これからのキャリアの考え方、“パラレルキャリア”とは?
コロナ禍では、働き方にも新しい生活様式が求められました。一気に進んだのが、リモートワークやオンライン会議、シェアオフィスなど。これまでにはなかったワークスタイルが取入れられ、自身の働き方を見つめ直した方も多いのでは?今回は、新しい働き方として注目されているパラレルキャリアについて、パラレルキャリア推進委員会(R)代表の美宝れいこさんにお話を伺いました。
目次
パラレルキャリアとは?副業とはどう違うの?
昨今、新しい働き方として注目されているパラレルキャリア。本業とは別に仕事を持つことを指しますが、“副業”とはどう違うのでしょうか。
「パラレルキャリアは報酬を得ることを目的とするのではなく、キャリアやスキルを活かして社会貢献をしていくことを目指します。2018年の副業元年に注目され、コロナ禍で再度脚光を浴びています」(美宝さん)
副業は、メインになる本業が他にあることが前提で、サブとして収入を得る目的で行なう仕事を指すとのこと。一方、「複業」とも呼ばれるパラレルキャリアは、複数の仕事を掛け持ちしながらもメイン・サブという序列をあえてつけず「どれも本業」という考え方を指すそうです。
美宝さんが代表を務めるパラレルキャリア推進委員会®に参加する女性の多くは30~40代。子育てが少し落ち着いたタイミングの他、育休から復職するタイミングなど、キャリアの節目にパラレルキャリアに興味を持つ方が多いそうです。
「女性活躍推進が叫ばれてはいますが、男性と平等なチャンスや公平な評価が得られないという企業が依然として少なくありません。キャリアの壁にぶつかったときに、パラレルキャリアを選択肢として考える女性も多いようです。また、勤め先の経営状態が不安定、自分がリストラの対象になるかもしれない……という不安感を感じたときなどに、『本当に好きなこと、やりたいことってなんだろう?』と考える人も増えているように感じます」(美宝さん)
さまざまな理由でパラレルキャリアを考える女性がいるようです。では実践すると、どんなことが起こるのでしょうか。
「社外で活躍することで、これまで得られなかったチャンスをつかめるかもしれません。自己成長に繋がるのはもちろん、時間を重ねていくうちにキャリアやスキルも積み重なっていくため、本業とパラレルキャリアのシナジーを起こせることも醍醐味だと感じます」(美宝さん)
加えて、日本が抱える問題点の解決にも役立つのではないかと美宝さんは言います。それは、「ジェンダー・ギャップ指数2021」において日本が156カ国中120位であることに起因します。現在日本では、女性管理職目標30%に対して、現実は半数以下の14.7%。女性の平均所得は男性より43.7%低く、パートタイマーも男性の約2倍となっています。
※世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2021」より
「管理職目標を達成できない理由の一つとして、実は女性自身が管理職を望んでない人が多いことが挙げられます。その要因には、職場の環境が整っていないことや、家庭との両立が大変であることもありますが、『自分に自信がない』と答える人も多いんです。つまり、マネジメントや責任あるポジションに就いた経験がなく、ケーススタディとなる前例もないため、自信を持って管理職に進めないという悪循環があるんです。
社内で重要ポジションに就いた経験がないなら、パラレルキャリアで経験を積んでみることもできますね。自分に自信がつけば、本業でチャンスがあったときにも手を挙げやすくなるのではないでしょうか」(美宝さん)
では、すでにパラレルキャリアを実践している方たちは、どのように実践しているのでしょうか。いくつか実例を紹介していきましょう。
パラレルキャリアを実践する女性たちを紹介!
まずは美宝さんご自身のケースをご紹介。会社員時代に複業を実践したことから、パラレルキャリアを広める仕事をしていきたいと考えが変わっていった経緯があります。
「33歳で母を亡くしたときに、自分の人生や仕事を見つめ直したのがきっかけでした。2015年頃に、好きなことで起業しようというのがブームになっていました。自分が好きなものはなんだろうと振り返ったとき、ちょうどアロマにはまっていたんですね。そこで、会社員を続けながらアロマサロンをオープンしたのが最初のスタートです」(美宝さん)
サロンを経営していると、「どうやってサロンをオープンしたんですか?」「複業で続けられますか?」などSNSで問い合わせが来るようになったそうです。
「相談を受けるうちに、そういう人の力になれるかもしれないと考えるようになりました。同じタイミングでパラレルキャリアという言葉を知り、自分がやっていることはまさにこれだと感じました。女性がパラレルキャリアを実践することで、キャリアの幅や活躍の場を広げることができるのではないかと思い、推進していくことを決意しました」(美宝さん)
このような流れで会社員を辞め、起業家への道を進んでいった美宝さんはこう話します。
「軸足に収入があるからこそ、いろんなことにチャレンジできるのがパラレルキャリアです。何回失敗してもいいし、本当にやりたいことが定まるまでは時間がかかってもいいと思います」(美宝さん)
ここでは、他の女性たちの実例もご紹介していきます。
【ケース①】
●本業:非常勤講師、複業:料理教室の先生
●始めたきっかけ:受け持っていた生徒が腹痛を起こしたことで、「腸活」に興味を持ち資格を取得。自宅にて料理教室を開業した。教師の仕事も好きなので、どちらの仕事もやりがいを持って取組んでいる。
●実践してよかったこと:食べ方や健康的な食生活などの話を学校の教室で話し、国語から学ぶ人生論を料理教室で話すというように、一方の仕事で学んだことを、もう一方に活かすことができるようになった。毎日が充実しているし、収入アップが見込めることにも魅力を感じている。
【ケース②】
●本業:韓国語の翻訳、複業:キムチの小売りとオンライン韓国語講師
●始めたきっかけ:コロナ禍のため、家に引きこもる毎日が続くようになっていたところ、キムチ屋を営んでいる実母から「家にいるならキムチを売ったら?」と勧められた。
また、パラレルキャリアを実践していく中で知り合った人の紹介で、韓国語と韓国料理の講座を開く機会を得た。お試しで実施したところ、そのまま継続して受講したいという人がいたため、続けて開催することになった。
●実践してよかったこと:自分は何が好きなのか、改めて気づくことができた。また、収入も上がり、子どもを習い事に通わせる程度の余裕が生まれた。人との出会いに恵まれ、いろいろなことを学べた。
皆さんさまざまな形でパラレルワークを実践し、感じるメリットも人それぞれのようですね。
今の自分から一歩前進するために、チャレンジ精神を持って、トライアンドエラーを重ねながら答えを出していけばいい……そう考えると興味が湧いてきますね。
パラレルキャリアを実践してみよう!
いざ、パラレルキャリアを始めてみようと思ったとき、一体どうやってスタートすればいいのでしょうか。
【STEP1 情報収集】
好きなことがわからない、やりたいことを見つけたいという場合は、いろいろなロールモデルを知ることからスタートしてみましょう。自分に似た状況の人がどのような取組みをしているのか、情報を集めてみるとヒントが見つかるはず。可能なら、パラレルキャリアを実践している人に会いに行ってみると一層発見があるでしょう。
【STEP2 学ぶ】
本業の延長線上にあることや近い業界のことなら、情報収集をした段階で挑戦できることもあるでしょう。しかし、全く違うジャンルに挑戦する場合には、スクールに入るのも一つの方法です。今はオンラインのセミナーや講座もたくさんあるので、家にいながら隙間時間をうまく利用してインプットしていきましょう。
【STEP3 タイムマネジメント】
パラレルキャリアを実践していくと、つまずきやすいポイントがあります。それは時間管理。忙しくなると、本業と複業と家庭のバランスがうまく取れなくなってしまいます。心身の調子を崩さないように、しっかりとタイムマネジメントをしていく必要があります。また、子どもの病気などに対応できるようバッファを作っておいたり、家事などは代行業者に頼んだりと柔軟に考えていくことも大切です。仕事の組立ては年間を通して考え、本業に力を入れる期間、複業に力を入れる期間というように波を作って、同時に全てに全力投球しないよう心がけましょう。
【STEP4 目先の成果にとらわれない】
パラレルキャリアは、好きなことややりがいを追求していった先に収入が生まれるという考え方。目先の成果を追いかけてしまうと、挫折に繋がったり、結果的に遠回りになってしまいます。「稼ごう」という目標は二の次にしましょう。
そのためにも、常に右肩上がりを目指すのではなく、年間や数年単位で目標を立てると良いでしょう。
未来の可能性を広げるワクワク感を味わおう!
今や労働人口の約44%が女性という時代。ママになってもキャリアをしっかり築いて、一人の女性としての人生を充実させていきたいと考える人が増えてきています。
「どんなにすごい人でも、実は私たちと能力自体に大差はないと思っています。自分が取組んでいることに、いかにワクワクしているか……そこに違いがあるだけだと思います。女性は出産や子育ての中で、キャリアの節目を迎えることもあるでしょう。そんなとき、パラレルキャリアに挑戦して、ワクワク夢中になれるものと出会ってほしいなと思っています」(美宝さん)
収入や成果はその先にある副産物のようなもの。あくまでも大事なのは、好きなことややりがいを追求することなのだと美宝さんは言います。
「人生100年時代、いくつになっても求められる人でいたいものですね。そのためにも、パラレルキャリアでワクワクしながら可能性を広げてみませんか?」(美宝さん)
家族の生活のためにしっかりと収入を得ることも大事です。しかし、笑顔でいきいきと働くママの姿を見せていくことも、長い目でみたときに子どもの成長にいい影響があるのではないでしょうか。
<プロフィール>
美宝れいこさん
エール株式会社代表取締役、パラレルキャリア推進委員会®代表、パラレルキャリアコンサルタント。16年間の会社員生活を経て独立。自ら複業する中で、パラレルキャリアという働き方を知り、その推進を事業として行なうことを決意。「パラレルキャリアで働く女性の活躍を応援する!」をミッションに掲げ、コミュニティ・スクール・プロダクションの一体型オンラインプラットフォーム運営などを手掛けるほか、セミナー・講演や企業の顧問なども務める。
執筆/中山美里
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