自治体独自のおトクな制度もご紹介!産休・育休前に知っておきたい情報アレコレ
妊娠が判明すると、妊婦健診や産院選びなどやることがたくさん。夫婦共働きを選ぶなら、産休・育休で利用できる制度もチェックしておきましょう。早めに情報を仕入れておくことで、いざというときに慌てなくて済みます。今回は、ファイナンシャルプランナーの荒木千秋さんに、産休・育休中に利用できる制度について教えていただきました。パパの育休や2022年以降の児童手当や育休の変更点についても取り上げています。夫婦でしっかりチェックして、産前産後の大変な時期を乗り越えてくださいね。
目次
産休・育休はいつから取れる?誰が取れる?
産休・育休と呼ばれているこの制度。正しくは、産前・産後休業、育児休業といいます。どんな人が取得でき、どれくらいの期間のお休みが可能なのでしょうか。
【産休とは】
産前・産後休業といい、出産を挟んでお休みを取得できます。休業中は社会保険料の支払いが免除されますが、将来受取れる年金の減額や被保険者資格の変更・喪失はされません。
●産前休業……出産予定日の6週間前から、会社に請求することにより取得できます。双子の場合は14週間前から取得できます。
●産後休業……出産の翌日から8週間は、働くことが禁止されています。ただし、医師が認めた場合は、産後6週間後から本人の請求により職場復帰が可能です。
【産休を取得できる人】
出産をする人は誰でも取得できます。
【産休中にもらえるお金】
●出産手当金……健康保険の被保険者が、休業期間中に事業主から報酬が受けられない場合、健康保険から手当金が出ます。「月給÷30日×2/3×産休の日数」で算出されます。
手当を受けるには下記の条件が必要です。
- 健康保険に加入している。
- 出産のための休業である。
- 妊娠85日以上で出産する(死産なども含まれます)。
- 事業主から給料が支払われていない。
「妊娠中は、妊娠悪阻や切迫流産などで予期せぬ入院や休職も起こりえます。その場合は、同じく健康保険の制度で『傷病手当金』を受取れる場合があります。病気やケガを理由に3日以上続けて休み、給料が支払われない場合に、休み始めて4日目以降から支給されます」(荒木さん)
【育休とは】
育児休業といい、産後休業後1歳に満たない子どもを養育している際に、会社に申出ることで取得できます。
子どもが1歳になるまでの期間が原則ですが、保育園が見つからないなど一定条件を満たした際は、1歳6カ月まで(1歳6カ月時点でも保育園が見つからない場合は2歳まで)の育休延長が可能です。
産休同様、社会保険料の支払いが免除されますが、将来受取れる年金の減額や被保険者資格の変更・喪失はされません。
【育休を取得できる人】
下記の条件に当てはまる場合は、男女ともに育児休業を取得できます。
- 同一の事業主に継続して1年以上雇用されている。
- 子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用される予定。
- 子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかではない。
【育休中にもらえるお金】
●育児休業給付金……雇用保険の被保険者が一定の条件のもと受取れます。雇用保険に一定期間加入していれば、派遣社員やパートタイマーも対象です。育休開始から180日は月給の67%、それ以降は月給の50%が支給されます。
【パパの育休にまつわる制度】
パパが育休を取得すると期間などが優遇される制度もあります。
■パパ休暇
育休は、原則1人の子どもにつき1度までしか取得できませんが、ママの産休中にパパが1度目の育児休業を取得した場合は、パパは再度育休を取得できます。
■パパ・ママ育休プラス
また、育休は子どもが1歳になるまでの間取得できることになっていますが、パパとママ共に取得すると、子どもが1歳2ヶ月に達するまで取得することができます。
パパが育休を取得した際の給付金はママと同じで、育休開始から180日は月給の67%、それ以降は月給の50%です。
それぞれ育児休業期間は1年間が限度ですが、保育園に入所できないなどの事情があれば1年半または2年間に延長できます。
「育児休業給付金について、『いつ振込まれるのか』と会社に問合わせたという声をよく聞くのですが、手当が振込まれるのは出産日から約4~5カ月後になることも。育休に入ってすぐに振込まれるわけではないと思っておきましょう。
また、3年まで育休が取得できるという会社の制度があっても、雇用保険から手当が支給されるのは子どもが2歳に達するまでなのでご注意ください」(荒木さん)
共働き夫婦を応援!産休・育休明けの制度
産休・育休が明けて復職する場合には次のような制度があります。
子どもが1歳になるまでに復職した場合
- 育児時間制度
- 時間外労働、休日労働、深夜業の制限
- 母性健康管理措置
- 短時間勤務制度
- 子の看護休暇
3歳未満または未就学児を育てている場合
- 短時間勤務制度
- 所定外労働の制限
- 子の看護休暇
- 時間外労働、深夜業の制限
共働き夫婦を応援するさまざまな制度がありますので、ご自身の会社で何をどのように利用できるのか調べておくと良いでしょう。
「長い育休中に状況が変わり、転職や退職をされる方もいますが、会社を辞めると手当は受取れなくなります。育休中に退職や転職をする場合は、失業給付金などで対応しましょう。
さらに、育休中に第二子妊娠が判明することもあります。その場合は第一子同様に産休・育休を取得でき、社会保険料も免除になります」(荒木さん)
2022年に育休が変わる!? パパの育児を制度で応援!
「男性が育児休業を取得しやすくなる制度を定めた育児・介護休業法の改正法が、2021年6月3日、衆議院本会議で成立しました。改正された法律は2022年4月から順次施行されていきます。」(荒木さん)
【育休はどんな風に変わる?】
- 子どもが生後8週になるまでの期間に、最大4週間の出生時育休をパパが取得できるようになります。また、申出る時期は休業取得の2週間前までと、より柔軟になります。
- 従業員が妊娠や出産を申出た際、企業側は男女問わず育休制度の内容について説明し、取得するかどうか確認することが義務となります。
- 男女問わず、1歳までに育児休業を2回に分割して取得できるようになります。要件を満たせば、1歳以降も分割が可能に。
- 常用労働者数が1,000人を超える事業者については、育児休業取得の状況を公表することが義務になります。
これまでは制度があっても、実際にパパが育休を利用するのは難しいというケースも少なからずありました。しかしこれからは国の後押しもあるため、パパも家族の一員として、育児・家事を担っていけるような社会にどんどん変化していくのでしょう。
他にもある子育て支援!ユニークな自治体独自の支援も
子育て中のファミリーを支援する制度は他にもあります。
「働く親に対する支援策だけでなく、福祉としてさまざまな子育て世帯に向けたサポートもあります。当てはまるものがある場合はどんどん利用していきましょう」(荒木さん)
児童手当
中学校卒業までの子どもを育てている方に支給されます。収入や子どもの数によって受取れる額が異なり、3歳未満は月額1万5,000円、3歳~小学校修了前は月額1万円(第3子は月額1万5,000円)、中学生は月額1万円です。
現在は、所得制限限度額以上の場合は特例給付として月額一律5,000円が支給されていますが、2022年10月から世帯主の年収が概ね1,200万円を上回る世帯への特例給付が廃止されます。
乳幼児医療費助成制度(通称:マル乳)
乳幼児が医療機関にかかった際に、自己負担額を助成してくれる制度です。各都道府県が運営していますが、実施しているのは市区町村となっています。そのため、各都道府県や各市区町村により、所得制限の有無、費用負担が完全無料なのか一部助成なのか、対象年齢、助成方式など内容が異なります。
ひとり親向けの各種助成制度
ひとり親をサポートする各種制度があります。児童扶養手当等の手当や税金の控除、医療費助成などがあります。
上記は、全国的に行なわれている子育て支援ですが、家賃助成や教育関連の助成、交通費や公共施設利用の優遇などは自治体によって取組みが異なります。
また、自治体によってはユニークな取組みを行なっているところもあります。例えば、東京都には「東京都出産応援事業」があり、令和5年3月31日までに出産すると10万円相当のポイントが付与されます。
ポイントを使える専用のWEBサイトがあり、ベビーカーやチャイルドシートなど育児用品だけでなく、お掃除ロボットやキッチン家電なども選択することができます。
他にも、兵庫県の明石市では、見守り支援員が紙おむつなど赤ちゃん製品を無料で家庭に配達しつつ、赤ちゃんとお母さんの様子を見にきてくれる事業があります。
「チャイルドシートの貸し出しや家賃助成、はたまた育児を手伝ってくれる祖父母への支援など、市区町村レベルでも工夫を凝らした支援を行なっていますので、定期的にチェックしてみると良いでしょう」(荒木さん)
育休中にやるのがオススメ 家計の見直しとマネープランの作成
社会人生活の中で、とても長いお休みである産休・育休。これだけ長いお休みを取れる機会はあまりありません。赤ちゃんのお世話で手一杯かもしれませんが、ぜひ「お金の管理の見直し」はやっておくべきだと荒木さんは言います。
「復職するととにかく忙しい毎日が始まってしまうので、お休みしているうちに、“貯められるしくみ”を作っておくといいですね。その際は、iDeCoやふるさと納税、NISAまたはつみたてNISAなどお金にまつわる制度を利用するのがオススメです。特に、iDeCoは所得から控除されるため、保育料を下げられる可能性があります。他にも保育料に影響のある控除には、生命保険料控除があります」(荒木さん)
家族が増えて家計の状況が変わるだけでなく、子どもの教育費準備など新たな積立てを検討する方も多いタイミングです。お金の制度を上手に利用しながら、家計管理をしていけるといいですね。
「育児休業中はスキルアップのための勉強をするのもいいですが、まずは、何よりも子どもとの時間を大切にしながら、ご自身を労って健康を整えていただきたいですね。パパも休みを取れるなら、家族の思い出も作れる良い機会になるのではないでしょうか」(荒木さん)
新しい家族の誕生は、手続きや準備などやらなければならないことも多く、何かと慌ただしいものです。そんな時期ではありますが、子育て支援制度を上手に使い、夫婦で手を取り合って乗り越えていけるといいですね。渦中は大変と感じていても、きっと5年後、10年後には温かい幸せな思い出になっているはずです。
(取材・執筆/中山美里)
<専門家プロフィール>
荒木 千秋(あらき ちあき)さん
荒木FP事務所代表ファイナンシャルプランナー。
三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に勤務したのち独立。現在は大学講師・独立系FPとして、執筆・講演など幅広く活躍中。お金の知識を知ってトクする人生を送ってほしいとの想いから、実践できて役に立つお金の知識を伝えている。
著書に『「不安なのにな~んにもしてない」女子のお金入門(講談社)』がある。
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