キャリア

ママのスタイルは十人十色#4「働きながら自分のスキルを試す!転職とも副業とも違う選択肢」


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    子育てしながら仕事をしていると、“時間の制約”を窮屈に感じがち。独身時代や出産前なら終業時間を気にすることなく打ち込むことができていた仕事も、決まった時間に切り上げなければならない場合が多いでしょう。「周りの迷惑になっていないだろうか」「今後のキャリアをどう構築していけばいいのだろうか」と不安を抱える人もいるはず。今回、お話を聞いた宮下菜穂子さんは、プロボノとしての活動がキャリアを見つめ直すきっかけになったそうです。プロボノとは、仕事で培った知識やスキルを生かして行なう社会貢献活動のこと。噛み砕くと、“専門家が行なうボランティア”といったイメージです。もともとは弁護士などが公益のために専門知識を提供する活動を指しましたが、現在では、さまざまな職種でプロボノが行なわれています。そんな宮下さんの経験や働き方は、同じような悩みをもつママたちのヒントになりそうです。

    働き方の変革を迫られていたときに出会った “プロボノ”という活動

    株式会社ファンベースカンパニーにて、企画職として働く宮下菜穂子さんは、2020年9月に現職へ転職したばかり。4歳の息子さんの子育てをしながら働いています。

    それまでは、新卒で入社したベンチャーのPR会社で、PRプロデューサーとして働いてきました。前職の業務は、夜遅くまでの残業や地方への出張も度々あるハードなもの。とてもじゃありませんが、出産後はそれまでと同じように働くわけにはいきません。その上、その会社では宮下さんが現場で初の産休育休取得者だったそう。母親になった宮下さんへの配慮はあったものの、長時間労働がルーティンとなっている職場では肩身の狭さを感じることも……。

    そんなとき、宮下さんにある出会いがありました。

    「SNSのフィードで、プロボノの募集を見かけたんです。キャリアに悩んでいたとはいえ、転職するとなると生活が大きく変わってしまいますし、一か八かですよね。でも、プロボノは今の仕事をしながら他の働き方を経験できるチャンス。興味を持ちました」

    宮下さんが出会ったプロボノは、家庭・企業における『共に働く』を活性化させるプロジェクト『共働き未来大学』からの募集でした。宮下さんは、自分にはハードルが高いかもしれないという気持ちを抱えつつも、知人が運営に関わっていたこともあり、とりあえず話だけでも聞いてみようと連絡を取ったそうです。

    「話を聞いてみると、敷居は高くなく『まずはできることから一緒にやってみませんか?』と参加しやすい雰囲気でした」

    今後のキャリアに良い影響を与えられるかもしれないと思った宮下さんは、プロボノ活動に一歩踏み出すことになりました。

    多忙な生活の中での、家族の理解と向き合い方

    宮下さんがプロボノとして行なうことになったのは、団体の活動をメディアに取り上げてもらうためのPR活動や、イベントの企画・運営、記事の執筆など多岐に渡ります。

    ただでさえ忙しいワーキングマザーの毎日。家族はどのような反応だったのでしょうか。

    「夫は、私が走り出したら止まらない性格だと知っているので、特に何も言いませんでした。その上、休日の夜にプロボノのオンライン会議がある際は夫が子どもの寝かしつけをするなど、協力もしてくれました。

    でも、そのとき息子が『ママが来るまで絶対寝ない』と駄々をこね、夫がイライラする、なんてこともあったんですよね。申し訳なさを感じる反面、夫は平日好きなだけ働けるのになぁ……という思いもあり、複雑な気持ちでした」

    活動を続けていくには、パートナーとコミュニケーションをよくとって、考え方や分担について折り合いをつけていくことが大事だと改めて感じたそうです。

    また、お子さんとの関わり方については「帰宅してから寝かしつけるまでは極力パソコン作業をせずに向き合う」というルールを決めたとのこと。

    「お風呂で一緒に遊んだり、布団の中で喋ったりと積極的にコミュニケーションを取るようにしています。その際、言葉と態度で『大好きだよ』『大事だよ』と伝えています。そうすると、『今日、こんな悲しいことがあったの』とその日にあったことや悩みを話してくれることがあるんです。忙しくても気持ちをしっかり汲み取れるような関係を保っていきたいですね」

    このように、家族との関係も試行錯誤しながら、本業とプロボノの2つのキャリアを積み重ねていった宮下さん。この働き方には、どんなメリットがあったのでしょうか。

    パラレルキャリアで得られたのは 「自信」「視野の広がり」「人との繋がり」

    もともと宮下さんは、新卒時代の就職活動で「“就社”ではなく、専門分野を持ちたい」という思いをもってPR会社を選んだといいます。専門的なスキルを身につけて、自分が得た知識や技術をどのように社会に還元していけるかという視点でキャリアを考えていました。

    「新卒で採用された後はずっと一つの会社にいましたから、それなりに経験を積んでいました。でも、会社とは違う環境で仕事をしたときに、はたして自分にどれだけの価値があるのか、自信を持てませんでした。だから、社外に出ても通用するのかを知りたかったんです。

    プロボノ活動をしていく中で、どうやら会社以外でも自分のスキルが通用しそうだと自信が持てたことは非常に大きかったです」

    他にも、社外の人と意見交換しながら協働したことも大きな経験だったと言います。違う生き方をしてきた人の考えや物の見方を知ることで、視野が広がったと宮下さんは話します。

    「特に働き方に関しては、会社に長くいて、長時間労働をすることが偉いとされる風潮に疑問を持っていたんですが、そこに対する答えは、プロボノで関わっていた『共働き未来大学』の活動で見つけられました」

    例えば、当時今ほど普及していなかった、リモートワークという働き方。知ったときは、「ふーん、こんな働き方もあるのか」と遠い世界のように感じたそうですが、その後に訪れたコロナ禍により、一気に在宅勤務やオンライン会議が広まってきました。

    「世の中はどんどん移り変わるんだなと感じると同時に、時代の流れにすぐには適応できない企業・人もいることに気づきました。

    その中で、時間や場所に関係なく、メンバーそれぞれの『個』を活かせ、フラットに仕事の成果を見て認めてもらえるような環境を求めるようになり、“転職したい”という気持ちが芽生え始めました」

    それまで抱えていた「このままの働き方でいいのかな?」というモヤモヤが晴れ、「新しい働き方に挑戦したい!」と一歩踏み出すことを決意した宮下さん。転職先に選んだのは、完全リモートワークの会社でした。

    本業とプロボノ相互にシナジーを生む それは対価には変えられない魅力

    前職のPR業務で培った経験を土台に、現職ではファンベースプランナーとして働く宮下さん。プロボノでの経験もまた、現在の仕事に生かされているという良い循環が生まれています。

    「自分のスキルが社外でも役立つのかを試す機会として、またそのスキルをベースに新しいチャレンジをするときに、プロボノはとても良い活動だと感じています。

    仕事として報酬をもらうわけではないので、本業と同じことだけをし続けているとモチベーションが維持できないかもしれません。私の場合は、本業でしたことのなかったSNS運用や、記事のライティング、イベントでの登壇など、全く新しい活動もさせていただけたことで、経験値と実績を積むことができ、今の仕事にも活かせています。

    ただ、未経験のことにトライするということは、運営側からは成果として満足できない点もあるのかもしれません。ですので、期間や目的を決めて相互に良い循環が生まれるような関わり方ができるといいのではないかと考えています」

    お金での対価をもらわない代わりに、新しいことに挑戦しやすかったりと、長期的なスパンで見たときに価値のある活動ができていると、宮下さんは話します。

    「本業とプロボノが相互にシナジーを生めるといいですよね。今、私はワーケーションに興味があるので、プロボノではそのコンテンツを作ったり、小規模なイベントを企画したりしてみたいと思っています。それが本業にもつながっていったら、と考えるとワクワクしますね。

    ママだからと変に諦めず、ママであることを楽しみながら、世の中をほんのちょっとでもよくしていけるようにチャレンジしていきたいです」

    ママのスタイルは十人十色 宮下菜穂子さんの色は虹色

    「会社員として働く自分、そして妻であり、母であり、地域社会の一員でもある。プロボノをしている姿もあれば、私生活では趣味を楽しむ私もいます。また、両親が健在なので娘としての立場もあって……本当にさまざまな自分がいます。いろんな顔があるけれど、全部自分。その時々でどの自分の優先順位が高いのかは変わります。だから、全てをひっくるめて虹色の今があると思っています」

    キャリアについて悩むときは、会社を退職する、転職する、といった選択肢を考える場合が多いと思います。しかし、仕事を変えずに他のコミュニティでの活動を始めてみる、というのも選択肢の1つ。

    今回ご紹介したプロボノは、新たな人とのつながりをつくるきっかけや、培ってきたスキルを試すチャンスとして生かせそうです。オンラインで登録できるマッチングサイトも増えていますので、一度覗いてみてはいかがでしょうか。

    いろいろな自分をもつことで、視野が広がって、悩みを解決するための道が拓いていけるかもしれませんね。

    取材・執筆/中山 美里
    写真/フカヤマ ノリユキ

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