これが消費税10%のインパクト!あなたの家計は「増税後」にどう対処する?
年収500万円の世帯で、消費税納付額は年間5万円増加も
これまで2度延期された消費税の増税も、いよいよ2019年10月から実施されることが決まりました。消費税率が8%から10%にアップすることで、当然ですが家計の支出は増えます。もともと消費税がかからないものに「家賃・医療費・保険料・切手・はがき・土地」などがありますが、普段の生活に関わる商品やサービスの多くは消費税の課税対象となり、例えば年収500万円の世帯だと、増税により年間約5万円の支出増となりそうです(表1)。家族4人で有名テーマパークに行くと入場チケットが大人7,000円台、子ども4,000円台で合計2万数千円、昼食や夕食代、おみやげ代や交通費なども合計すると5万円くらいにはなるでしょうから、今回の増税によりそうしたお楽しみを1回我慢する必要がありそうです。
今回の増税では飲食料品(食品表示法に規定する食品)と、定期購読契約の週2回以上発行される新聞は「軽減税率」が適用され、税率は8%に据置きされます。しかし、酒類や外食、コンビニ等のイートイン、ケータリングなどに関しては10%となる予定です。税率が上がるのは仕方ないこととはいえ、この機会に自分や家族の浪費癖を見直すなど、増税や物価上昇の影響を最低限にできるような家計を目指しましょう。
増税と同時に子育て支援が充実。でも全体の負担は増える?減る?
ところで今回の消費税増税により、子育て支援策が充実する可能性があることをご存じでしょうか。これは「社会保障と税の一体改革」の考え方のもと、消費税率の引き上げ分は全額を社会保障の充実と安定化に使うとされているからで、その具体的な使いみちが「経済財政運営と改革の基本方針2018」(2018年6月に閣議決定)に示されています。
この中で「人づくり革命」として子育て世帯に大きく影響してくる政策の一例として以下のようなものがあります。
(1)幼児教育の無償化…3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化する。0歳から2歳児については、住民税非課税世帯(年収270万円未満)を対象として無償化を進める
(2)真に支援が必要な、所得が低い家庭の子供たちに限り、大学などの高等教育無償化を実現する
(3)年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現する
(4)待機児童問題を解消し、女性就業率を高める「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を進める
(5)より長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充する
実施時期については、(1)の幼児教育無償化は消費税増税の2019年10月の実施を目指すとだけ明記してあり、その他に関しては具体的な実施時期は明記されていませんが、実施後はどの程度の恩恵が受けられるのでしょうか。
例えば幼稚園保育料の無償化上限額は月額2万5,700円となっています(認可外保育施設は月額3万7,000円まで、同施設で0歳から2歳児については月額4万2,000円まで)。一部の私立幼稚園では保育料がこの金額を超えることもあるでしょう。しかし、送迎バス代や給食費、制服代などは別途支払いが必要になるとしても、毎月2万5,700円の負担が減った分をすべて貯蓄した場合、年間約31万円、3年間で約92万円と、貯蓄額を大きく増やすことができます。
こうして見ると、今回の子育て支援策はまだ小さな子どものいる世帯や所得が低い世帯に対しての対策に限られるようです。一方、(1)や(2)の条件に当てはまらない世帯には待機児童の解消、職場復帰や転職を可能にするようなリカレント教育の拡充といった「働きやすい社会」の環境作りで対応しているといえるでしょう。一部の家庭には増税の負担を軽減する子育て支援があるものの、差し引きゼロまたはプラスになるようなケースは少ないと考えられます。
家計を守ると同時に、将来を考えて資産運用で増やす姿勢も大事
増税と聞くと、節約などで支出を抑えることばかりに目が行きがちですが、今後もインフレ傾向や更なる増税が続く可能性を考えると、ずっと節約だけで対応するのは非現実的でしょう。前述の幼児教育の無償化、児童手当、高校授業料の無償化なども恩恵を受けられる時期が限られますし、教育費の準備、マイホーム取得、老後資金という「人生の三大資金」をカバーするにはほど遠いのが現実です。
これからの人生に必要なお金を準備するには、「資産形成」のできる家計作りがポイントになってきます。そのポイントとは以下に紹介する「家計の無駄を見つける」「収入を増やす」「お金を貯める」「お金を増やす」で、これらをバランスよく稼働させ、自分と家族が幸せに豊かに暮らしていくために、トータルで「資産形成」に取り組む必要があります。
(1)家計の無駄を見つける
節約だけでは……と言いましたが、やはり家計をやりくりする上での基本です。家計簿をつけているなら1年間の支出を確認し、優先度の高いものはどれで、どの項目ならやりくりできるかを家族で話し合いましょう。それぞれのお小遣いを減らすのは心が虚しくならないためにも最終手段とし、家族全員でできることから取り組みましょう。
(2)収入を増やす
消費税の2%増に対して収入を2%増やす程度では、税金や社会保険料等がひかれるため、増税額をカバーできないことも懸念されます。今後も増える可能性のある社会保険料の負担など考えると、できれば年収5%から10%増くらいを目指したいものです。家事や子育てを夫婦でうまく分担するなどの工夫でフルタイムで働いたり、アルバイトや副業などでお金の入口を増やすことを考えたりと、一過性に終わらない収入増を目指しましょう。なお、副業は許可制や届出制などの規定を設けている会社もあります。勤務先の就業規則などで確認してください。
(3)お金を貯める
お金を貯めるには、貯めることを習慣化し、毎月こつこつ続けていくのが一番です。そのためには「お金が入ったらまず貯蓄をして、残りを生活費等に充てる」という先取り貯蓄をすること。そして預貯金だけでなく、各種の保険やお金を積極的に増やす目的の金融商品などを組み合わせて、「貯まる仕組み」を作ることです。
預貯金だけで人生の三大資金を貯めるのは、現在の低金利ではなかなか難しいでしょう。また口座から容易に引き出せるため、教育費や老後資金の目的で貯めていたお金も、生活費の補充や大きな買い物をするときの資金として使ってしまいがち。生活費の半年分の貯蓄ができたら、それ以上は投資などの資金として「増やす」ことに利用しましょう。
(4)お金を増やす
投資の資金といっても、いきなり大きな元手を用意する必要はありません。ここまで紹介したように「家計の無駄を見つける→収入を増やす→お金を貯める」という工夫で、毎月少しずつ余裕資金が生まれているのではないでしょうか。そうしたお金の一部を使って、こつこつと投資を続けていく「積立投資」という方法を活用してみましょう。これは名前の通り、定期的に少しずつ積立方式で投資信託などを購入していくもの。そして、このような少額からの長期・積立・分散投資を支援するため、2018年1月から金融庁の政策の一環として「つみたてNISA」という制度も始まっています。
大きな特徴は、つみたてNISAの口座を使って得た利益には税金がかからない(非課税)という点で、非課税期間は20年と長期にわたります。通常は預貯金の利息も所定の税金が源泉徴収されていますから、利益が非課税になるのはお金を増やすのにとても有利な条件といえます。また、つみたてNISAの口座で投資できるのは「長期・積立・分散投資に適した金融商品」と金融庁が限定しているため、投資が初めての人にも利用しやすい点も特徴です。その商品とは投資信託やETF(上場投資信託)で、両方を扱っている証券会社は大和証券などごく一部となっています。
もちろん投資なので元本保証ではありませんが、長期で運用すると、利益を投資に回してそれが利益を生むといった複利効果が大きくなることも期待できます。たとえ月々の積立額は少なくても、長期運用によって大きな成果が得られる可能性もあるのです。
*複利効果について、詳しくは こちら
「家計」は自分と家族が生きていくために必要なお金を用意することです。消費税増税や景気動向を不安に思うより、多少の変化にも耐えられる骨太の家計を作り上げることが大切なのです。
文:ファイナンシャル・プランナー 二宮清子
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