子育て

今からでも間に合う?遺伝は関係あるの?子どもの運動神経を伸ばす方法とは


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    子どもに運動が得意な子になってほしいと思う親御さんもいらっしゃるでしょう。「でも、うちの子には運動神経がないみたい」とあきらめていませんか?実は運動神経には、遺伝によるものだけではなく、努力で変えられる部分が多いそうです。では、子どもの運動神経を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか。「わが子の運動神経を伸ばしたい」というパパママへのヒントを、運動の専門家から聞きました。

    ●お聞きした方
    西村 典子さん
    20年以上にわたって高校生・大学生を中心にスポーツ現場でのトレーナー活動を行なう一方で、スポーツ障害予防や応急処置、ストレングス&コンディショニングに関する教育啓蒙活動を行なっている。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト。NSCA公認パーソナルトレーナー。情報サイトAll Aboutでアスレティックトレーナー/運動と健康ガイドを務める。

    そもそも「運動神経」とは?後天的に鍛えることはできるもの?

    よく話題に出る「運動神経」とは、いったいどんなものなのでしょうか。「脳からの指令が末端の筋肉にまで届くことで、人は動くことができます。その指令の通り道のことです」と、アスレティックトレーナーの西村典子さんは言います。

    「この神経が引出す運動能力によって、一般的に『運動神経が良い、悪い』と言われているのでしょう。昔から、比較しやすいため双子に対する運動神経の研究が行なわれているのですが、運動神経の良し悪しは遺伝ですべてが決まるわけではなく、環境要因を無視できないという結果が出ています。

    運動神経そのものは誰にでもあり、実は脳からの指令を伝達するスピードには個人差はほぼありません。そのため、運動が上手、下手というのは、生まれ持った才能ではなく、運動を習得する上で必要な動作を繰り返し練習して、脳の神経回路を刺激してきたかどうかによって変わってきます。いわゆる『運動神経の良さ』は、後天的に鍛えられると考えられます」(西村さん)

    実は運動をする環境が大事!子どもの運動神経を伸ばすためにできることは

    「運動神経の良さは、後天的に鍛えられる」という話に、気持ちが明るくなった方も多いでしょう。では、子どもの運動神経を鍛えるための秘訣とは?

    「いろいろな手段で体を動かすことで、さまざまな神経回路を刺激してあげましょう。運動教室やスポーツ教室に通うという手もありますが、普段から気軽にできることがあります。

    友達や家族と公園で遊んだり、キャンプに行ったりと、自然と触れ合える機会をたくさん持つことがおすすめです。プールに行って遊ぶのもいいですね。砂遊びをする場合は、安全を確認した上で砂場を裸足で歩かせると、足の機能を鍛えることにもつながります」(西村さん)

    日常的に外でいろいろな遊びや動きをすることで、神経や筋肉がどんどん鍛えられていくのですね。

    「詳しく説明すると、運動が得意になるには『歩く、走る』といった、特別な練習をしなくても自然に身につく『系統発生的運動』と、『ボールを投げる、打つ、鉄棒で逆上がりをする、縄跳びをする』といった『個体発生的運動』の2つが必要になります。

    最近は運動不足の子が多いのか、昔は自然に身についていた『系統発生的運動』ができない子どもが増えてきました。走っている途中で転んだり、転んだときに手をつけなかったり、走り方がぎこちなかったり、というシーンを見ることがよくあります。この運動を身につけるには外遊びも必要なので、先ほどお伝えしたように外で遊ぶ時間を意識的に増やしてあげましょう。

    ボールを投げたり、打ったり、鉄棒や縄跳びを使って遊んだりといった動作のなかで身につく『個体発生的運動』を鍛えるためには、跳ぶ、くぐる、押す、引くといったさまざまな動きを行なうことが大切です。休日に親子でバドミントンやキャッチボールをしたり、一緒に公園の遊具で遊んだりしましょう。小さいうちはボールの扱いも難しいので、紙風船をバレーボールのようにして遊んであげるのもおすすめです」(西村さん)

    子どもが自然と運動できるような環境を作ってあげることが重要ですね。では、運動神経を伸ばすために適切な時期はあるのでしょうか。

    運動神経を育むために大切な時期!「ゴールデンエイジ」

    運動に最適な学習期間「ゴールデンエイジ」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

    「ゴールデンエイジとは、1990年代になってから提唱された新しい理論です。『プレゴールデンエイジ(3~8歳)』『ゴールデンエイジ(9~11歳)』『ポストゴールデンエイジ(12~14歳)』と、3つの時期に分類されます。

    3~8歳のプレゴールデンエイジには、スキップをすると右手と右足が同時に出てしまうなど、自分の体のコントロールができないこともあります。この時期には、走る、跳ぶ、投げる、捕るといった基本的な動作を身につける経験を、繰り返し重ねることがおすすめです。遊びの要素を交えた運動で、運動を楽しむことをまずは教えてあげましょう。

    9~11歳のゴールデンエイジは、自分の体をコントロールできるようになる時期です。見たものをすぐに真似する器用さや、素早さも発揮できるようになってきます。自分の体を思い通りに動かすためのコントロール力を身につけ、動きのポイントを理解できるようになります。そのために、プレゴールデンエイジで身につけた基本的な動作はもちろん、複雑な動作を加えたさまざまな動きの経験を積重ねていきましょう。

    12~14歳のポストゴールデンエイジから上手な動作を行なうためには、その前の時期よりも時間がかかると考えられています。しかし、著しい成長が見られなくても、反復練習によって脳と神経回路がつながることで、基本的な動作の向上が見込めます。練習の目的を理解して、体力にあわせた運動を行なうことが、パフォーマンスアップにつながります」(西村さん)

    ただし、「これらの時期を逃したからといって、運動神経を伸ばせないわけではないので安心してください」と西村さんは言います。

    「成長にはもちろん個人差があります。さらに、繰り返しにはなりますが、さまざまなスポーツを経験し、いろいろな動きを取入れることが運動神経を発達させ、運動が得意になるコツです。

    逆に、小さいうちから一つのスポーツだけに特化してしまうと、大きなケガをしやすくなるので要注意です。極端な話ですが、プロスポーツ選手が行なうような肘の手術を、小学生が行なう例もあります。私個人としては、10歳くらいまでは複数のスポーツを楽しみながら行なうほうが、大きなケガをせずに、運動能力を向上させられるのではと思っています」(西村さん)

    ゴールデンエイジど真ん中「小学生」が意識的に取入れたい運動は?

    小学生になると、習い事や塾などで忙しくなる子どももいるため、運動不足になるケースも多いでしょう。そして、先ほどお伝えしたゴールデンエイジはほぼ小学生にあたります。意識的に取入れたい運動はあるのでしょうか。

    「歩く、走るといった基本的な動作以外にも、複雑な動きをすることが大切です。片足でバランスを取ったり、自転車に乗ったり、縄跳びをしたり。またスポーツというわけではないですが、お皿を運ぶお手伝いなども筋力とバランス感覚が養えるのでおすすめです。

    また、広いスペースがあれば、マット運動のような『起き上がる』『回る』『這う』といった動作をすることで、身のこなし方が向上すると思います。上手に転ぶことができれば、今後スポーツをしていく上で、ケガを防ぐことにもつながります。ご自宅にヨガマットがあれば、その上でストレッチを兼ねてゴロゴロして遊ぶなど、日常とは違う動きを取入れてみてください」(西村さん)

    さらに、西村さんがおすすめしているのが「2つ以上の動作を同時に行なってみること」

    「『歩きながら物を渡す』『走りながら(ボールなどを)投げる』といった複雑な動きを取入れると、神経系を刺激し、巧みな動作ができるようになります。知人の野球コーチは、散歩中に会話しながら突然選手にポンっとボールを投げたりしていました。歩きながら、話しながら、とっさにボールをキャッチするという動きは、反射神経の向上にもつながるからでしょう」(西村さん)

    親としては、運動教室やスポーツ教室に子どもを通わせたくなる時期でもあります。ですがもし、子どもが嫌がったら……どうすればいいのでしょうか。

    「その場合、子どもがなぜ嫌なのかを聞いてみてください。『人とぶつかるのが痛い、怖い』『周りの友達とコミュニケーションが取れない』など、子どもによって理由はさまざまです。そして、嫌なところを解消できるように親子で一緒に取組んでみましょう。『まずは3カ月だけ続けてみよう』と期限をつけてあげることもおすすめです。

    体を動かすことが、ストレスにならないことが一番大切です。『今日はどこが面白かった?』と運動後に親子で会話して、楽しさを引出してあげてください」(西村さん)

    親が本気で楽しめば、子どもも運動を好きになる!

    子どもがスポーツを好きになり、運動が得意になるためには、親の姿勢も大事だと西村さんは指摘します。

    「親御さんがソファに寝転がってテレビを見ている状況が続き、子どももつられて同じように過ごしてしまうケースがあります。姿勢が悪い状態が続くと、成長期の子どもは骨格の形成不全が起きる可能性もあるので注意が必要です。

    正しい姿勢を保てるように、ソファはもちろん勉強机と椅子の高さなどにも気をつけたいですね。スマートフォンを見るときにも、スタンドを使って正しい姿勢で見やすい位置に置くという工夫もおすすめです」(西村さん)

    体を動かしたり、スポーツをしたりすると、大小のケガはどうしてもつきものです。でも、それが心身の成長につながることもあるのだそう。

    「すり傷や切り傷、打撲、筋肉痛、捻挫など、痛みをともなうケガをすることも増えるでしょう。親御さんから見ると、わが子のケガはかわいそうですし、もちろん大きなケガは避けたいところです。

    しかし、小さなケガであれば、対処の方法を学ぶことになります。自分が痛みを経験することで、他人の痛みに対しても思いやりを持てるようにもなるでしょう。心身ともに成長するいい機会を得られたと考えることで、親御さんの心の余裕もできると思います」(西村さん)

    今年は東京オリンピック・パラリンピックがあったほか、サッカーのワールドカップ予選などもあり、競技を親子一緒に見る機会をぜひ活かしたいと、西村さん。

    「『このスポーツ面白そうだね』『こんな動きができるって、すごいね』と、スポーツを見ながら親子で話しているうちに、『自分もやってみたい』と興味が出てくるかもしれませんね。子どもが自分から好きになったスポーツのほうが楽しめますし、練習も続くはず。まずは子どもの気持ちを第一に考えながら、スポーツ観戦も運動も楽しんでみてください」(西村さん)

    子どもの心身の成長を促し、親子で楽しく触れ合えるきっかけにもなる、運動やスポーツ。「子どもの運動神経を伸ばしてあげたい」という方は、ぜひ休日に親子でいろいろな動きを、楽しみながら取入れてみてください。

    取材・文/西山美紀

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