小学校入学を前に考える。今の時期に大切なこととは
保育園や幼稚園を卒園して、いよいよ小学生になる春!子どもたちはその日を楽しみにしていることでしょう。一方、期待とともに「お友達はできるだろうか。勉強についていけるだろうか。給食は食べられるだろうか」。そんな不安を多少なりとも親子で感じているのではないでしょうか。
入学までにおさえておきたいことや親の心構えについて、東京家政大学准教授で小学校教諭の経験も長い阿部藤子先生に伺いました。
小学校に入学することで、生活はどのように変わるでしょうか。
一般的には、登校時間が幼稚園より早いこと。毎日給食があること。親の送り迎えが必要ではなくなること。勉強がはじまること。この4つが幼稚園・保育園時代とは変わることですね。この4つに基づいて、入学前にできることは何か、Q&A式で阿部先生にうかがってみました。
早起きをするためには、まず早寝から!
Q:早く起きる習慣をつけるのに、コツはあるでしょうか?
A:まずは、登校時間は何時か。朝ごはんもしっかり食べるためには何時に起きる必要があるのか。逆算して、早起きに慣れておく必要があります。そのためには早寝をすることが大事で、そのためには昼の間に十分体を動かして遊ぶことが必要です。遊んで疲れていれば自然と夜眠くなりますし、外で走り回ったり動いて遊んだりすることが、早寝早起きだけでなく、遊びの充実のためにも非常に重要といえます。できれば家族全体で早寝早起きに協力して生活リズムを変えていきましょう。
早く食べる練習はしなくてもOK!好き嫌いは無理強いせずに少しずつ克服。
Q:小学校に入ると給食が始まります。幼稚園がお弁当だった子は苦戦する場合も往々にしてあるようです。
「給食の時間が短いと聞くが、食べるのが遅いので心配」
「好き嫌いがあるので、給食が食べられるか不安」
「少食なので、給食が完食できないのでは」
「お箸が持てないのだけれど、大丈夫?」
そんな親の心配が聞こえてきます。一番大切なことはなんでしょうか。
A:学校の食事時間が短いからといって、早く食べる訓練をする必要はありません。時間内に食べ終わらない理由には、3つあります。
・食べるのが遅い
・少ししか食べられない
・嫌いなものがでた
少食なら、最初の盛りつけのときに、少ししか食べられないと言えるといいですね。食べること自体が遅い子は、それでも食べる意欲があるのであれば、OK。急いで食べる練習はしなくて大丈夫ですよ。
好き嫌いはない方がよいのですが、みな何らかの嫌いなものはあるもの。おうちで少しずつ嫌いなものを取り入れて、少しでも食べられたら拍手して褒めてあげるなどで十分。大切なのは無理強いしないことです。
自分の名前は読み書きできるように。親子の会話も大切にして
Q:字の読み書きについては、どの程度できていたほうがよいのでしょうか。
A:自分の名前は読み書きできたほうがいいと思います。五十音の読み書きは、完璧にできていなくても小学校では一から教えるので大丈夫。書ける子も多いのですが、変な癖をつけたり、書き順がまちがったまま覚えているよりは、学校でちゃんと習って書く練習をしてくれたほうがいいと思います。
ただ、入学前に読み書きを教えることに必死になるよりは、たくさん親子で会話をして自分に起こった経験を人に話せるようになることを大切にしてください。
自分の経験を頭の中で整理してアウトプットするという作業は、実は作文の勉強の基礎になるのです。
もちろんこれは、入学前に限らず入学後にも言えることです。
とはいえ子どもが話す内容は不十分ですから、親は上手く話を聞き出す習慣を今からつけるようにしてはどうでしょう。
「どうしたの?」「へえ」「誰と遊んだの?」「楽しかった?」「あらあら。いやな思いをしたのはどうして?」と親が相槌を打ちながら聞いていくことで情報が整理されていきます。楽しそうにお母さんが聞けば、次もまた話してくれるはずです。
くれぐれも「それで?」「それでどうしたの?」「それじゃわからないわよ!」と問い詰める感じにならないように!
通学路と家の周りの地理をいっしょに歩いてチェック!
Q:入学すると、親の送り迎えなしで通学することになります。親にとっても我が子の通学時の安全は心配なことのひとつですが、入学までにできることはありますか。
A:学校までの通学路を歩いてみましょう。通学路だけではなく、心配なく家のまわりのエリアを、歩けるようになっていますか。
入学前に一人で歩かせろということではありません、親と一緒に歩くのでいいのです。いっしょにお買いものに行くとき、習い事に行くとき、幼稚園に行くとき、いつも車や自転車で行っているようなら、少しずつ歩いてみて、どこに何があるか、交差点など危ないところはないか、交通標識なども教えながらいっしょにチェックをするといいですね。また、友達や知り合いの家、商店など、困ったときに助けを求めるところがあることも確認してあげると良いでしょう。
自分のことは自分でやる。本当にどこまでできている?
Q:衣類の着脱や挨拶、基本的な食事のマナーなどはできていると感じている親は多いかと思いますが、気をつけるべき点はありますか?
A:我が子は一通りのことはできていると思いがちですが、本当にできていますか?もう一度チェックをしてみてください。
たとえば、洋服の脱ぎ着はできるけれど、裏返しのままになっていませんか?
傘は一人でさせても、閉じて止めて、傘立てにしまうことができますか?普段の幼稚園の荷物の出し入れはやらせているけれど、遠足の時のお弁当や水筒は、親がやっていませんか?
ついつい親が「たたんであげる」「入れてあげる」癖がついている場合は、今からでも遅くありません。子どもにやらせてみましょう。レインコートやボタンのついた服など、着脱に時間がかかるときも、イライラせずに待つ努力を。そして、できたら必ず「すごい!」「えらい!」のひと言を。
嫌なこと、困ったことははっきりいえるようにするためには
Q:「嫌だといえること」「こうして欲しいといえること」が大切だと聞きます。具体的にはどうしたらいいのでしょう。
A:幼児のうちは子どもが単語でものを要求する場合、親はその先を見越して要求を満たしてあげるでしょう。けれども、もう入学を前にした時期なのに同じ対応をしていたとしたら、見直したほうがいいかもしれません。たとえば「牛乳」と言われたら「牛乳をとって欲しいのね」と先回りするのではなく「牛乳がなにかな?」と問いかけて「牛乳をください」ということまで言わせるようにふだんから気をつけてみましょう。
1,2年生でも教室でおもらしをしてしまう子がいます。それは一つには器官が未発達ということもありますので、あまり気にしなくてよいのですが、もう一つの理由は「トイレにいきたい」と言えないからです。
嫌なことがあったときに泣いて注意を引くのも、うまく話せないから。ふだんから会話のキャッチボールをたくさんしていると、次第に「今この状況・心情を伝えるために必要な情報は、なにか?」ということが子どもにもわかるようになりますよ。
人とたくさん関わってこそ分かることがたくさんある。
最後に阿部先生に、入学を前にした保護者にメッセージをいただきました。
「人と関わってこそ身につくことが、実はたくさんあります。それが身についているか?ということを問い直して欲しいのです。
人のことを思いやる。受け入れてもらえたらうれしい。傷つけたり傷ついたら悲しい。体を触れあって遊ぶと楽しい。そういう経験を十分していないと「DV」「いじめ」「ひきこもり」などの対人関係につまずく原因にもなるのです。
家族とごろごろ寝っ転がったり、手をつないだりして触れ合っていますか。いろいろなお友達と関わって、笑ったり泣いたりしていますか。そして、描いたり、モノをいじって作ったりすることが楽しいんだということを十分に知っていますか。それなら大丈夫。学校に来ることを楽しみにしていて欲しいなあと思います。
小学校1年生前後の子どもは一番かわいいとき。いろんなことができるようになって親も一緒に楽しめる時期でもあります。だからこそ親も肩の力を抜いてゆったり楽しんで欲しいのです。「この子は何が好きなのかな」「何ができるかな」「何を一緒に楽しめるかな」という目線で見てあげましょう。今の時期を十分に楽しんで、晴れ晴れと入学式を迎えてください。そして、長い目で成長を見守ってあげましょう。学校の先生も味方です」
阿部藤子先生
お茶の水女子大学附属小学校教諭を経て、東京家政大学家政学部児童教育学科准教授。主に国語科教育の科目を担当し、小学校教員を目指す学生の指導にあたる。教師がどのように力量を形成していくのかに関心を寄せる。
取材・文:ライター 宗像陽子
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