子育て

デジタルネイティブ世代の子育て、スマホはいつから?タブレットで勉強させていい?


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    小学校でのプログラミング教育スタートまで約1年。現代の子どもたちは、生まれた時からデジタルデバイスに囲まれています。YouTubeなどのインターネットメディアも、テレビやマンガと同じようにエンターテインメントの一つとして楽しんでいるのではないでしょうか。とはいえ、幼い頃からスマホやタブレットに触れさせるのには抵抗がある人もいることでしょう。そこで、「デジタル教育」の専門家である石戸奈々子先生に、子どもとデジタル機器との関わらせ方をお聞きしました。

    スマホやタブレット、いつから使わせていいの?

    電車内で騒ぎだした時、病院の長い待ち時間……そんな時、「これ見てて」とスマホやタブレットを子どもに見せた経験がある方は多いはず。

    もはや私たちの生活にもなくてはならないデジタルデバイスですが、いったい何歳くらいから使わせて良いのでしょうか。

    「その質問に関しての正解はありません。いつからひらがなや算数を勉強したらいいかということに決まった答えがないように、子ども自身の性格や興味・関心、成長度合い、親の考え方によるでしょう。ちなみにうち(石戸さんのお子さん)は、0歳から使っていましたよ」(石戸さん)

    子どもにとっては、テレビもインターネット動画も同じ映像コンテンツ。

    “楽しむ”ことにおいては、どんなに小さくても子どもは天才です。でも、“学ぶ”ということになると、やはりある程度の年齢に達してからでないと難しいのではないでしょうか。

    「もともと遊びと学びは一体のものだと私は思っています。知的探究心は本来みんなが持っているもの。楽しみながら学ぶ、学ぶことは楽しいという姿勢を取り戻したいですね」

    ただし、やはりバランスやメリハリは大切。時間を区切って利用する習慣を小さな頃からつけていく、というのが最低限のルールです。

    デジタル教育のメリット・デメリットとは?

    デジタルデバイスは生活になくてはならないものですが、“子どもに使わせる”となると、「目に悪いのでは?」「依存症になるかも?」と悪い点も目に入ってしまいます。

    「まず、日本だけでなく、OECD(経済協力開発機構)もEU(欧州連合)も“これからの子どもにとって必要な力のひとつ”としてデジタルリテラシーを掲げています。つまり、ICTは教養として必須だということ。これを前提に、特徴的なメリットをあげてみましょう。私は、『創造』『共有』『効率』=『楽しく、繋がって、便利である』だと考えています」

    ※ICT(Information and Communication Technology)……情報通信技術のこと。「IT」に替わる言葉として広まりつつある。

    <教育にICTを取り入れるメリット>

    ◆「創造」

    理科の天体や算数の図形など、文章だとわかりにくいものを映像やゲームを使って楽しく分かりやすく学ぶだけでなく、学んだことをベースに表現活動や制作活動を行なって学びを深められます。

    ◆「共有」

    教室でも校庭でも先生・生徒とつながって、教え合い、学び合うことができます。例えば、タブレット端末を使うことで、授業中、先生がすべての生徒と繋がることができます。手をあげられる子だけが発言していたのがこれまでの授業でしたが、タブレット端末があれば、先生は、すべての子が何を書いているかを見ることができ、手をあげられなかった子の意見を汲み取ることもできます。また、学校だけでなく、地域や家庭とも情報を共有できるほか、海外と繋がることで生の外国語を学ぶこともできます。

    ◆「効率」

    個々人の学習進度に合わせた学習が可能となります。例えば授業では、子どもによって違う問題を出題することもできます。また、テストの採点など、機械ができる部分は自動化することで、先生の校務を効率化し、1人ひとりの子供と向き合う時間を増やせます。

    どんな技術やツールにもメリット、デメリットがあるものです。例えば身近なツールである包丁は、料理に使えば便利ですが、間違った使い方をすれば危険物になり得ます。

    「分からないから、怖いからと遠ざけるのではなく、大人が子どもに適切な使い方を教え、メリットを広げていくことが今求められているのではないでしょうか」

    2020年プログラミング授業開始!親がしておくべきことは?

    さらには、2020年には、小学校でのプログラミング授業が開始されます。ちなみに内容については、「コードをマスターしてプログラマーを育成する」というようなものを思い浮かべがちですが、そうではないと石戸先生。

    「職業としてのプログラマーを育成するわけではなく、プログラミングの考え方や原理原則を学ぶ教科となります。というのも、現代社会では、テクノロジーが生活の至るところに入ってきているからです」

    例えば、農業ではセンサーで作物の管理をし、スポーツ選手はタブレットで撮影しながらフォームを直すなどしています。つまり、これまでだとコンピューター技術は必要とないと思われてきた職業であっても、すでに導入されており、扱うことが当たり前になってきているのです。そのため今後は、プログラミングの考え方や学び方を知っているかどうかが大切。プログラミングを学んでいないと“よりよく生きたり、よりよく働いたりすることが難しい時代”だと石戸先生は話します。

    「学校教育は、平等に学ぶ場を提供してくれます。とはいえ、学校にお任せなのもいかがなものでしょうか。お父さんもお母さんもこれからの情報化社会をよりよく生きようと思ったら、デジタルリテラシーは必要。一緒に学んでいけるといいですね」

    というわけで、デジタルデバイスを使った具体的な教育・学習法についても詳しく伺いました。

    親子で楽しく学ぼう!石戸さんおすすめのデジタル教育法

    (1)クリエイティブな使い方をしよう

    石戸さんが特におすすめしているのは、“クリエイティブな使い方”です。

    「大切にしてほしいのは、テクノロジーを使って、親子コミュニケーションをより深め、子ども自身が創造的に使っていくことです」

    <例>

    • 一緒に公園に出かけて撮影し、撮った写真でコラージュできるアプリを使って、アート作品を作る
    • 親子で歌を歌ったり、踊ったりしながら、作曲をする
    • クッキングの動画を見た後に、家族で実際にその料理を作る

    このような方法だと、親子で思い出づくりをしながら、楽しく学べますね!

    「子どもはどんなものに興味を示すかわからないので、あらかじめ、スマホやタブレットに『これなら安全に使える』というアプリをたくさんインストールしておくといいですよ。そうすれば、親の目の届く範囲内で子ども自身が探求していけます。私たちは、デジタルえほんアワードを毎年開催しています。優良なコンテンツを届けたいという思いで始めたこのコンテスト。世界40カ国から多くの作品が寄せられていますので、受賞した作品なども参考にしてみると良いのではないでしょうか」

    (2)安全のための「機能制限」「リスクの教育」「親子の関係づくり」

    子どもが成長して、自分で検索をするようになったり、SNSに興味を持ち始めたりすると、“有害サイト”に触れる危険性も出てきます。こんな時は、やはり「フィルタリング」を入れ機能制限をすることが大切だといいます。

    「けれども、技術はイタチごっこで、どんなにフィルタリングを入れても、誰かが破ってしまうもの。そのため、やってはいけないことやリスクがあることを辛抱強く教えていきましょう」

    この時に前提として必要になるのが、親子がしっかりとコミュニケーションを取れる関係づくりをしておくこと。

    「危険やトラブルに巻き込まれそうな時に、子ども自身が保護者に相談できる関係・環境を整えておきましょう。ネット上のトラブルは、リアルの世界とそんなに変わりません。知らない人について行ってはいけないということは、出会い系で知り合った人にもついて行ってはいけないのと同じことですよね」

    (3)反対派も巻き込んで楽しもう!

    デジタルリテラシーは必要不可欠だと思っていても、祖父母世代などから「小さいうちから、こんなものを持たせるのは良くない」と小言を言われてしまうという場合もあるでしょう。そういう時はどうしたら良いのでしょうか?

    「おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に使ってみるといいと思いますよ。例えば、テレビ電話機能のあるアプリを使えば、離れていても孫と交流できます。そういうことをやってみると、楽しさや便利さを理解してくれるはずです」

    他にも、前に挙げたようなアプリを使って子どもが作ったデジタル作品をプレゼントするのも理解を得るのに一役買ってくれそうですね。

    また、親・祖父母世代からすると「国語や算数は教えられても、デジタル機器やプログラミングについては教えられない」と尻込みしてしまうこともあるかもしれません。でも、大人にも大事な役割があります。

    「これまで、先生の役割は、知識を子どもに一方的に与えることでした。しかし、その学びの形から変化しようとしているのが今です。検索すればいくらでも知識が手に入る時代で、先生の立ち位置はファシリテーターになることです。例えば、動画で学んだことについて議論して考えを深める際には、中立的な立場で進行を担当する立場の人が必要ですよね。親も同じだと思います」

    考えてみれば、電車のことやアニメのことなど、子どもの方が詳しいことなんてたくさんあります。

    「人の悪口を言ってはいけないように、SNSにも書いてはいけませんよね。デジタルだからと恐れるのではなく、扱い方は子供に教えてもらい、ルールは親が教えてあげながら、一緒に楽しむ。そんな関係がいいのではないでしょうか」

    子どもたちの可能性を信じて応援すること、それが大人の役割

    最後に、石戸さんに今後やってくるさらなる情報化社会において、親がどんな心構えでデジタルに接すればいいのかを聞いてみました。

    「AIなどがますます発達していく中で、人の仕事がなくなる可能性に対する不安を保護者の方からよく聞きます。今ある仕事の中でなくなる仕事もあるでしょう。でも今、世界を席巻しているアマゾンやグーグルのような企業はこの数十年で生まれました。つまり、子どもたちは、新しい仕事を作っていく世代だと思っています」

    第4次産業革命などと言われていますが、過去の産業革命を振り返っても、人の暮らしは豊かに便利になっています。マイナス点ばかり見るのではなく、新しい未来への可能性に期待する視点も持っていく必要性がありそうです。

    「子どもと一緒に変化を楽しむマインドを持ちたいですね。ITは、上手に使いこなせば人間の力を拡張してくれるツールです。今までは、お金をかけて大学に行ったり、本を買ったりしないと手に入れられなかった知識が、無料でたくさん手に入るようになりました。逆に、自分のアイディアを世界中の人に発信することもできます。実際、アイディアを形にして起業するような子どもも出てきています。そういう子供たちの可能性を信じて、フルスイングできる場を用意してあげたいですね」

    10年後、20年後が全く想像のつかない現代社会。そのなかで、子どもたちが夢や希望を実現していけるように、親として手助けしていけるといいですね。

    <専門家プロフィール>

    石戸奈々子さん

    創造的な学びの場を産官学連携で提供するNPO法人CANVAS理事長。株式会社デジタルえほん代表取締役、一般社団法人超教育協会理事長、慶應義塾大学教授。東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員に。21世紀を生きる子どもたちのために、新しい表現や豊かなコミュニケーション力を発揮する場を提供している。

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