キャリア

「夢を育てよ」#7 “旅する鈴木”は、映像作品をつくりながら世界一周する旅人夫婦。その行動力の原点は「想いを大切にする」子育てだった!vol.1


    • Facebook
    • Twitter
    • Hatena
    • Line

    BS朝日で不定期放送されている旅番組「旅する鈴木」。映像作家の鈴木陵生さんとヨガインストラクターの鈴木聡子さん夫妻による、旅の様子を撮影した映像を活かしたドキュメンタリーバラエティー番組として人気となりました。2011年から旅をし続けて10年目に突入。これまで訪れたのは53カ国、公開している映像は777本。そして旅に出られないコロナ禍の現在は、なんと千葉県の山を開墾中。次から次へ夢が広がっているお二人に、旅立ちの理由や旅の魅力、旅を始めた時点でのお金の考え方について、お話を伺いました。

    “旅する鈴木”プロフィール

    鈴木陵生(すずき りょうせい)さん

    映像作家、写真家、旅人。1979年生まれ。劇団での役者経験を経て映像業界へ。映像プロダクションにて映像クリエイターを務めた後、カナダに拠点を移しミュージックビデオ、映画などの演出、技術スタッフなどを経験。2008年に帰国し、映像作家として演出、撮影、編集を数多く手がける。2011年より世界一周の旅に出発。妻と二人、旅をしながら自主サイト「旅する鈴木」にて映像を発表し続けている。現在は映像作家として活動しながら、千葉県いすみ市の山をウキウキ開墾中。そろそろ旅に行きたい。

    鈴木聡子(すずき さとこ)さん

    ヨガインストラクター、旅人。1978年生まれ。20代のころに始めたヨガに魅了されてヨガインストラクターの道に入る。ピラティス、骨盤など数々のボディメンテナンスの資格を取得し、都内各地のフィットネスクラブ、ヨガ教室でレッスンを担当。2011年、夫と共に世界一周の旅に出発。世界各地のヨガ事情を見て回りながら、各地で現地の人へヨガのレッスンを行なったり、絶景の中でヨガをしている。現在はヨガインストラクターとして活動しながら、千葉県いすみ市の山をワクワク開墾中。そろそろ旅に行きたい。

    30歳を過ぎて、世界一周の旅へ

    「普通じゃない映像ディレクター」になるために、世界を広げるために

    ―― 世界一周の旅を始められたのは2011年10月でした。旅立ちのときに、陵生さんは31歳で、聡子さんは32歳。どうして「旅に出よう」と思ったのでしょうか。

    陵生 日本でそのまま映像を仕事にしていたら、「普通じゃん!」と思ったんです。映像ディレクターにはなれるかもしれない。でも、もっと個性がないと生き残っていけないかもと。映像作家として何か特色がいるかもと思い、「どうしたらいいかな」と考えるなかで、いつかはしようと決めていた、世界一周の旅が見えてきました。

    ―― 「普通じゃ嫌だ!」と思われたのですね(笑)。

    陵生 そうですね。それに「旅をして感じたことが、どのように映像を変えていくのか」が楽しみでした。

    ―― 聡子さんは、旅に出ることについて、どう考えていましたか?

    聡子 最初言われたときは冗談だと思っていたし、行く気も全くありませんでした。けど、旅がいかに楽しいかというプレゼンを何カ月もされて、私もだんだん旅って楽しいかもと行く気になってしまいました。この人と行くのなら環境が世界の国々に変わっても面白そうだし、「それも人生の一つだ」「いろいろ経験することで、きっと世界が広がる」と思って一緒に行こうと決めました。

    ゼロになる勇気で、旅立つ

    ―― お二人とも30歳を過ぎていましたが、お金や仕事についての不安はなかったのでしょうか?

    陵生 一年かけて二人で500万円を貯めました。旅に出るとお金は減り続ける。でも、まだ30代前半ですし、不安はなかったですね。なくなったら、帰ろう。稼いで、また旅に出ようと思っていました。ゼロになる勇気がありましたね(笑)。夢をかなえるためには、ゼロになる覚悟を持って一歩踏み出すことが必要です。踏み出せばなんとでもなります。「世界中で、こんな暮らしをしていて大丈夫なのかな」という人とたくさん出会いましたが、みんな本当に幸せそうでした。仕事に関しても不安はありましたが、日本に帰ったら、なんでもやる覚悟でしたね。アルバイトでも、なんでも……。

    ―― 確かに、新しいことは踏み出さないと始まりません。お二人にとって、世界一周は自己投資のようなイメージだったのでしょうか?

    聡子 そうですね。ヨガ以外のいろいろなものを見てみたい。「新しい体験を重ねることで、自分の人生にとって、そのときは分からなくてもプラスになることがある」と思っていましたね。

    陵生 自分に投資しておけば、なんとかなる。「映像作家の修行としての投資」だと考えていました。

    ―― ちなみに、旅が仕事になると思っていましたか?

    陵生 旅立つときは思ってなかったです。あくまで「旅は映像の引き出しを増やすため」でした。

    世界を巡って、日々の映像を公開

    「映像制作から離れないぞ」という気持ちで

    ―― BS朝日のテレビ番組では、毎日撮っていた映像が話題となりました。撮影や編集が日課となるとハードワークだと思いますが、どうして続けられたのでしょうか?

    陵生 旅立つ前から、一日に一本、旅先で撮って公開することを決めていました。旅を始めたころは、ネット環境が悪くて、アップロードに苦労して、深夜まで安宿のロビーの片隅でパソコンを抱えて一晩明かしたりしていましたね(笑)。一日に一本というのはなかなか大変だったのですが、続けられたのは「映像制作から離れないぞ」という気持ちです。それに、やると決めたのは自分だから負担感はなかったですよ。映像の修行だと思っていましたから。

    ―― 現在、公開している映像は777本(2021年4月時点)。本当によく続けられましたね。

    聡子 最初のころは公開しても見てくれる人が少なかったんですけど、ずっと続けてきて、ついにテレビ番組になったので、「なにかを目指して努力を続けていくことは大切だな」と本当に実感しました。

    イースター島では36時間撮り続けた

    ―― テレビ番組「旅する鈴木」では、4Kで撮影したタイムラプス映像が好評でしたね。

    陵生 タイムラプスという手法は、定点で長時間撮影するんですけど、イースター島ではずっと同じ場所で36時間撮り続けました。旅のなかでは、一つの風景を何日もかけて撮っていました。

    ※タイムラプス/時間が経過するシーンを早回しで見せる映像のこと。旅する鈴木さんのホームページには、たくさんのタイムラプス動画が公開されています。

    ―― 撮影中、食事はどうされていたのですか?

    聡子 私が宿で作って、持って行きました。機材などに必要な充電器やおにぎりも。

    ―― お二人とも本当に努力を惜しまないですよね。

    陵生 努力とは全然思ってなかったですね。苦行だとは思っていましたが。撮れた映像が楽しみでしかなかったです。本当は24時間でよかったんですが、撮り始めて12時間くらいたったころに、カメラを載せた三脚を犬に蹴られ、ぎゃーと言いながらやり直したんです(笑)。

    宇宙空間のなかでヨガをやっているような体験

    ―― 旅を続けてきたお二人にとって、最高の景色はどこだったのでしょうか。

    陵生 旅の始めのころに訪れたボリビアのウユニ塩湖ですね。あそこを超える景色にはまだ遭遇していないです。とても広い薄い水たまりで、風がないから水面がフラットで、鏡面世界になっています。その鏡面に空が映るんですけど、それが水平線まで広がっていて、視覚的に圧巻です。そこで、妻がヨガをする姿を撮影しました。

    聡子 上を見ても下を見ても、横を見ても、すべて空で、宇宙空間のなかでふわふわとヨガをやっているような……本当に変わった体験でした。

    陵生 そこに居合わせた旅人が、妻がヨガをしているのを見て、泣いていたんですよ。そうやって見ず知らずの人も感動して思わず涙が出てしまうような、そんなシーンではありましたね。

    「ヨガはもっと自由に楽しんでいいんだ!」と気付く

    ――世界各地でヨガを教えてきた体験を通して、聡子さんのヨガに変化はありましたか?

    聡子 アフリカのナミビアでヨガを教えたことがあって、みんな身体が硬くて、「痛い、痛い」と言いながら、すごく楽しそうなんです。一本足で立てたら、それはそれでうれしそうでした(笑)。言葉が通じないけど、みんなで大笑いしながらヨガをやることが多かったです。それまで「ヨガは快適な部屋で、一人一人静かにやらなきゃダメ」という自分勝手なヨガ論に縛られていたのですが、「ヨガはもっと自由に楽しんでいいんだ!」ということを気付かせてもらいましたね。旅のなかでヨガを続けることで、ヨガの楽しさを再発見することができたと思います。

    文化庁メディア芸術祭の推薦作品選出

    ―― 旅する鈴木の活動が2014年の文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出されました。そのときは、どんなお気持ちでしたか?

    陵生 「うおー」という感じで興奮しつつ、ありがたいなあと思いましたね(笑)。僕らのやっていたことが芸術として認めてもらえたことは、本当にうれしかったです。その少し前くらいから、映像の仕事をいただくようにもなっていて、だんだんと旅が仕事になっていきました。

    ―― そして、2018年にはBS朝日で「旅する鈴木」のテレビ番組がスタートしました。

    陵生 あのような場で発表できるのは本当にうれしかったです。単純に「普通の夫婦でもこんな旅ができるんだ」ということを、多くの人に伝えたかったですね。

    聡子 私は、自分で体験することで楽しさが広がる、そんな旅の魅力を伝えたかったですね。

    ―― 冠番組になることは、なかなかないです。

    陵生 変な話ですけど、「夢がかなった」と思ったときがあって。「旅する鈴木」のパイロット版は、僕がディレクションして、僕が登場していて、その撮影のために愛車で首都高を走り、湾岸のスタジオに向かっていたんです。ちょっとトレンディドラマっぽいじゃないですか。僕はそもそもミーハーなので軽く自分に酔って「こいつぁいいぜ……」と思ったんです(笑)。

    「なんでもあり!」だと思える

    ―― 9年間、旅を続けてきて、お二人はどのように変わりましたか?

    陵生 「まだまだ」と思うのですけど、大事なことをちゃんと伝えられるようになってきたかもしれません。かっこいいだけではなく、うわべだけでもない、伝えるべきことをちゃんと考えられるように。毎日映像を撮り続けてきたからこそ、「自分で題材を見つけて、発信できるようになれた」と思います。

    ―― 聡子さんはいかがですか?

    聡子 以前より少しは価値観を自分で決められるようになってきたかと思います。例えば、モロッコで長期滞在をしたんですけど、お店で売っているものほとんどに値札が付いてなくて、高値で買うこともあれば、安く買えることもある。でも、私にとっての価値を認めていたら、高値でも安値でも「この値段でいい」と思えるようになりました。今、山で暮らしているのも、人によっては「大変だね」と言われますけど、これが私の人生のなかで大切なことですし、「普通のことだ」と自信を持てるようになったのは、大きな変化です。

    陵生 だからもう良い意味で「なんでもあり!」だと思いますね。「こうあるべきだ」「こうじゃなきゃだめだ」ではなく、「そういう考え方もあるよね」「そういうことも起こるよね」という風に物事も捉えられるようになりました。「やったことがない」も、まだまだたくさんあるわけですが、でも、やってしまえばそれが「やったことがある」になるだけなんです。そういう考え方や生き方は、世界中で出会った人や経験からきているのかもしれません。

    世界を旅することで自身の価値観に改めて気付くことができ、自由になれたというお二人。次回は、旅以外のチャレンジや、行動力の原点となった子ども時代、そしてお金についての考え方の変化などを伺います。

    【次回はこちら】
    >>「夢を育てよ」#7 “旅する鈴木”は、映像作品をつくりながら世界一周する旅人夫婦。その行動力の原点は「想いを大切にする」子育てだった!vol.2

    取材・執筆/簀河原由朗 写真/山田英博 一部写真提供/旅する鈴木

    このページの情報は役に立ちましたか?

    <関連記事>

    「夢を育てよ」#7 “旅する鈴木”は、映像作品をつくりながら世界一周する旅人夫婦。その行動力の原点は「想いを大切にする」子育てだった!vol.2

    「夢を育てよ」#6 大久保嘉人さんが信じる「1%の可能性」 vol.1

    「夢を育てよ」#4 月収900円時代を支えた貯蓄とアパート経営!再注目のコウメ太夫さんに学ぶ「まずやってみる」人生論 vol.1

    「夢を育てよ」#3 30歳から雑誌「VERY」専属モデルへ。クリス-ウェブ 佳子さんに聞く、人生を「しなやかに美しく」生きる力を育むもの

    <関連キーワード>


      RECOMMENDED この記事を読んでいる方へのオススメ

      カテゴリーごとの記事をみる


      TOP