キャリア

「夢を育てよ」#11 石田衣良さんに聞く、投資とは「人類の未来に懸けるということ」vol.2


    • Facebook
    • Twitter
    • Hatena
    • Line

    前回の記事では石田さんが小説家としてデビューするまでのいきさつや、初めての口座開設について伺いました。後半では、今後どのような小説家を目指すのか、また、石田さんが感じる現在の日本の空気感や、ビギナーにお勧めする投資術についても話は広がりました。

    【前回はこちら】
    >>「夢を育てよ」#11 石田衣良さんに聞く、投資とは「人類の未来に懸けるということ」vol.1

    メジャーなマイナーを目指していく

    石田さんのデビュー作にして、代名詞とも言える『池袋ウエストゲートパーク』は、シリーズ全17巻が発行されます。また、大ヒットしたテレビドラマをはじめ、コミック、ミュージカル、舞台、テレビアニメと、メディアミックスの展開がなされました。

    そして、4人の中学生の生活を切り取った連作短編小説『4TEEN フォーティーン』で第129回(2003年上半期)直木賞を受賞します。デビューからトントン拍子で仕事が増え、メディアにも露出し、その順調さは自分でも想定外だったと言います。

    そんな石田さんは今後、どんな小説家を目指そうとしているのか。そのヒントとして見つけたのが、日本推理作家協会による5年前のネット記事。そこで、石田さんは、「多数派にならず、作家らしく、別の答えを小説という形で、そっと差し出したい」とコメントしています。それをご本人に紹介すると、「ああ、カッコいいですねえ」とにこやかに笑い、こう続けます。

    「でも、僕は間違っていました。やはり、多数派にならなければダメなんですよ。そのコメントは、余裕のある時代の作家の話です。Netflixを見れば分かりますよね。映画は今、なりふり構わず、多数の受け手に支持されるサービスをしないといけない時代なんです」

    「小説もそうでしょう。最近、多いと思いませんか。何かのため、誰かのための小説が。テーマは生活術や生きる知恵、何かのノウハウなど。小説も結局はサービス業になっているんです」

    では、石田さんも今後そういった、多数の読者が好む、サービス業としての作家を目指すということなのでしょうか。

    「それは無理ですね。そもそも、殺人事件も鉄道ものも得意ではないし。少なくとも、メジャーなメジャーは難しいですよ。であれば、目標はメジャーなマイナーしかない。それを目指して、以前より一段でも二段でも作品として階段が上がったものを書ければと思っています」

    5種類のインデックスファンドに2,000円ずつ

    石田さんは学生時代から株を買い始め、今や投資歴は40年超。ご自身のネットチャンネル『大人の放課後ラジオ』でも、定期的に投資解説や市場分析も行なう、筋金入りの個人投資家でもあります。そんな石田さんにビギナーに勧めたい投資術を指南してもらいました。

    「昨年までは、S&P500、NASDAQ、世界株、REITの4種類のインデックスファンド(※1)に定期的に投資をすることを勧めていました。ただし、今年はこれに世界の国債を加えます。昨年、あまりに米国株が上がり過ぎたという状況はありますが、今年に入ってからのS&P500の下がり方を見ると、アメリカ株の比重はやや下げたいと思ったので。資金の配分はすべて同じ、それで毎月コツコツ買っていくことです」

    (※1)特定の指数と同じ値動きをする投資信託。日経平均やTOPIX、S&P500といった株価指数の他にも、国債、REIT(不動産投資信託)、金(ゴールド)など、さまざまな指数に連動するファンドがある。

    しかし、世界経済は急激なインフレで、混迷を深めています。今後の景気動向が気になるところですが……。

    「確かに、今年後半から来年にかけて、景気は下降気味という大方の予想ですし、僕もそう思います。直接の原因はアメリカの利上げ。その利上げが、インフレが収束しない限り続くなら、株価はさらに低下していくでしょう。でも、インフレが収まると、そのままでは企業が大変なことになるので、今度は利下げをする。すると、株価はグンと上がる。そんな局面が来年どこかで来るのでは、という期待もあります」

    しかし、景気がいいときも悪いときも、コツコツと買い続けることが、投資にとって最も望ましいと、石田さんは言います。

    「よく、YouTubeで大学生に言うんですが、アルバイト代で投資をしてみてほしい。月1万円をさっきの5種類のインデックスファンドに2,000円ずつ。これを20年続けたら、元本の2倍、3倍にはなる可能性も。将来は確かに不透明です。でも大丈夫、人類はみんな働くし、経済もそこそこ伸びるから」

    また、若い人にはぜひ新聞を読んでほしいとも言います。石田さんも投資を始めた頃、朝日新聞と日経新聞を毎日読み続けました。最初は内容が分からなくとも、しばらくすると、今日の記事と2カ月前の記事に関連があることに気付く。そのとき、世界経済の動きが見えてくるのだとか。

    「みんな情報を勘違いしているんです。例えば、情報機関に勤めている人だって、新聞など、誰もが触れられる情報をコツコツ集めて、自分なりの世界観や分析結果を用意し、それを提言していることだってある。新聞のようなオープンソースを甘く見てはいけないんです」

    「もし、新聞をしっかり読めて、自分なりの世界観を持つことができる、あるいはそのために日々頑張れるなら、それはとてもいい勉強になるし、財産になると思いますよ」

    日本もラテン化して、赤いシャツを着よう

    石田さんは、人生相談を長年続けています。最初は女性誌の企画でした。当初は「何で僕が?」と思ったそうですが、今も日経新聞や自身のネット番組で行なっています。

    それを通して感じるのは、誰もが不安でたまらないということ。特に、若い人たちは夢を持てない。抱く思いは、自分が一人生きていくだけのお金を持ち、自分の遺伝子を後世に残すことをあきらめ、地球から消えていくということ。

    「そこまで人を絶望させる社会って大丈夫かなあって思うんだけど、若い人はそういう状況も楽しいって言う。それが切ないよね……。ネットで友達とはつながっているし、映画はNetflix、音楽はYouTubeで楽しめる。酔いたければストロングゼロを飲めばいい。それ以外にも幸せってあるよって言いたいんだけど、伝えるのは難しい。何て言ったらいいんだろうね」

    「ただ、社会だけが原因でなく、日本特有の縮み方ってないですか?イタリアもスペインもポルトガルも、世界を席巻した帝国の時代があったけど、そういう国の国力は何百年とかけて落ち続けている。でも、今も人生は楽しそうでしょ。安いワインをうまそうに飲んで、ピザを食べて、陽気に話す。何で、日本人はそうなれないのかなあって。日本もラテン化して、みんなで赤いシャツ着ようよって言いたいよね」

    一向に衰えない新型コロナウィルスの感染状況、国際紛争、貧困や社会格差。ネガティブな話題にこと欠かないこの現代だからこそポジティブに生きられることが求められているのかもしれません。

    「働いている人たちは、社会や会社と自分を切り離してもいいのでは。景気の悪化と個人の気持ちは、違うわけです。社会といっしょに暗くならず、自由に好きなことを楽しめばいい。投資も不景気では不安に思うかもしれないけど、すごくカッコいい言い方をすると、投資は人類の未来に懸けるってこと。人類って、世の中を豊かにしようと頑張っている。その果実を何年後、何十年後に受取るのが投資。そう考えれば、少しは前向きになれるかもしれませんよ」

    子どもの頃の夢

    SF小説に夢中になり、自分も人を楽しませる小説を書いてみたいと思ったのは7歳のとき。その30年後、運良く作家デビューできました。

    直木賞を受賞後の変化

    意識にも作品にも、特に変化はないですね。ただ、自宅に、朝から晩まで白い胡蝶蘭が届いたのには驚きました。30鉢か40鉢は来たと思います。

    子育てに悩む親たちにアドバイス

    自分の子どもには可能な限り、いろいろな可能性を見せてあげたいという人がいます。でも、一人の子どもにそんなに可能性があるわけではないし、何か窮屈ですよね。だから、もっとゆっくりすればいい。待っていれば、必ず自然と可能性の芽が出てくる。それが子育ての本筋ではないでしょうか。

    投資をしてみたいがなかなかできない人へ

    リスクを感じてできないなら、無理をせず、もっと少額から始めては。毎月5,000円で5種類のインデックスファンドに1,000円ずつ、とか。ともあれ、普通預金にずっとお金を預けておくことはもったいないと思います。

    取材・執筆/清水京武 写真/山田英博

    ※文中の経済・資産運用等に関する記載は石田衣良さんの感想であり、将来の運用成果等を保証したものではありません。
     投資に関する決定は、銘柄選定を含め最終的にはご自身の判断でなさいますようお願いいたします。

    このページの情報は役に立ちましたか?

    <関連記事>

    「夢を育てよ」#11 石田衣良さんに聞く、投資とは「人類の未来に懸けるということ」vol.1

    「夢を育てよ」#8 貧しく厳寒の北海道の漁村から、札幌そして東京、スイスへ。フランス料理シェフ三國清三さんを導いた父の教えは「波が来たら、まっすぐに突っ込め」vol.1

    「夢を育てよ」#6 大久保嘉人さんが信じる「1%の可能性」 vol.1

    証券口座とは?口座の種類や開設方法・ポイントを知ろう

    <関連サイト>

    今日からあなたも始められる!初心者のためのカンタン投資デビュー

    つみたてNISA

    <関連キーワード>


      RECOMMENDED この記事を読んでいる方へのオススメ

      カテゴリーごとの記事をみる


      TOP