【FPが指南!】“保活”にはいくらかかる? 保育園入園に備えたマネーのポイント
近年は、保育所へ入所申請をしているにもかかわらず入所できない「待機児童」が社会的な問題になっており、保育園に入るための活動=“保活”という言葉も生まれるほど。さらに、なんとか保育園に入れたとしても、認可か認可外かによって、入園後にかかる費用も大きく変わるようです。中には、「月収のほとんどが保育園に消えてしまう……」という悩みを抱えている先輩ママも。
そこで、仕事復帰を予定するママにとって死活問題である「保育園入園」にまつわるマネーのポイントについて、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんにお話を伺いました。
保育園激戦区では、保活にかけた総額が100万円を超える人も
特に首都圏では、子どもを無事に産むことだけを考えていたい妊娠中や出産直後から、早くも保育園を見学したり役所の担当者に問い合わせたりと、“保活”を始める働くママ予備軍が多くいるようです。そんな中、気になるのは、皆どのくらい“保活”にお金をかけているのか、ということ。
「ベビーシッターのマッチングサービスを行っている『キッズライン』が登録ユーザーを対象に調査したアンケートによると、保活にかけたお金の総額が20万円を超えた人が20%近くを占めています。そのうち、約4人に1人が、100万円以上かかったと回答しています」と、風呂内さん。「認可保育園の入園に有利になるように、申し込み前に認可外保育園やベビーシッターを戦略的に利用したり、待機児童が少ない地域に引っ越しをしたりしたことが、保活費用のアップにつながったようです。また、認可保育園に入園できなかった場合に備えて、認可外保育園に契約金のような形で保育料の一カ月分を納めている人もいます」
アンケートでは、半数以上が1万円以下だったという結果も出ていますが、保育園激戦区に住んでいる場合は、ある程度の出費を覚悟して保活をしなくてはならないようです。さらに、無事、保育園に入園できたらできたで、今度は「保育料」を支払わなければなりません。
とはいえ、一概に「保育料」といっても認可・無認可、世帯年収によって、かかる費用は違うようです。では、どのくらい変わってくるのでしょうか?
「認可保育園」と「認可外保育園」はどう違うの?
まず、保育料の違いを知る前に、「認可保育園」「認可外保育園」の違いをおさらいしましょう。
「認可保育園」は、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士などの職員数、給食設備、防災管理、衛生管理など)をクリアして都道府県知事に認可された施設を指します。「公立と私立がありますが、国や自治体から運営費が出ていることもあり、保育料が比較的安いのが特徴です」
一方、国が定めた設置基準を満たしていない施設を「認可外保育園」と呼びます。中には、国の制約を受けることなく園独自のサービスを行いたいという理念のもと、“あえて”認可を受けていない保育園も。「保育園とひとくちに言っても、その保育内容や設備はさまざまですので、選ぶ際には、認可保育園以上に念入りな下調べが必須です」と風呂内さん。「いずれにしても運営は民間が行っており、保育料も園ごとに決められているため、認可保育園よりも高くなる傾向がありますね」
なお、認可外保育園には、国や自治体の助成を受けている園もあり、東京都独自の制度で設置されている「認証保育園」がそれにあたります。
では、「認可保育園」「認証保育園」「認可外保育園」の3つの保育園料を見ていきましょう。
認可保育園の保育料は、住民税額と子どもの年齢によって決まる
認可保育園の保育料は、各世帯の住民税(区市町村民税)の所得割額によって算定されるため、世帯ごとに金額が決定します。また「子どもの年齢によっても保育料は変わり、1人の保育士が担当できる子どもの数が限られる3歳未満(0~2歳クラス)は高めに設定され、3歳以降になると安くなる自治体が多いですね」と風呂内さん。
「同じ住民税でも自治体によって保育料は変わりますが、東京23区内に住む世帯年収600万円の3人家族であれば、1歳児で約7,000~3万円、3歳児で約5,000~2万円、世帯年収900万円の3人家族であれば、1歳児で約1万2,000~4万5,000円、3歳児で約8,000~2万8,000円くらいを見積もっておくといいでしょう」
また勤務時間や通勤時間などの事情で、延長保育時間に子どもを預ける場合には、通常の保育料とは別に、1人あたり月数千円の延長保育料がかかることもあります。
認可外保育園は、保育料だけで月10~15万円が目安に
対して、認可外保育園は、前述したように保育料も施設によって差がある上、世帯収入が高くても低くても、料金は一律です。風呂内さんによると、「月々10~15万円くらいはかかると思っておいたほうがいいでしょう。園によっては、20万円以上かかるところもあります」とのことで、やはり認可保育園に比べて割高のよう。また、保育料以外に、入園手付け金や、おむつ・ミルク代、給食費などが別途かかることも多いようです。
「高所得世帯は別として、子どもが1人ならなんとか預けられたとしても、2人目、3人目も保育園に預けるとなれば、それこそ給与のほとんどが保育園の費用に消えてしまう、場合によってはマイナスになってしまうことにも。そのため、認可外保育園に預けている方は、働きながら、認可保育園へ転園するための“保活”を続けている方も少なくありません」
一方で、東京都の認証基準を満たしている「認証保育園」は、同じ認可外保育園とはいえ、少し事情が異なるようです。「保育料は世帯収入に関係なく各施設で一律ですが、月220時間以下の利用をした場合、3歳未満で月8万円、3歳以上で月7万7,000円が上限として定められています」と風呂内さん。「さらに区によって助成金を受け取ることができ、たとえば世田谷区民であれば、収入に応じて0~4万円の補助が受けられます」。
つまり、世帯収入や居住区によっては、認可保育園と変わらない保育料で預けられることができそうです。ただし、こちらも認可外保育園と同様、民間が運営しており、保育内容はさまざまですので、見学など事前の下調べなどはしっかりしておきたいものです。
長期的なマネープランを視野に入れて保育園選びを
程度に差こそあれ、子どもを保育園に入れるからには、入園前も入園後も家計に負担がかかってしまうのは、仕方のないこと。とはいえ、中には、認可外保育園に預け続けるのが金銭的に苦しくなり、結局、仕事を辞めざるをえない人も……。そんな厳しい保育園事情の中、最後に風呂内先生にアドバイスをいただきました。
「多くの働くママにとって、保育料は大きな負担です。自分の給与から月に何万円も、預け先によっては給与のほとんどが保育料に消えてしまうのに、“大切な我が子を預けてまで働く必要があるのか”と悩むこともあるでしょう。また仕事と育児の両立は、金銭面だけでなく、精神的にも肉体的にもストレスを感じることかと思います。ですが、ずっと働き続けている人と、一度仕事をやめ子育てが一段落したタイミングでパートを始める人との生涯年収の差は、約1億円にもなるというデータもあります。そういった事情もふまえて、老後や子どもの教育資金など長期的なマネープランも視野に入れながら、直近の出費を減らすために仕事を辞めるのか、働き続けてキャリアをキープするのかをきちんと判断し、自分が納得できる選択をするようにしましょう」
また風呂内さん曰く「地域の保育園事情など、早い段階から情報収集をしている人ほど、保活にかかる出費も少なく、また認可保育園に入れている確率が高い」とのこと。ストレスを感じるほど血眼になって保活をする必要はないですが、できるかぎり早めに準備を始めるほうがいいのかもしれませんね。
取材協力:ファイナンシャルプランナー 風呂内亜矢
取材・文:ヨダヒロコ(六識)
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