小学校の英語必修化でどう変わった?親が知っておきたい小学生の英語学習
2020年4月から、外国語(英語)の授業が小学校3・4年生を対象に必修化、5・6年生を対象に教科化されました。コロナ禍で授業参観が開催されなかった小学校も多く「どんな授業をしているのだろう?」「親はどう関わるべき?」と疑問に感じている親御さんも多いのではないでしょうか。そこで今回は、玉川大学名誉教授であり、小学校教師向けの英語研修や講演活動などを多数行なっている佐藤久美子先生にインタビュー。授業内容や子どもの反応、親としてできることなどを伺いました。
目次
英語は人気科目?小学校で起きている変化
小学校では、2011年から5・6年生を対象に英語の学習自体は始まっていましたが、2020年より3・4年生から正式に必修化されて「外国語活動」が始まり、5・6年生からは「外国語」という“教科”になりました。
そのことをわかっていても、具体的にどういった授業が行なわれているか、親からはなかなか見えづらいものです。まずは、佐藤先生に小学校での英語教育の実情をお伺いしました。
「3~4年生は『聞く・話す(やりとり・発表)』の『2技能3領域』が中心です。そこで素地を養った後、5~6年生では『4技能5領域』化されるため、さらに『読む・書く』も加わります。また、3・4年生の必修化に伴い、1~2年生でも年間10時間程度英語学習の時間を設ける学校が増えています」(佐藤先生)
現在、3~4年生では週1回(年間35時間)、5~6年生では週2回(年間70時間)が取られており、少なくない時間が英語の授業に割り当てられています。子どもたちの反応は一体どうなのでしょうか。
「私が関わっているどの学校でも、子どもたちからは『英語が楽しい!』と評判が良いです。1~4年生は約9割、5~6年生でも7~8割くらいが、英語を好きだと感じている印象ですね。歌・振りなど、声や体を使った内容が多いことも要因の一つだと思います」
特に4年生までは『話す』『聞く』が中心のため、“チャンツ”(リズムをとりながら発声したり単語や表現を覚えたりする活動)も行なわれており、まさにゲーム感覚とのこと。
「3~4年生で行なう『発表』の領域でも、shopkeeper(店員)とclient(客)に扮してロールプレイを行なうなど、楽しく学べるような工夫が凝らされている学校が多くあります」
とはいえ、それは教育現場の先生方の努力の賜物。
ベテランの小学校教師の方のほとんどは、教員免許を取得する過程では英語を教える予定がなかったため、大学時代に英語の指導法を学んでいません。そのため、学校や個々人の努力と研究によって教え方を試行錯誤してきたのです。
「先生方は教えるプロですから、研修でヒントを差し上げると、積極的に英語授業に関わっていきます。2011年に5〜6年生に外国語活動が導入されてから、今では教え方がとても上手になられた先生が多くいらっしゃいますよ」
さらに、英語の授業がスタートしたことで、他の教科や学校の雰囲気にも良い影響が出ていると、佐藤先生は話します。
「英語を楽しめるようにと考えた教え方を、他の教科にも応用することで、先生方の授業がさらに工夫に満ちたものになっていると感じますね。
また英語の授業では、相手の考えを聞いたり自分の意見を伝えたりすることが多いため、子どもたちも発表が上手になっている様子が見られます。
加えて、授業中に『Good morning!』『Thank you!』など明るい挨拶をする影響か、自然と学校全体が明るくなっている印象です」
教育現場では、先生も子どもも努力して、良い方向に向かっている様子が伝わってきますね。では、学校での学習の成果を最大限発揮するために、家庭ではどのようなことをすると良いのでしょうか。
親はどうしたらいい?家庭でできる英語学習
家庭で英語を学習する際、英語の授業が始まってからでももちろん効果はあるものの、より幼い頃から始めるのがおすすめだそうです。
「私は長年子どもの言語獲得の調査をしてきましたが、言葉学習は幼ければ幼いほど効果があることがわかってきました。英語の学習は0歳から始めてもいいんですよ。日本語を習得する前に英語に触れさせると、『あまり小さいうちから英語を学ばせると日本語に良くない影響が出るかもしれない』と忠告されることもあるかもしれません。
ところが、2~6歳児を対象に調査をすると、英語を学んでいる子どものほうが、日本語の単語を真似て発音する“反復力”が高いのです。反復力が高いと総じて語彙力も高まる傾向にあり、英語学習は日本語の習得においてもメリットがあることがわかりました」
ただし、“英語嫌い”にしないために気をつけてあげなければならないこともあります。
「例えば、絵本を読んでいるときに『この絵本、英語ばかりでわからないから日本語で読んで』と子どもが言ったら、その時は『じゃあ、日本語で読もうね』と深追いしないようにしましょう。そこで無理に頑張ってしまうと、英語に苦手意識を持ってしまいます。これは年齢が上がっても同じです。親が英語を強いることはやめましょう」
これを踏まえた上で取り入れたい、佐藤先生おすすめの学習方法をご紹介いただきました。
《家庭での英語学習のポイントまとめ》
【幼稚園~小学3・4年生】
●子どもと一緒に英語教材を楽しむ
教材は、絵本でもDVDでも動画配信サービスでも構いません。英語の歌を一緒に歌う、英語の絵本を一緒に読むなど、特に子どもが小さなうちは一緒に何かをすることが大切。
英語の絵本を選ぶ時は、絵本の1ページに対して文が1行だけなど、文章が少ないもののほうが、取り組むハードルが低くておすすめです。また、イラストが明快なものは意味が分かりやすいです。
●子どもが好きなことは何度でも
子どもは気に入ったものを反復して見たり、読んだりする傾向があります。「この絵本読んで」と持ってきたら、「また、これ?」などと言わず、何度でも同じ本を読んであげましょう。いずれ他にも興味が向くようになっていきます。
【小学3・4年生~高学年】
●一緒に学び、日常でも使ってみる
オンラインやラジオなど、英語の学習ツールを使って一緒に基礎の英語を学んでみましょう。また、例えば朝食の際に「Which do you like ,orange juice or apple juice?」のように一緒に覚えたフレーズや単語を生活の中でも使っていくと、アウトプットが増えて記憶に定着するだけでなく、英語でのコミュニケーションに臆さないようになっていきます。
●辞書を手近なところに置いておく
ちょっとした時に「これは英語でなんて言うんだろう?」と調べられるように、居間などに辞書を用意しておきましょう。和英と英和がセットになったタイプの辞書を選ぶのがポイントです。和英で調べたことを英和で調べ直すなど使い方を工夫でき、例文や単語の使い方も同時に学習できます。
●好きなことを英語で深掘りする
日記を書くのが好きな子であれば、1行は英語で書いてみるなど、好きなことに英語を取り入れていくのもおすすめです。
また、英語を学ぶことに前向きになれないような場合でも、好きなことをきっかけに興味が生まれる可能性があります。例えば、サッカーが好きな子であれば「〇〇選手はスペインのリーグにいるけれど、チームのメンバーとどうやってコミュニケーションを取っているんだろう?」と問いかけることで、外国語を学ぶことが自分の将来にどんな影響を与えるのか想像しやすくなります。
楽しく親子で英語を学べば世界が広がって楽しみも広がる
2020年度から始まった小学校の英語必修化・教科化についてご紹介してきましたが、2021年度からは中学校の英語授業がオールイングリッシュ(授業を英語のみで進めること)になります。
中学校英語を見据えて次第にレベルアップしていく英語の授業を鑑みて、「もっと英語を頑張らせなければ」と考えてしまう親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、そういった考えには注意が必要だと、佐藤さんは話します。
「小学校の授業では成績こそつきますが、一般的な3段階評価の場合、3は『大変よくできました』、2は『よくできました』なのです。2は、成績が悪いのではありません。親御さんが気にしすぎると、子どもにもその気持ちが移ってしまい『成績が悪い=苦手だ』と思うようになってしまいます。
成績にとらわれずに、『よくできたね!』『発音が良いね!』などとうんと褒めてあげれば、子どもはきっと英語が好きになりますよ。
なぜなら、英語はただ言語が違うだけで、基本的にはコミュニケーションのツール。人と気持ちが通じあい、会話をするのは、本来とても楽しいことです。外国の友達や先生方とも英語で話せたらきっと嬉しいはずですよ」
“英語は楽しい!”“英語が話せた!”と思うことができれば、自然とやる気もアップしそうですね。
最後に、SODATTE読者の皆様にメッセージをいただきました。
「英語が好きという保護者の方はもちろん、英語は得意でないという方も、ぜひ子どもと一緒になって英語学習を始めてみてはいかがでしょうか。親が楽しんで学んでいると、子どもにもその楽しさが伝わりますよ。
子どもと一緒に遊んだり、学んだりできる時間は限られています。親子で英語に親しみ共通の趣味ができれば、それが英語好きな子どもを育てるかもしれません。将来一緒に海外旅行を楽しんだり、海外アーティストの音楽を聴いたりすることもできますね」
(取材・執筆/中山美里)
<専門家プロフィール>
佐藤久美子先生
玉川大学大学院教育学研究科(教職専攻)名誉教授・特任教授。津田塾大学学芸学部、同大学院文学研究科博士課程を修了後、ロンドン大学大学院博士課程留学。NHKラジオ「基礎英語」講師を8年務め、現在はNHK eテレ「えいごであそぼ with Orton」「エイゴビート」の総合指導や監修を行なう。多くの教育委員会や小学校にて英語研修講師や講演を行なう他、幼稚園でのカリキュラム策定や教員研修も行なっている。
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