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働く場所の新常識#1 東京と地方を往復!杉浦那緒子さんに聞く、地方でのリモートワーク+デュアルスクールの子育て


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    今年、さまざまな企業で一気に導入が広がったテレワーク・リモートワーク。中には、子どもの夏休み中などに、ワーケーションを実践した方もいるのでは?この連載では、さまざまな場所で仕事をされている方に、“働く場所”についての考え方や、経験から感じたことなどをお聞きします。第1回の今回は、東京に拠点を置きながら、定期的に徳島県で2週間のリモートワークを行なってきた杉浦那緒子さんにお話を伺いました。

    リモートワーク+デュアルスクールで徳島県へ短期移住!

    働き方についていろいろな用語が聞こえるようになった昨今。まずは、リモートワーク、ワーケーション、テレワークといった働き方について、意味を整理してみましょう。

    テレワークとはICTを活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をさします。「リモートワーク」もほぼ同じ意味で使われています。かたや、ワーケーションは「ワーク(労働)」と「バケーション(休暇)」を組合わせた言葉で、リゾート地などで休暇を楽しみながらも仕事をするスタイルのこと。

    杉浦さんが行なったのは、東京の自宅から離れた徳島県でのリモートワーク(明確な定義はありませんが、杉浦さんの場合「休暇」としての要素はあまりなかったため、ここでは「ワーケーション」ではなく、地方での「リモートワーク」とします)。

    では、さっそく、徳島県の南部にある美波町という自然豊かな美しい土地での体験を聞いていきましょう。

    「働き方をテーマにした不動産仲介会社に勤務していて、会社のサテライトオフィスが徳島県の美波町にありました。自由な働き方を推進する企業ということもあって、同僚から『デュアルスクールというものがあるけど、家族で行ってみないか?』という話が来たのをきっかけに試してみようと思いました」

    デュアルスクールとは、地方と都市の2つの地域で教育を受けられるシステムのこと。「区域外就学願」を届出て教育委員会の承認を得ることで、住民票を異動させることなく転校できるのが通常の転校と大きく違うところ。一度きりではなく1年間に複数回行き来できるほか、受入れ先の小中学校にはデュアルスクール専任講師が置かれ、学習進度のずれもサポートしてくれます。つまり、行政の支援により、地方の良さを体感で学べる制度なのです。

    遠く離れた場所で、本当に働けるの?地方への短期移住の前に気をつけたこと

    学校や会社で制度として整っていても、実際に利用するとなると、周囲の反応も気になるし、スムーズに進めるための工夫も考えなくてはなりません。

    「初めて徳島で仕事をすることになったのは2016年。まだまだリモートワークをしている人は少なかった時代。経営陣は『頑張ってこい!』と前向きでしたが、直属の上司は実際の業務の進行についてさまざまな不安があったようで、『本当にできるかな?』と心配されました。

    また、ママ友は『いいね、楽しそう!でも、子どもの手続きやケアが大変そう』と非常に現実的でしたね」

    実際問題、「リモートワーク+デュアルスクール」を実施するにあたっては、さまざまな配慮や準備が必要でした。

    「本格的な短期移住をする前に一度、徳島での生活に慣れるために、息子の夏休みに合わせて1週間のリモートワークに挑戦しました。この体験により、離れているからこそ気をつけなければならないことがわかりました」

    具体的には、コミュニケーションの取り方や業務上の指示に、リモートワークならではのコツがあったといいます。

    「コミュニケーションに関しては、ミーティングの時のみWEB会議を繋ぐのではなく、常にこちらの状況がわかるようにしておく方がいいことがわかりました。もちろん会社や人によると思うのですが、私の職場の場合、着席しているかが一目でわかること、話しかけたいときにすぐに話しかけられることでお互いストレスなく働けるようになりましたね。

    また、業務上の指示に関しては、事前に情報を整理して、誰が見ても同じ手順でやれるように具体的に指示するなど、普段よりも丁寧に伝える必要性があります。これは、リモートワークを始めて2~3回目になってくると、向こう側もこちらも上手くなり、回数を重ねるごとにスムーズになっていきました」

    子育て面では、息子さんの転校問題についても気を配ることがたくさんあります。どのように対応したのでしょうか。

    「実は、知らない人ばかりの学校に転校生で入ることを最初は嫌だと言っていたんです。そのため、夏休みにまず行ってみて、先に友達を作ってしまいました」

    そして、2学期の10月に2週間のリモートワークとデュアルスクールを実施。以降5回の行き来をしました。

    メリット・デメリットは?田舎暮らしで私と息子が得たこと

    実際に短期地方移住をしてみると、想像し得なかったこともたくさん実感するはず。一体、どんなメリット・デメリットがあったのでしょうか。

    「メリットとして一番大きかったと思うのは、有給を確保しながら子どもを自然の中で遊ばせられること!病気や子どもの学校行事などに備えて、有給はできるだけ使わないでおきたくて、東京にいるときは子どもをあまり遠くへ連れて行けなかったんです。東京から自然あふれる場所に行こうと思うと移動時間がかかりますし、土日だけで行くのはなかなかハードだと感じていました。

    でも、地方での子連れリモートワークの場合、勤務後や土日でも、家から5分の場所でアウトドア系の遊びができちゃうんです」

    もちろん、旅行では得られない地方の魅力にも気づいた日々でした。

    「徳島の港町ですから、自然音しかしなく、目から入ってくる情報も少ないんですよね。東京にいると、視覚と聴覚が常に刺激されています。これらの刺激がなくなることで、次第に嗅覚、味覚、触覚が蘇ってきました。2~3週間滞在していると、美味しいものが美味しいとわかる体の状態になり、食事ってものすごい娯楽なんだと思いましたね」

    その反面、デメリットに感じることもありました。

    「サテライトオフィス(シェア型)はすでに用意されてあり、交通費と宿泊費は美波町のサテライトオフィス向け補助制度で一部をまかなえました(※)。でも、滞在中の費用は自分持ち。東京の自宅の家賃と、短期移住先の徳島の宿泊費の一部はどうしても二重にかかります。

    また、移住に伴なう準備や手間もかかります。特に、徳島にいる間はデュアルスクールの専任講師がいるため授業の進行のずれは面倒を見てもらえるのですが、東京に戻った際に学校での補習などはありません。不在中に進んだ学習内容を学校に確認して、ケアしなければなりませんでした」

    (※)制度や補助に関しては、自治体のホームページ等をご確認ください。

    このように、大変なことも多々ある地方での子連れリモートワークですが、デメリット以上にメリットは大きかったと杉浦さんは話します。

    子どもの体験が広がる、それは将来の可能性を広げることかもしれない

    特に都会で子育てをしている方は、「自然豊かな場所で目一杯遊ぶ体験をさせたい」と考えている方も多くいることでしょう。なぜ、そう思うのか……それは、自然や地域の文化が与えてくれる学びに期待しているからではないでしょうか。

    「息子にとっての世界は、“今住んでいる東京。あとはそれ以外”でした。でも、徳島に親戚のように付き合える友達ができて、“東京、徳島、それ以外はまだ知らないだけの場所”に変わったようです。いろんな人が、いろんな場所に住んでいて、いろんな考えを持っていることに気づいたのでしょう。友達とのケンカも減りました。自分と相手の違いを目の当たりにしたときに、感情的にぶつかるのではなく、受入れられるようになりました」

    特にこの「人は一人ひとりみんな違うんだ」という学びについては、大人になってもしっかりと残って欲しいと杉浦さんは願っています。

    また、進路についても変化があったようです。

    「東京生まれ東京育ちだと、大学も東京という考えになってしまいます。けれども、『〇〇で仕事をしたかったら、京都の大学に行った方が良いのかな?』と息子が言うようになったんです。従来と比べると選択肢が広がったと感じますね」

    現在、息子さんは小学6年生。これからさらに多くの体験をして、多様な選択肢があることに気づいていくのではないでしょうか。

    やりたいことに合わせて住む場所を選べればきっと自由になれるはず

    ここまで読んで、地方でのリモートワークに興味を持った方も多いのではないでしょうか?杉浦さんに、滞在先の場所選びについてもお伺いしました。

    「すでに多くの人が実践しているエリアがオススメです。例えば、リモート先進地域である徳島以外だと、軽井沢や湘南エリアはデュアルライフを満喫している方が多いですね。実践している人が多いということは、それだけ働きやすく暮らしやすい環境が整っているということ。すでに滞在している人に、どのように仕事をしているか、相談や情報交換もしやすいです。

    また、長期休暇中にトライするケースが多いかもしれませんが、学校生活がないと地元の人と接する機会が減ってしまいます。できれば、子どもは同世代と集団生活ができると良いですね」

    ちなみに、地方だと保育園の空きがあり、一時保育については前もって相談すれば入れることが多いそうです。学業の進捗にまつわる心配も少ないため、思い切って飛び込むならいいタイミングかもしれません。

    「地方でのリモートワークを体験して思ったのが、TPOに合わせて服を選ぶように、やりたいことに合わせて場所を選べると、もっと自由に生きていけそうだなということ。日本の正社員は雇用が安定していますが、働き方が窮屈になっている部分もあると感じます」

    特に日本人は「会社に守られているからしっかりお返ししないと」と、余りある責任感を背負い、自分のことは後回しにして、会社や家族のために働いている場合も多いのではないでしょうか。

    「やらなくちゃいけないと思っていることの90%以上は、“やった方がいいこと”で、きっとマストじゃないと思います。毎朝起きて、ご飯を作って、会社に行くだけでも素晴らしいこと。だから、あらゆる思い込みを捨てて、今すぐでなくてもいつかは叶えたい夢や、やりたいことを実現して欲しいですね」

    自分らしく生きる選択肢の一つに、地方でのリモートワークがあるかもしれません。今後、働き方改革がますます進んでいく中で、自由にやりたいことを叶えていけたら素敵ですね。

    <プロフィール>
    杉浦那緒子さん

    株式会社ヒトカラメディアに勤務時、都市と地方の2地域の学校に通うことができる制度である「デュアルスクール」事業に、第一号として参加。徳島県美波町に短期移住し、サテライトオフィスにて勤務。子どもは地元の小学校に通う生活を2016年から行なった。現在は、「agent bank」「back check」を展開する株式会社ROXXにてバックオフィスを担当。リモートワークをはじめとした子連れでの新しい働き方を日々模索している。

    取材・執筆/中山美里

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