子育て

子どもの進学で夫婦ゲンカ!その時どうする?


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    子どもの進学は、親の関心が高い話題。でも子どもの将来に望むことや、進学のコストなど、夫婦間でぴったり同じ意見を持つとは限りません。では夫婦の意見をどのように調整し、共に取り組めばいいのでしょうか? 株式会社バレクセル代表・野倉学さんにうかがいました。

    お父さんが「ぜひ息子も自分の母校へ」。でも息子の成績は届かず……

    夫婦で子供の進学について意見が食い違うケースには、実際にどのようなものがあるのでしょうか?

    受験情報サイト「中学受験スタディ」などを運営する、株式会社バレクセル代表・野倉学さんにうかがったところ、「ご夫婦のどちらかに進学への強い思いがあってお子さんが引きずられてしまった場合に、夫婦の意見が対立するケースが多いように思います」とのこと。

    たとえば、お父さんが名門校出身の高学歴で、息子も自分の母校である私立中学校へ入学してほしいという強い思いがあった、あるご家庭。お母さんも子ども自身も、明らかにお父さんの望む学校には実力が届かないとわかっているのに、お父さんは「自分の息子なのだから、自分と同じくらいできるはず」と信じ込んでいて、他の志望校はまったく受け入れられなくなっていました。

    困ったお母さんが、お父さんを連れて塾の面談へ。塾の先生は、お父さんが譲れないポイントは、名門老舗中高一貫の伝統校で同級生や卒業生に豊かな人脈があること、中高の先生がそのまま大学でも教えることができるほどのレベルの高い人材であることなどを、会話から導き出しました。結果、「共学がいい」と言っていた息子さんは、お姉さんが通学する伝統共学校を第1志望に。すでに娘が通学して実情を知っている学校とあって、お母さんも納得、安心。そして、お父さんの母校の大学も最終的には狙えることもあり、お父さんも納得しました。

    「第三者を交えて初めて、夫婦がそれぞれの要望を素直に出すことができたのです」と、野倉さん。「進学の話には学歴やお金の話などが絡みますから、夫婦だけではなかなか生臭くて本音を話せないこともあります。第三者を交えて相談することで、それぞれの意見を紐解き、現実と理想とのバランスを取ることができます」。

    「なんでわざわざ高い学費を払って私立なんかに?」私立校受験にアレルギーを起こすお父さんも

    逆に、お父さんが子どもの進学に積極的な関心がない場合もあります。

    地方出身で公立名門高校、国立大学で育ち、現在は東京近郊で暮らしているような優秀なお父さんに多く、お母さんが「この辺りでは中学受験が盛んだから、うちの子どもにも」と話を持ちかけると、「なんでわざわざ高い学費を払って私立なんかに?」とアレルギーを起こすことがあるのだとか。国公立高校の方がレベルが高い地方環境で育ったため、私立は公立に合格できない子どもが行く場所、との思い込みがあるのです。

    するとお母さんは策を講じ、まずは受験をしなければ自動的に進むことになる、学区内の公立中学校の土曜参観へお父さんを連れて行きました。ところが、そこはお父さんが想像するよりもはるかに荒れた環境。すかさずお母さんは「それなら近くの公立中高一貫校を見に行かない?」と誘い、今度は週末に催された公立中高一貫校の一般公開授業へ。公立中高一貫校はいまや施設と人材の充実で知られ、トップレベルの有名校がずらり。

    お父さんは、自分が望んでいた“レベルの高い公教育”が受けられる環境にすっかり満足しましたが、公立中高一貫校は受験準備が必要。そこで、納得のもとに子どもの中学受検(受験)を応援するようになったそうです。そして、公立中高一貫校の高倍率を考えて、私学も選択肢にいれました。

    「男性は現実的ですから、“これは危ない”と危機感を覚えるようなものを見たときに心が動きます。はじめにいいものを見せてしまうと“お金がかかりそう、高嶺の花”などと感じて警戒してしまうのも特徴なんです」。野倉さんの“父親にありがちな心理”のご説明に納得です。

    夫婦で話し合うときの重点ポイント

    では夫婦で話し合うとき、何に重点を置き、大切にするべきでしょうか?

    「2020年の大学入試改革を控えた今の時代、学校選びは偏差値などの世間による数値的な評価で決めるものではなくなってきています。親が確かな尺度を持っていることが大切。子どもに希望することや、社会観、譲れない価値観、そして子どものやる気ポイントなどを紐解き、親子にとっての満足感がどこで一番高いかを見極めたいものです。一番は子どもが力を発揮できるところ。せっかく苦労して合格しても、子どもの性格とマッチングせず入学後に失望する”中1ロス”というのもあるくらいなんです」と野倉さんはズバリ指摘します。

    また、進学に関しては、受験準備だけでなく合格後の授業料、そして通学後の塾費用にもお金がかかるもの。「教育費は、どこに優先的に価値を置くかで変わってきます。学校が提供する教育の質も、今や千差万別。いわゆる”面倒見がいい”学校では、学内で予備校的な大学進学準備授業や多様な部活動がありますから、授業料でほぼまかなえることも。大学の附属校以外は私学の授業料も初年度年間約100万円、2年目以降年間60万円前後と案外リーズナブルですから、その意味では私学のコストパフォーマンスは低くはありません。また、同一性の高い家庭環境の友人は一生の友、そして転勤がほぼない教員は一生の恩師にもなることも最もうれしいお金に換えられない付加価値だともいえる」。

    「塾のコストに関しては、実は集団塾はほぼ横並びです。いい先生に出会えるかがとても大事ですが、それ以上に大切なのは、親、特にお母さんが平和な気持ちで子どもの受験に伴走できるか。共働き家庭も増えていますから、世間の評判や実績だけに流されずに塾での弁当や塾の宿題の母親の負担なども考慮して、家庭のニーズに合う塾選びをしてみては」と、野倉さんは提案します。

    夫婦で喧嘩しない話し方のコツ

    とはいえ、夫婦は最も近しい関係だからこそ、大事な子どもの話になるとついケンカしてしまうもので……。

    そんなときに大事なコツは「お父さんがお母さんの話を聞くこと。お父さんは疲れていてつい馬耳東風になりがちですから、お互い積極的に話し合いの時間をつくる工夫をしてみては。週末、ちょっと子どもが塾や習い事に行っている間にランチでもして話し合おうよとか、学校や塾の説明会に夫婦で出かけるのもいいでしょう」と野倉さん。いきなり話すのは、照れもあって難しいですよね。だから週末、子どもがいない時間にゆっくりと相談すると、歩み寄れるのだそうです。

    「子育てや受験の経験が少しだけ先輩の友達など、ワンクッション置いた第三者を挟んでくだけた雰囲気で相談するのもおすすめです。男性は夫婦だと身構えますが、第三者の話は素直に聞くんですよ(笑)」。

    今は、男親も女親も一緒に子育てをしようという時代。夫婦の意見が違うのは自然なことと捉え、上手に歩み寄って、親も子もお互いに幸せな選択をしたいですね。

    取材協力:株式会社バレクセル代表 野倉学

    1989年 リクルートへ入社。2004年 同社退社後、バレクセルを設立。ひとり一人にあった学校選びを応援する専門サイト「お受験じょうほう」「中学受験スタディ」「高校受験スタディを運営。

    文:河崎 環

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