子育て

子育て心理学で「3歳児神話」を検証! どこを守り、どこを捨てるか?


    • Facebook
    • Twitter
    • Hatena
    • Line

    日本の3歳児神話は歪曲したものって本当!?

    「3歳児神話」という言葉を聞いたことはありますか?

    「子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきであり、さもないと成長に悪影響を及ぼす」

    という考え方のことです。しかし、1998年の厚生白書では、「3歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない」と書かれています。それもあり、最近では「3歳児神話は崩壊した」とも言われていますが、子育て心理学から見ると実態はどうなのでしょうか?

    そもそも3歳児神話は、イギリスの精神科医・ボルビー博士が唱えた「アタッチメント理論」が、歪曲しながら発展したものとされています。この理論でボルビー博士が主張しているのは、

    「子どもが社会的にも精神的にも正常に発達するためには、少なくとも1人の養育者との親密な絆(アタッチメント)を維持しなければならない。それが欠如すると、子どもは社会的、心理的な問題を抱えるようになる」

    ということ。強い精神的な絆を意味するアタッチメントが“最低でも1つは必要”と言っているのであって、母親は子育てに専念すべきと唱えているわけではありません。もしそうだとしたら、第一子を出産後に80%以上のママが仕事に復帰するフランスでは、多くの子どもたちが問題を抱えることになってしまいます。しかし実際はそんなことはありません。この点で、日本の3歳児神話は狭義なのです。

    それでもなお3歳までが大切な理由は「お守り」にあった!

    だからと言って、3歳児神話を全否定すべきかというとそんなことはありません。「母子」と限定してしまう必要はないだけで、3歳までの日々を疎かにしていけないことに変わりはありません。なぜなら、3歳までの大きな子育てのタスクとして、親は我が子の「情緒的対象恒常性」を確立させる必要があるからです。

    「情緒的対象恒常性」とは、児童心理学者のマーラーが提唱した心理用語。一見、漢字ばかりで複雑に見えますが、中身は簡単です。子どもの頃、何かで不安になったとき、親の顔を思い浮かべて、「よし、大丈夫だ」と立ち直ったことはありませんか?

    情緒的対象恒常性とは、「心の中に思い浮かべる大切な人の存在」のこと。この「心のお守り」を確立する時期が3歳前後と言われているのです。これがいったん作られると、その子の心は非常に安定します。なぜなら、親から多少離れて遊んでいても、心のお守りのおかげで不安になりにくくなるからです。「不安解消」「自立促進」のお守りを作る時期として、やはり3歳というのは非常に大事なターニングポイントなのです。

    思ったよりも早く開花する子どもの社会性

    とは言え、心のお守りは、3歳になれば自然と作られるわけではありません。必要な材料があります。それは、先にご紹介した「アタッチメント」です。それまでに注がれた愛情をもとに、心のお守りは作られていくのです。

    心のお守りを作り上げるにあたり、日本の「3歳児神話」には欠点があります。それは、母子のアタッチメントを強調し過ぎてしまっていることです。

    実際には、子どもはもっと社会性に富んでいて、3歳までに複数の人とアタッチメントを築けることが分かっています。0歳の人見知りの時期は「ママじゃないとダメ」だった子も、1歳を過ぎると段階的に、パパ、おじいちゃん、おばあちゃん、家族以外の人へとアタッチメントを広げていくポテンシャルを持っているのです。

    だから、せっかくの社会性の成長期に「母子密着」を強調し過ぎてしまうのは、逆にもったいないのですね。しかも、これは、「パパとアタッチすると、ママの分が減ってしまう」という類のものではありません。子どもたちは、みんなからできる限りたくさんの愛情をもらおうと貪欲なのです。

    フランス式 ママだけでなくパパも加わった「新・3歳児神話」の確立へ

    だから、ママ以外の人も、もっともっと子育てに頭を突っ込んでいく「3歳児神話」、これが正解です。先に例で出したフランスでは、ママが仕事をしていることもあり、小さい頃から、積極的に子どもをママ以外の人と触れさせます。日本では、「3歳まではママと一緒じゃないとかわいそう」という見方がありますが、フランス的に言えば、「3歳までママとだけではかわいそう」というわけです。日本とはずいぶん違いますよね。

    実はフランスの隣国であるドイツにも、日本と同じような3歳児神話が存在します。同じヨーロッパ内でも子育て観には大きな違いがあるのです。ドイツでは働くママを「カラス母」と呼び、子どものそばにいないことに対する冷たい目線がありましたが、近年それも変わりつつあります。実際に、2005年にはメルケル氏がドイツ初の女性首相となり、女性の立ち位置が大きく変わってきています。政府の家族政策も、母親密着型から、夫婦両立型へと切り替えられ、従来の3歳児神話が崩れようとしているのです。日本でも共働きのご夫婦が増えてきていることを踏まえると、ドイツのように、新たな3歳児神話へとステップを進める時期に来ていると言えるでしょう。

    心のお守りの数は多ければ多いほど、その子の心は安定します。ママが愛情を注ぐのはもちろんですが、ママだけに丸投げせずに、パパも周囲の人もその子とつながろうとする子育て、これこそこれから求められる「新・3歳児神話」ではないでしょうか。

    文:子育て心理の専門家&育児コンサルタント 佐藤めぐみ

    <関連記事>

    コレだけは押さえておきたい!超多忙なパパが家庭内ですべき2つのこと

    子どもの可能性を伸ばし家庭に幸せをもたらす、「習い事」との付き合い方

    <関連キーワード>


      RECOMMENDED この記事を読んでいる方へのオススメ

      カテゴリーごとの記事をみる


      TOP