにいき、お小遣いから払うことになって初めて肉うどんの値段の高さに気づいたようです(笑)。『少し安めのわかめうどんにした』と話していました。そうして、自分のお金を使いながら、何がほしいか、今自分はそのお金を出す価値はあるのかと考えながら、学んでいくことが大切ですね。
小学生でも、お小遣いをもらうようになると、例えばお菓子が好きなお子さんなら、『この値段なら、あのお菓子が10個買える!』といった具合に、ものの値段を自分の分かる範囲で考えるようになるのではないでしょうか」
失敗体験、成功体験が金銭感覚を伸ばす
子どもに渡したお小遣いの使い道については、「その範囲で使うことは、本人の自由にしていいと思っています」と二宮さんは言います。
「『そんなに無駄遣いをして……』とか『なんでそんなものばかり買うの?こういうものを買いなさい』などと、親が口出ししたくなるお気持ちもよく分かるのですが、本人がそれを失敗だと思っていない限りは何も言わない、というスタンスが大事ですね。後から本人が気づくこともあると思いますし、本人にとっては大切な宝物を買っているのかもしれません。
もし、『失敗だったな』とお子さんが話してきたら、『どうすればよかったと思う?』とお子さんに考えさせるチャンスです。『なんでこのお店とあのお店は、値段が違うのかな?』などと話し合うことで社会のしくみを知るきっかけにもなりますし、問題解決能力も身に付き、次に同じような失敗をしなくなるはずです。
また、例えば、『ゲームがほしい』と思って、1カ月分のお小遣いでは買えなくても、何カ月分か貯めて買えたという成功体験を得られた場合は、ぜひ褒めてあげたいですね。目先のほしいものを我慢してお金を貯め、本当にほしいものを手に入れるというのは、管理能力がしっかり付いた証拠です。
成功体験の場合は褒める、失敗体験の場合は親子で一緒に考える、というスタンスで向き合ってあげてください」
では実際、いつからいくらくらい渡せばいいの?
そして気になるのが、お小遣いの金額や渡し始める時期。どのように考えたらよいのでしょうか。
「何が正解ということはありませんが、一般的な平均から金額や時期をチェックしてみることもいいでしょう」と二宮さん。
金融広報中央委員会の「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」によると、小学生の7割強、中学生の8割強がお小遣いをもらっている、というデータがあります。
「小学生の低学年でも、7割強の子どもがお小遣いをもらっていますので、渡し始める時期の目安としてよいでしょう」
さらに、毎月お小遣いを渡しているケースでは、小学生では月500円という家庭が最も多いそう。500円~700円未満と答えた家庭は、小学校低学年で22.6%、中学年で25.8%、高学年で37.9%でした。
中学生では、最も多いのが1000~2000円未満(32.0%)、次が2000~3000円未満(20.5%)、そして3000~4000円未満(17.5%)と続きます。
「最近は塾や習い事などをしているお子さんも多く、その交通費や、帰りに買うおやつなどを含めているケースもあるかもしれません。また、文房具にこだわりたい年齢になったときに、今までのお小遣いでは足りないこともあるかもしれません。その場合は、『文房具を含めた金額』ということで少し増やすというのもいいですね。そのあたりも、よくご家庭で話し合いましょう。
もし、初めてお小遣いを渡す際に金額に迷う場合は、小学生のうちは、学年×2、つまり1年生なら200円、2年生なら400円、から始めてもいいと思います」
さらに、お小遣いの渡し方については、大きく「毎月など一定額を渡す“定額制”」と、「お手伝いなどした場合に渡す“報酬制”」の2パターンがあるそう。
「定額制は、毎月決まった金額を渡すので、毎回深く考えなくていいですし、子どもにとっては毎月の収入ペースが事前に分かるというメリットがあります。ただし、何もしなくてもお小遣いをもらえるというのはデメリットですね。
一方で、報酬制は、お手伝いなどがんばった分だけもらえるという点はメリットですが、お小遣いをもらわないとお手伝いをしたくないと思うようになる可能性がある点はデメリットですね。
報酬制の場合は、1カ月間毎日お手伝いをした場合でも、小中学生が本来もらえるお小遣いを大きく超えないように、金額設定をするといいでしょう。また、お手伝いの度に50円や100円を渡すのではなく、メモをつけておいて1カ月分まとめて渡すほうが、お小遣いを計画的に使う習慣が養われると思います」
最近は、「お小遣いを電子マネーやプリペイドカードで渡してもいいですか?」という質問も増えてきていると二宮さんは言います。
「小学生のうちは、お小遣いはまず“現金”で体験してほしいですね。お金の手触りを覚えて、使うとなくなるという感覚も養ってほしいからです。扱い方に慣れた中学生くらいから、徐々に電子マネーやプリペイドカードに移行していくのはいいと思います」
また、友達のお誕生日にプレゼントを渡したいときなど、お小遣いだけでは足りなくなり、大きなお金が必要になる場合があります。その場合は「お年玉などから、『誰かのために使うお金』をとっておくことがおすすめです」と二宮さん。
「我が家でも実践しているのですが、お年玉をもらったら、『今の自分のために使うお金』『誰かのために使うお金』『将来の自分のためのお金』の3つに分けさせています。友達へのプレゼントは『誰かのために使うお金』から使うように促しています。
『将来の自分のためのお金』は銀行に預けて、残りの2つのお金は貯金箱や封筒などで管理することがおすすめです。
もし、『誰かのために使うお金』が足りなくなった場合は、お手伝いをしてもらって、お駄賃を渡すようなしくみにしています。そして、どうしても足りない場合は、我が家ではおじいちゃんやおばあちゃんに相談するような流れになっています。
もし、お金が足りなくて誰にも相談できない状況を作ってしまうと、例えば親御さんのお財布からお金をとってしまったり、最悪の場合は万引きなどの犯罪につながったりしかねません。そのため、困ったときの“抜け道”を作っておくことも大事だと思います」
お小遣い帳をつけて、しっかり振り返れるようにしよう
子どもにお小遣いをあげっぱなしではなく、「お小遣い帳」をつけることも大切だと二宮さんは言います。ただし「保護者も一緒に家計簿をつけること」がカギになるそうです。
「親御さんが家計簿をつけていないと、お子さんはお小遣い帳をつける習慣が身に付かないように感じます。これを機に、親子で家計管理を始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、無理強いは禁物。お小遣いのことを考えるのがイヤになってはいけないので、様子をみながら始めましょう。
お小遣い帳をつけることで、自分がどんなふうにお金を使っているか、目で見て分かるようになることは、金銭感覚を養ううえでも大切なプロセスです」
とはいえ、「お小遣い帳をつけるのは、小学校低学年のうちは難しいかも……」と感じる方も多いかもしれません。でも、二宮さんは「逆に小さいうちのほうが、親御さんと一緒に進めやすいと思いますよ」とアドバイスします。
「中学生くらいになると、思春期で親の言うことを聞かなくなったりしますから(笑)、素直に話を聞く小さいうちから、ぜひお小遣い帳を習慣づけてあげることをおすすめしたいですね。
お金を貯めるときは、少額であれば、小銭を“貯金箱”に入れることもおすすめです。振ったら小銭のジャラジャラという音がして、重さを感じ、貯まっている感覚をしっかり味わえるはずです」
子どもの金銭感覚は、親御さんの金銭感覚を引き継いでいくことが多いもの。
「そのためぜひ、お子さんにお小遣いを渡し始めるタイミングで、親御さんご自身もお金の使い方を振り返ってみていただきたいですね。親子で金銭感覚を見直しつつ、家計管理が上手にできるように、いいステップアップのチャンスととらえていただけたらと思います」
取材・文/西山美紀
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