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働く場所の新常識#3 子どもと通えるシェアオフィス『Maffice』で叶う自分らしい働き方と子育て


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    コロナ禍でリモートワークが定着し、自宅近くにシェアオフィスを借りるなど職住近接の働き方も注目されています。小さな子どもがいる共働き家庭の場合、保育園も家や仕事場からアクセスのいい場所にあると嬉しいですよね。今回は、保育園が併設されたシェアオフィス『Maffice(マフィス)』の代表・高田麻衣子さんにお話を伺いました。

    育児と仕事の両立に悩み、出した答えは起業 ママが自分らしく働けて育児もできる施設の開設

    保育園が併設されたシェアオフィス『Maffice(以下、マフィス)』。現在、北参道、横浜白楽、横浜元町と3つの地域で展開されています。いずれの施設も、保育園にワーキングスペースが併設されていて、子どもと一緒に出勤し、仕事を終えたら、子どもと一緒に帰宅できる作りになっています。

    また、西武グループからの受託で行なわれている『emiffice(エミフィス)』。こちらは西武線沿線の2カ所(練馬・大泉学園)で展開されており練馬は学童が併設されているのが特徴です。

    ▲ワーキングスペース(マフィス北参道)

    ▲保育園(マフィス北参道)

    これらの事業を展開しているのが、今回お話を伺ったオクシイ株式会社代表の高田さんです。

    「もともと不動産会社で働いていたのですが、出産後は、子どもの体調不良などがあると仕事が満足にできない日もあって、うまく人にも頼ることができず一人で抱え込んで……と悪循環にはまる時期が断続的に訪れました。仕事と育児の両立に悩む中で、仕事と子育て、どちらも取れる選択はないのかなと、よく考えていたんです。子どもたちの成長にもっと寄り添いながら、同時に、自分らしく働き続けられたらいいな……と」

    出産後も不動産会社で管理職として働いていましたが、子どもが病気になったり、お迎えがあって時間的な制約を受けたりと、身軽な時代のようには働けないと感じることが多かったそうです。下の子が生まれると、子育てと仕事の両立についての悩みはさらに深くなりました。

    加えて、長時間労働が通例となっている会社員を続けていけるかどうかと考えたとき、仕事上の自己実現や目標をうまく見つけられなくなっていきました。

    その自問自答の中で生まれたのが、保育園併設のシェアオフィスというアイディアでした。資金面など状況がタイミングよく整ったこともあり、高田さんはアイディアを形にすべく会社を辞める決断をしました。

    子連れ出勤OK、授乳室がある、家族も給食が食べられる!? 家族ファーストな保育園が誕生した理由とは

    「今と違い、起業当時はリモートワークなんて、一部の先進的な企業がやっているくらいでした。そんな中で、仕事と家事の両立スタイルをベストな距離感で作りたいなと思っていたんです。家に限りなく近いところに職場があって、子どもを預けたらすぐ仕事に入れる。仕事が終わったら、すぐ子どもと一緒に帰宅できる、そんなところがあったらいいのに……と」

    そんな高田さんの願いを形にしたマフィス。単に“子どもを職場近くで預かってもらえる”だけではありません。

    「働いている時間以外のことも考えて、生活全般がちょっとでも楽になるように、サービスを設計しています」

    マフィスには、共働き生活にぐっとゆとりをもたらしてくれるものがいっぱいです。

    パパやママだけでなく保育園に通っていない兄弟も一緒に給食が食べられる「夕食提供サービス」や、仕事をさっと抜け出して赤ちゃんに母乳をあげられるように、授乳室を完備しています。

    加えて、2020年からは夫婦揃ってワーキングスペースを利用できるサービスも開始されました。保育園を利用している家族は、追加料金なしで夫婦が自由に使えるプランです。それが導入されたのは、“働き方の変化”を感じたためだと高田さんは話します。

    「最近はリモートワークの導入が進み、夫婦ともに働く場所が会社に捉われないケースが増えてきました。それに、パパやママが一人でお子さんの送り迎えをするのって大変ですよね。だったら、家族一緒にマフィスに来て、子ども達は保育園に、親はワーキングスペースに、ということができるといいなと思ったんです」

    社会システムや男女の意識が徐々に変わり“仕事も子育ても”が実現できるように

    2019年から「働き方改革」が施行され、多様な働き方ができるような取組みが推進されています。そしてコロナ禍が訪れ、働く側の意識も社会のシステムも大きく変わっている昨今。高田さんは、どのような変化を感じているのでしょうか。

    「男性の利用者が増えたのと、会社員とフリーランスの比重に変化がありました。例えば、保育園に預けてから企業に出社していた男性で、コロナ禍になってからはマフィスに子どもを預けて、そのままリモートワークをするという生活になった方が何人もいらっしゃいます」

    特に、20代~30代前半では男性の意識の変化が大きく、1年間の育休を取ったり、妻が会社員を続けるために夫が会社を辞めて独立したりするケースもあるそう。

    「女性が子育てをしながら働き続けるために、男性側が勤務時間や働き方を自由にできたほうがいいと考える夫婦が増えていると感じます。会社で働くことだけに捉われず、一旦手放してみて、優先順位をその都度決めながら、新しい人生を歩んでいく方も多く見られます」

    「フリーランスという働き方ひとつを取ってみても変化がありました。マフィスがオープンした頃は、安定した仕事を持つ夫がいるため、妻がフリーランスになって仕事と子育てを両立させるのが一般的でした。しかし、最近は子どもが生まれたタイミングでご夫婦が同時にフリーランスになったり、妻が先に会社を辞めて夫は独立をサポートし『妻の事業がここまで成長したらジョインしよう』と計画したりと、まさに多様化しています」

    状況に合わせた働き方を、柔軟に自然体でやっている姿が目に浮かびます。それはきっと子育ての姿勢にも反映されるのでしょう。

    「子どもたちのお散歩の時間になると、パパやママ達が一度仕事を中断し、ワーキングスペースの窓際に集まるんです。『行ってらっしゃい』と子どもたちに手を振ると、『行ってきま~す』と可愛い声が返ってくる。こんなとき、『マフィスっぽくていいね』と利用者の方とお話ししたりするんです」

    一人ですべてを抱え込むのではなく適材適所で得意なことをやればいい

    「私、『しなやかに、したたかに』を座右の銘にしているんです」という高田さん。「『柳に雪折れなし』のことわざを私なりに言い換えた言葉で、柔らかくしなやかなものは、堅いものよりもかえって持ちこたえるという意味です。

    人それぞれに得手不得手があって、それぞれに適した役割分担があると思うんです。男性だから、女性だからと決めつけるのではなく、みんながそれぞれ得意なことを無理せずやれるといいですよね。逆に苦手なことは臆せず伝えてお願いすればいい。頑張っているときほどやりきれない部分を誤魔化してしまうから、気負わずやれたらいいなと私自身心がけています。頑張りすぎないで、“しなやかに、したたかに”生きていきたいものですね」

    子育てが大変なときは働き方や働く場所を変えてみる。仕事が大変なときは誰かに育児を手伝ってもらう。一人ですべてを抱え込まず、柔軟に生き方を変えていくことも必要かもしれません。

    きっと、これからますます、「育児も、仕事も、自分自身の生きがいも」という時代になっていくでしょう。自分らしい生き方をするために、男性も女性も関係なく、働き方や働く場所を自由に選ぶことができたら素敵ですね。

    <プロフィール>

    高田麻衣子さん

    オクシイ株式会社代表取締役。大阪市立大学卒業後、不動産会社に勤務。ハードワーカーの多い不動産会社で管理職になったことで、育児と仕事のバランスに悩む。長男が1年生のときに兼ねてから温めていたアイディアを元に起業する。プライベートでは1男1女の母。

    取材・執筆/中山美里
    写真/フカヤマ ノリユキ

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