子どものうちから教えたい“お金”のこと。いつから、どんな教育を始めるのがいい?
欧米では「お金は上手に資産運用して増やす」という考えが既に当たり前となっている一方で、日本人は“金融リテラシー”が低いと言われています。日本でも「貯蓄から投資へ」、「貯蓄から資産形成へ」と強く唱えられているものの、いまだに多くの日本人は投資に対して積極的ではないのが実情です。その最も大きな理由は、「日本ではお金の教育が行なわれていない」から。2022年度より実施される高校の新学習指導要領では、家庭科の授業で「資産形成」について指導することが決まりました。しかし、家庭や学校で幼少期からお金の教育をしている欧米に比べて、まだまだ不十分と言わざるを得ません。とはいえ、親世代もお金の教育を受けてきたわけではないので、どのように教えればよいのかわからないのが本音ですよね。そこで今回は、マネーコンサルタントの川口幸子(かわぐち ゆきこ)さんに、子どもに対するお金の教育の重要性や始め方についてお聞きしました。
目次
なぜ子どもにお金の教育が必要なの?
川口さんによると「米国では、投資や起業のゲームなどを通して、小学生の頃から預金、信用力、貯蓄と投資について、楽しみながら学べる環境があります。また、英国では10歳頃から、金融能力、金融実行力、金融に関する責任能力、そしてお金の管理、予算計画の立て方、リスクとリターン、クレジットカードのしくみなど、多岐に渡る金融知識を学びます」とのこと。
では、なぜ子どもにお金の教育が必要なのでしょうか。
「教育を受けた子どもと受けなかった子どもでは、その後の人生に差が生じる傾向があるという研究結果もでています。その違いは以下の通りです」(川口さん)
<お金の教育を受けた子ども>
- 自分の欲求をコントロールする力が身につけられます。
- お金の価値や使い方を自然と理解できます。
<お金の教育を受けなかった子ども>
- お小遣いを好きなだけ要求し、我慢できない性格になります。
- 節約ばかりで趣味や遊びなど好きなことにお金を使えず、将来的に後悔することもあります。
お金は、使い方、増やし方、守り方、稼ぎ方をきちんと理解する必要があります。そのためにも、幼い頃からお金の教育を受けることで、お金にコントロールされるのではなく、コントロールできるようになっておきましょう。
「小さい頃からお金の教育を受けている子どもたちは、モノに対して「今買わなくてもいい」と自然と思えたり、友人の持ち物を羨ましく思う=自分も手に入れたい!と思うより先に、自分にとって必要かどうかを冷静に考えられたりする傾向にあります。
お金の教育を通して、友達や家族との交流ができて、人との距離感も自然と身につくため人間関係にも良い影響を与えると考えられています。
日本でも国語・算数・理科・社会を学ぶのと同じようにお金の教育ができれば、子どもたちや日本の未来も明るくなるのではないでしょうか」
お金の教育を始めるのに適切なタイミングは?
「お金の教育」と聞くと幼い子には難しいイメージがありますが、堅苦しく考える必要はないと川口さん。
「“お店でモノを買うにはお金が必要”と理解しだす頃から少しずつ教えていくのがよいでしょう。例えば、3歳児でもお店屋さんごっこはできますよね。そういった遊びを通じて、お金の支払いや、お金を得る喜びを楽しみながら学べるはずです」
「勉強もいきなり応用ではなく基礎をしっかり学ぶことが大事なのと同じ。子どもの頃の“なぜなぜ期”こそ、お金のことを学ぶのにとても良い時期です。とはいえ、理解力や好奇心の発達は子どもによって異なるので、無理は禁物です」
というわけで、より具体的な教育法についても詳しく伺いました。
川口さんおすすめ!親子で金融リテラシーが高まる教育法
(1)貯金箱にお金を入れるクセをつける
貯金箱にお金を入れるクセがつくと、“貯める”“我慢する”“目標に向けて頑張る”といった気持ちが芽生えるとのこと。そして、貯金箱は透明なほうがお金の教育には効果バツグンなのだとか。
「お金が貯まっていく様子もわかりますし、お金を入れるたびに話を聞いたり、褒めてあげたりすることで、貯まる楽しみを感じられるはずです」(川口さん)
また、社会貢献も立派なお金の教育になります。例えば、貯めたお金の一部を親子で一緒に寄付しに行くのも貴重な体験に。川口さん自身、幼児期に施設に寄付をしに行った際、“誰かを助けるお金”の大切さを知ることができたそうです。
(2)家族間でお金の話は隠さずオープンにする
家庭で親が子どもにお金のことを教える際、「モノを買うときはお金を支払う」「働いた対価としてお金をもらうことができる」というような単なるお金のルールだけでなく、お金を理解することで自立心を養い、社会との関係性について考えさせることも大切です。そのためには、まずは教える親自身が学び、理解し、手本を見せる必要があります。
「お金の話は隠さずオープンにして子ども自身に考えさせるのもひとつです。例えば、家族の車を買うのに、2台のうちどちらがよいかを子どもと一緒に考えてみるなど。家庭の身近なものでお金と向き合うのは子どもも理解しやすく、お金について考える気持ちを養うのに絶好のチャンスです」(川口さん)
(3)お金の教育に役立つツールや遊びを活用する
最近は金融庁も、子どもに対するお金の教育を積極的に発信しています。そのひとつが、小学生向けコンテンツ「うんこお金ドリル」(うんこドリル×金融庁)。質問に対して4コマの答えから選んで進み、解説が出てくる形式は子どもにも馴染みやすく、楽しく学べます。
また、日本銀行情報サービス局が製作した子ども向け教材「にちぎん☆キッズ——マンガでたのしく学ぼう、お金のイロイロ!」もおすすめ。
「パパママが子どもに読み聞かせができるマンガとなっていて、わかりやすいです。特に、『お金ってなに?』『お金のながれ』『お金のかち(物価の安定)』という項目の中にある『モノのねだんの決まり方』『インフレとデフレ どっちもこまる』は伝えやすく、子どもにも理解しやすくなっていますよ」
ほかにも、子ども向け社会体験アプリ(無料)の「ごっこランド」も、幅広くお金教育を取り入れており、楽しく学べると評判。川口さんの3歳になるお子さんも夢中になっていたそうです。家族でさまざまなお店屋さんごっこをしながら一緒にお金のことを学べば、コミュニケーションも深まりそうですね。
子どもの幸せを願うなら、“お金の教育”が必要不可欠
我が子には、これからの長い人生を幸せに暮らしてほしい。多くの親がそう願っているはずです。そのために、今最も必要な教育は「お金の教育」だと川口さんは断言します。
「かつての日本は、皆一様に良い会社か公務員を目指し、老後は年金生活で安泰……という絵を描いていましたが、これからは自助努力が必要な時代。20年ほど前からは確定拠出年金も導入されました。また最近ではYouTuberやFIRE(早期リタイア)が話題になっているように、働き方の選択肢も増えました。だからこそ、なおさらお金の基本を知らないと豊かな人生は送れません。私自身、お金の教育の先進国である欧米と日本の違いを強く感じて育ちましたし、約6,000件以上の個別相談でも、『お金の教育が日本にもあれば……』という言葉をよく耳にしてきました」
今後、日本の社会もますます国際化・グローバル化が進んでいくのは必至。その中で生きていく子どもたちが豊かなライフプランを描けるよう、少しずつでもお金について考える機会を設けてあげたいですね。
(取材・執筆/ヨダヒロコ(六識))
<専門家プロフィール>
川口幸子(かわぐち ゆきこ)さん
クラウドコンサルティング株式会社 取締役。
金融コンサルタント、宅地建物取引士、国際認定コーチ、マネーセミナー講師。
現在約1500名の顧客を抱えている。経済専門誌からの取材・執筆多数。大手新聞社や大手企業などでもセミナーを開催。「欧米式お金の教育者」の第一人者。著書に「子どもの視野が驚くほど広がる!3歳から始める欧米式お金の英才教育」がある。
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