子育て

教育改革って?子どもの学びはどう変わる?


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    大学入試制度改革をはじめ、昨今、教育制度に関するニュースを耳にすることが増えてきました。学習指導要領の改訂、アクティブ・ラーニングの導入、高大接続改革、そして大学入試制度改革……。学校教育が変わりつつあることは知っていても、「いつ、何が変わるのか、うちの子にどう関係するのかさっぱり分からない」という方は多いのではないでしょうか。そこで、最新の教育改革について、学校教育のあり方に詳しいリクルートEd-tech総研所長の山下真司さんに解説いただきつつ、あわせて、家庭で“新しい学力”を育むヒントもうかがいました。

    変化の激しい時代を生き抜く力を、幼稚園~大学一貫で育む

    「ご存じのように、今、社会は大きく変わっています。通信技術の進化やAIの登場など技術革新が急速に進展する一方、コロナ禍や環境問題など、人類が経験したことのない事態が起きています」と、まずは現在進められている教育改革の背景について山下さんは解説します。先を予測できない時代になったといえるわけです。

    「そうなると、スマホですぐに調べられるような知識を蓄えることは、あまり重要ではなくなります。覚えたものを答案用紙に再生できる学力より、変化に対応し、社会の中で主体性を持って生きていくための“新しい学力”を育てることが重要になる。そのために教育を改革していこうという取組みが、文部科学省を中心に審議されてきました」

    新しい学力を育むには、幼稚園から高校、大学・専門学校などを経て社会に出るまでの教育を一体として捉え、改革していく必要があります。その一環が高大接続改革です。ついては、高校までの教育と大学のつなぎ目である大学入試も変えなくてはいけない。そこで進められているのが大学入試制度改革というわけです。

    「大学入試の改革が最も象徴的なので、そこだけが話題になりがちですが、教育改革の一部分にすぎないのです」

    ではどう変わるのでしょうか。

    「文部科学省は、“新しい学力”として、次の3つを挙げています。まずは“知識・技能”。これは従来の学力です。次に“思考力・判断力・表現力”、すなわち自分で課題を見つけ、考え判断し、人に伝える力。さらに“主体性・多様性・協働性”、つまり主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度です。そして、これらの学力を基に「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業によって、次の資質・能力を育成していくことが目的だと打ち出しています」

    • 実際の社会や生活で生きて働く「知識・技能」
    • 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力など」
    • 学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性など」

    「学んだことを生かして、自分で考え判断し、また他者との学びを通じて新たな気づきを得たりしながら、人生を切り拓いて社会を豊かにしていく「生きる力」を育てていくということです」

    知識を再生するテストから思考するテストへ

    この教育改革の下、大学入試のみならず、高校や中学の入試にも変化が表れていると山下さんは指摘します。従来のような暗記したものを答案用紙に再生させる問題だけでなく、日常生活の場面で課題を見つけて答えていくという問題が増えているのです。

    山下さんが、2021年5月に文部科学省が実施した『令和3年度全国学力・学習状況調査』の中学3年生の国語の問題を例に挙げて説明してくれました。

    「問題文で中学生同士のテレビ会議の様子が描かれ、“司会のこの発言は会話の中でどのような役割を果たしているのか”という設問がありました。この問題は話し合いの話題や方向を捉えることができるかどうか、つまり「話す・聞く能力」について問われているのです。さらに“これらの会話のあとに誰がどんな話を続ければいいのか、登場人物の中から1人選んで答えなさい”という設問もありました。誰を選んでもいいけれど、きちんと理由の記述も求められる。

    つまり正解が一つではなく、自分の考えが問われるということです」

    このように、自ら考え、思考して判断する問題に軸足が移ってきていると山下さんは話します。

    「大学入試では、2021年1月から、それまでの大学入試センター試験に代えて大学入学共通テストが始まりました。共通テストでも、授業や日常生活の場面、さまざまな資料やデータを読み込んで何が論点なのかを考えまとめる力を評価する問題が出題されます」

    共通テストというと、英語の民間検定の活用や、国語と数学の記述式問題の導入が見送られ、話題になりました。しかし新しい学力を問うという方針に変更はなく、大学入学共通テスト、ならびに各大学が実施する入学者選抜とあわせて評価していくことになっているようです。

    学校の授業も「教える」から「学ぶ」に転換

    学校も新しい学力の育成へと、大きく舵(かじ)を切っています。

    「学習指導要領は、およそ10年ごとに改訂されます。小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高校では2022年度から、改訂された学習指導要領に基づくカリキュラムが実施されます。この新学習指導要領も、新しい学力を通し3つの資質・能力を育むよう全面的に整理されています」

    新学習指導要領に基づく授業は、まずそのスタイルが保護者世代とは大きく異なっています。昔は先生が黒板に書いたものを子どもが書き取るという一斉講義型の授業が主流でしたが、今は先生の役割はファシリテーター。子どもたちが主役になって子どもたち同士で学びます。

    「先生が“この面積はどうやったら出せるかな”などと問いを投げかけると、子どもたち同士で意見交換したりグループで話し合ったりして考えをアップグレードさせながら、みんなで意見をまとめ発表する。文部科学省がいう『主体的・対話的で深い学び』への転換が、小中高校において進んでいます。先生が“教える”から児童生徒が“学ぶ”に変わってきているのです。また、1人1台の端末を目指すGIGAスクール構想により、タブレット端末などの導入も進んでいます。子どもたちは、話し合いにも意見をまとめ発表する際にも端末を活用します」

    ところで、こうしたスタイルでは、どうやって成績をつけるのでしょうか。

    「テストの点数と学習に向かう態度、両方で評価されます。学習態度といっても手を挙げた回数などではなく、友だちと協働したり、自ら学習を調整しながら取組んだりしているかという点がポイントになります」

    となると、人見知りで話し合いが苦手な子は、不利になるのではと心配になるでしょう。しかし、そうはならないと、山下さんは話します。

    「会話することが目的ではなく、いろいろな考えから気づきを得て自らの考えを発展させていくことが目的なので、自分自身と対話しながら学んでいく姿勢も含まれます。いずれにしても、保護者の方は、ご自身が受けてきた学びとは違うのだと、マインドセットすることが大切です。授業参観日などで、そういった視点で授業をご覧になられると一番いいと思います。子どもたちの表情からこういう学びが必要なのだということが一目で分かるはずです」

    家庭での親子の対話が、一番の受験対策

    家庭ではどうしたらいいでしょうか。新しい学力を伸ばすために保護者ができることは何でしょうか。

    この問いに、山下さんは「身近な話題について、子どもと対話すること」と答えます。

    「例えば、2021年に話題となったワクチン接種。高齢者から順番に受けましたが、活動意欲の旺盛な若者から先に受けたほうがいいとか、エッセンシャルワーカーこそ急ぐべきだという意見もありますね。そういったことを“私はこう思うけれど、あなたはどう思う?”と尋ねるという要領です」

    このとき注意したいのが、子どもの意見を否定しないことだそうです。

    「議論ではなく対話です。相手を言い負かそうとせず、“なるほど、そういう考えもあるね”と受け止めること。すると、子どもは話しやすくなり、自分の意見を語ることは恥ずかしいことではないし否定されるものではないと思うようになる。考える訓練にもなり、また意見をまとめるには知識が足りないことに気づき、自分から調べて知識を吸収する習慣にもつながります」

    テーマ選びのポイントは、“保護者も正解が分からないこと”というのが山下さんの考えです。

    「そのほうが子どもとの対話が活性化します。保護者が身近な事柄の中に疑問を見つけ、お子さんを対話に引き込むことが、一番の入試対策だと私は思いますよ」

    親子でテレビや動画を見ながら、さっそく始めてみてはいかがでしょうか。

    <専門家プロフィール>

    山下真司さん

    1967年大阪府生まれ。1990年(株)リクルート入社。『就職ジャーナル』編集企画、「リクルートナビ」編集長、人材採用ソリューション営業、「リクルート進学ネット(現・スタディサプリ進路)」ならび「リクルート進学ブック(現・スタディサプリ進路 進学事典)」編集長、メディアプロデュース部部長、事業企画室長、進路サポート部部長などを経て、2013年10月~2021年3月まで「キャリアガイダンス」編集長。現在は、リクルートEd-tech総研所長。

    (文/松田慶子)

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