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税率アップもこわくない!?子育て世帯に知ってほしい2019年「税制改正」のポイント


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    2019年度税制改正大綱が2018年12月14日に発表され、それに基づく今年度の税制がスタートしています。2019年10月より消費税率が10%に上がること以外にどのような変化があるのでしょうか。ポイントを整理していきましょう。

    今回の税制改正のねらいは?

    今回の税制改正は、子育て世帯のくらしに大きく関わる、車や家の税などに重きを置いています。つまり、消費税率引き上げ後に考えられる、買い控えによる景気冷え込みへの対策として、「消費税率が8%の時に購入しても、消費税率が10%にアップしたあとに購入してもそれほど大きな影響はありませんよ」ということをアピールした税制改正ともいえるでしょう。その中でも、子育て世帯に関係が深いと思われるポイントをいくつか紹介していきます。

    8%か10%か。マイホームは買い方や買うタイミングで税率が変わる!

    まず、マイホーム購入に関する税金について消費税率アップはどこに影響するのでしょうか?

    10%適用を受けるもの

    2019年10月以降引き渡しを受けた建物に関する消費税

    • 建物の購入価額
    • 不動産会社への仲介手数料 など

    事業者からの土地の取得についてはそもそも消費税の非課税項目なので影響がないため、マイホームの購入で消費税率アップの影響を受けるのは「建物の購入価額」や「不動産会社への仲介手数料」などです。「土地の購入価額」や住宅ローンを支払っていく時点で発生する「金融機関への利息」、あるいは登記にかかる「登録免許税」や契約書に貼付する「印紙代」などは、消費税法上、課税されない取引なので影響はありません。

    まずはご自身の購入パターンにあわせ、消費税率アップの影響を受けるものと受けないものを切り分けて考えることが必要でしょう。

    今回の税制改正では、消費税引き上げ後の景気冷え込み抑制のため、「このような場合には消費税率を8%のままとする」という取引パターンが発表されています。

    例)マイホーム(注文住宅に限る)購入時に、消費税率が8%になるパターン

    引き渡しが2019年10月以降であっても、2019年3月31日以前に契約を締結したマイホームの着工の場合(2020年末までの入居が条件)

    購入契約日と、引き渡し日、または、居住開始日がズレることがありますが、消費税法上の経過措置の中では、消費税率アップ予定日の半年前、つまり2019年4月1日を指定日と定め、2019年3月31日以前に契約を締結したマイホームの着工であれば、引き渡しが2019年10月1日以降であっても「消費税率は8%のままとする」とされています。

    税率アップ後は住宅ローン減税が拡充される!

    では、「10%適用物件」を購入したらどうなるのでしょうか。この場合は、消費税率アップと同時に拡充される予定の住宅ローン減税を活用しましょう。

    現行の「8%適用物件」における住宅ローン控除額は以下となります。

    住宅ローン控除額=年末の住宅ローン残高×1%×10年間

    仮に一般住宅で、返済開始後の10年間、毎年年末に4,000万円以上の住宅ローン残高がある場合、その残高を元に、住宅ローン控除額を計算します(各年の控除限度額は40万円)。住宅ローン控除額は主に所得税から控除することができ、節税効果が期待できます。

    4,000万円×1%×10年=400万円(消費税8%がかかる一般住宅の最大控除額

    ※控除額は、一般の住宅か長期優良住宅・低炭素住宅、その他、住宅ローンの額などの諸条件によって異なります

    一方、2019年の税制改正で発表された「10%適用物件」の住宅ローン控除は、上記の10年間から3年間延長して住宅ローン控除を継続する、というものです。延長した3年間の控除額は「建物の購入価額の2%の1/3」と、「年末の住宅ローン残高の1%」を比べて、いずれか低い方の金額となっています。

    従って、今、マイホーム購入を具体的に考えている場合、以下の点に注意して検討してみましょう。

    • 消費税率アップによる支払額の増加分 < 改正後の住宅ローン減税額
      ⇒「10%適用物件」でもいいのでは?
    • 消費税率アップによる支払額の増加分 > 改正後の住宅ローン減税額
      ⇒「8%適用物件」を積極的にリサーチしてみましょう!

    自動車関連の税金は上がるの?下がるの?

    マイホーム購入の他に、自動車購入に関して気になる方もいるのではないでしょうか。それでは、2019年税制改正における自動車関連の税金について、減税ポイントと増税ポイントをみてみましょう。

    1.減税ポイント

    消費税率が10%に引き上げられた後の新車購入から

    • 最大年間4,500円、自動車税を軽減する
    • 車の購入時に支払う自動車取得税を廃止する

    2.増税ポイント

    • 燃費に応じて課税する「環境性能割」を導入
    • 自動車重量税などエコカー減税についての適用要件が厳格化

    自動車購入のタイミングはどう考えればいい?

    消費税増税後の自動車に関する税金について、以下2つに切り分けてみましょう。

    • 取得時に支払う税金・・・自動車取得税、消費税・環境性能割が影響
    • 保有時に支払う税金・・・自動車税や自動車重量税が影響

    このうち自動車税や自動車重量税については、車歴が古くなると税額が高くなり、毎年のメンテナンス費用も含め出費がかさむことは避けられないので、それ以外の税金を考慮して検討してみましょう。

    • 購入を検討している自動車が
      廃止される自動車取得税 < 消費税率アップ&環境性能割の導入による支払額の増加分
      ⇒「増税前」の購入でもいいのでは?
    • 廃止される自動車取得税 > 消費税率アップ&環境性能割の導入による支払額の増加分
      ⇒「増税後」の購入でもいいのでは?

    ただ、「自動車も生活するためのツールのひとつ」と考えると、購入以外の悩みやパターンも考えられます。月々の高額な駐車料金に悩んでいるケースもあるでしょうし、カ―シェアをはじめ自動車を所有せずに活用するためのさまざまなサービスも出てきています。単に消費税率アップの前後、どちらに購入すればよいかというだけでなく、自動車を活用する頻度や距離など、税金以外も考慮し、自分たちのライフスタイルに合った選択をしましょう。

    子育て世帯にまつわるその他の注目税制は?

    上記のほか2019年税制改正で子育て世帯にまつわるものといえば、「未婚のひとり親に対する住民税について年収204万円まで非課税」とすることがあげられるでしょう。

    これについては従来より寡婦(寡夫)控除という規定がありました。ただし、そちらの規定は「夫や妻と死別し、若しくは夫や妻と離婚した後婚姻をしていない人(生死不明含む)」などで、いずれも「過去に夫(妻)と婚姻関係にあった」ことが前提とされていました。

    ※寡婦控除(扶養親族か生計を一にする子がいる人、または合計所得金額が500万円以下の人)一般の寡婦/27万円 特別の寡婦(一般の寡婦に該当かつ特別要件全てを満たすとき)/35万円 寡夫控除(合計所得金額が500万円以下で、生計を一にする子がいる人)/27万円

    しかしながら、子育てと就労の両立が迫られるシングルマザーが、経済上困窮しているという事実は「過去に既婚か、未婚かを問わないのではないか」という議論は以前からあったので、その一部が認められた、というのが今回の税制改正といえるでしょう。

    その他、「教育資金の一括贈与の非課税措置」や「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置」の期限は2019年3月31日までとされていましたが、2021年3月まで2年間延長されました。同時にこの措置を受けるための条件が一部変更されています。この制度はいずれも直系尊属である父母や祖父母などから、受贈者となる子や孫などに対して、教育や結婚・子育てに使途を限定した資金を一括贈与した場合に、贈与税が非課税となる制度です。

    以上、2019年税制改正のうち子育て世帯にまつわるものだけ駆け足でみてきました。

    しかしながら子育て中に限らず、個人ベースでいうと日本の税法は、稼いだら所得税や住民税が、使ったら消費税が、自動車を保有していれば自動車税や自動車重量税が、マイホームを保有していれば固定資産税が、お亡くなりになったあとにも相続税が……というように、生活全般に税金が関係しているのです。

    したがって「税金なんて面倒くさそう、ややこしそう」とあきらめずに、税の仕組みを詳しく知ることが生活力をあげることにつながると考えます。

    文:田中卓也(田中卓也税理士事務所 代表/税理士・CFP)

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