心理学から学ぶ!お金が集まる家族のルール
家族がいると、それだけ家から出ていくお金は多いもの。家計をやりくりするには、自分だけ頑張るのではなく、家族の協力も必要です。ただ、家族の心を動かすのは、難しいものです。
自然とお金が増えていく家庭にするために、まず自分は何を心がければよいのでしょうか?
また、家族の心にどう働きかけると良いのでしょうか?
心理学の専門家であり、家族の問題にも詳しい、心理カウンセラーの小高千枝さんにお話を伺いました。
知っておきたい!自分や家族の“ムダ遣い”を止めるには?
衝動買い・散財の原因は何?心のコントロール法
お金が貯まらない原因の1つに、衝動買いなどで散財してしまうことが挙げられます。散財をしてしまう人には、何か心理学的な傾向があるのでしょうか。
「お金を使いすぎる人は、自分の心を満たしてくれるものを常に探していて、それに依存する傾向があります。性格的には、自尊心が低い、自己肯定力が弱い、劣等感が強い人。そうした性格傾向から来るマイナスの感情を、例えば購買意欲に転化して、心の隙間を埋めようとするんです。物を持てば、人からの評価も高まるような気がして、本来の自尊心の低さも見て見ぬふりができるからです。ただ、人は一度幸福感や充実感を得ても、それに慣れてしまうと、その感情が薄れます。そして“もっともっと”と欲求が高まり、また買い物をしてしまう。これを『ヘドニックトレッドミル現象』といいます。こういう状態になると買い物依存傾向が強いとも言えます」(小高さん・以下同)
買い物依存、とまではいかなくても、しょっちゅう無駄遣いをして後悔する、という人は多いのではないでしょうか。そういう時の自分の心や体のありようを、一度振り返ってほしいと小高さんは言います。
「衝動買いが多い、いつも同じような物を買ってしまう、という人は、自分に何か不安定な要素がある時に、買い物を逃げ場にしていないでしょうか。例えば、体が疲れているとき、仕事がうまくいっていないとき、人間関係がこじれているとき……など。まずはそうした傾向やサインに気づくことが、散財を防ぐ第一歩だと思います」
衝動買いの原因の一つが、心身の不安定さ。ただ、それを自分自身でコントロールするのは難しいものです。小高さんは、同じような悩みを持つクライエントには、「ご自身を箱庭の中に置いてみて、外からそれを眺めるような気持ちになってください」と伝えるそうです。
「箱庭を例に出すのは、その方が置かれている環境や人間関係を、一歩引いて見ていただくようにするため。気持ちを不安定にしている原因は何か、冷静に受け止めやすくなるんです。同時に『現在・過去・未来』も整理します。過去に同じような失敗をしていないか思い出してみると、気持ちをざわつかせる傾向も分かってきます。また、未来にご自身がどうなりたいかを想定し、そのために今、どう行動したらいいかも考えてもらいます。このように、何か起こったとき、自分を客観視し落ち着いて考えられるようになれば、心のコントロールもしやすくなります。衝動的にお金を使ってしまうという人は、こうした方法で、一度ご自身を見つめ直してみてはいかがでしょうか」
家族の散財とは、どう向き合う?
自分はセルフコントロールができるようになっても、パートナーや子供が散財をする場合、対処法はあるのでしょうか。
「まず本人に、お金のコントロールができていないことを自覚してもらうこと。その上で、お金に対する意識を高めてもらうことです。子供なら、お金を使うべきところとそうでないところを、きちんと説明して理解してもらう。最近は電子マネーが普及していますが、子供が使う場合はきちんと明細を出して使い道を確認することも大切です。
夫(妻)なら、過去に同じような散財をしていないか振り返る。過去や現在の散財により、自分たちの経済状況がどうなるかを、将来まで時系列的に話し合う。お金の問題は、家族や夫婦間で『可視化(見える化)』することが大切です」
(まとめ)
・買い物で自分の心の隙間を埋めていないか、考えてみる
・衝動買いをするとき、自分がどんな状態かの傾向を知る
・散財するパートナーや子供には、まずはお金に対する自覚を促す
家族でお金を貯めるには『可視化』と『共感』が必要
家族で協力してお金をしっかり貯めていきたい場合、どういう心理を利用すればうまくいくのでしょうか。「お金を貯めよう」と声がけするだけでは、実践は難しそうです。
まずは夫婦で“ゴール”を決めることから
「お金を貯めた将来に何をしたいのか、まずは明確に目標を定めましょう。結婚式の資金、マイホーム、子供の教育費、老後の資金など何でもいいです。また、そのお金を貯めることが、自分たちの幸せに繋がるという共通認識を芽生えさせ『共感』を得ることも大事です。長期的な目標を大きなゴールとしたら、その前に、1カ月後とか半年後など、小さなサブゴールも設けましょう。少しずつでも達成感を得ることで続けるモチベーションにもなりますし、その都度、将来やお金のことを話し合うきっかけになります」
頑張ってお金を貯めようと思っても、家族が理解してくれず、無計画にお金を使ってしまう場合もあります。
「そういうとき腹は立つでしょうが、ただ攻めるだけなのはNG。例えば、高級車を買ってしまった夫は、『皆で楽しく出かけたい』など、彼なりに家族の幸せを考えてのことかもしれないので、その点は一度受け止めてあげましょう。特に男の人は、ガミガミと言うだけでは、自尊心を傷つけ、話も聞いてもらえなくなります。よく、喧嘩をすると黙り込んでしまう男性がいますが、それは話を聞いているのではなく、感情を抑圧し自分の殻に閉じこもっているだけ。『家族の幸せのために頑張ろう、しっかり働いて稼ごう』という気持ちを上手く引き出しつつ、家庭の経済状況や、今後、お金を貯める計画を丁寧に伝えるようにしましょう」
「節約して!」はNG?楽しい工夫が大切
お金を貯めるとなると、ついてまわるのは“節約”。節約に協力してもらいやすくする心理的アプローチも、小高さんに教えていただきました。
「節約も、完璧を求めると苦しくなり続きません。楽しみながらできるものを考えるといいと思います。例えば、ご自身がお料理好きなら買い物の回数を減らして、冷蔵庫にあるものだけで新メニューを作る工夫をするとか。また、家族で1円も使わずに遊べる場所を探して、出かけてみるとか。ゲーム感覚で楽しめる節約なら、家族の『共感性』が高まって協力してもらいやすくなり、絆も深まります。逆に『節約しなさい』のように『~しなさい』と一方的に強制されると『心理的リアクタンス』といって、反発心が芽生えモチベーションが低下し、やりたくなくなってしまいます」
(まとめ)
・家族でお金を貯める目的と目標金額を明確に
・お金を貯めることに『共感』してもらう
・辛い節約、強制は続かない。楽しく節約できる工夫を
家族のためにも、投資でお金を増やしたい!将来の幸せとリスクのために考えたい問題
貯めるから一歩進んで、投資でお金を増やしたい。そんなとき、まず心がけること、知っておくことはあるのでしょうか。
初めに考えたい、「なぜお金を増やしたいのか?」ということ
「投資をはじめる理由として、やみくもにお金が欲しい・増やしたいではなく、自分はどのくらいのお金があれば幸せで、将来のためにどれくらい準備をしておきたいのか、まずはよく考えてみましょう。その上で、どのように資産を増やしていくか、どんな投資をしていくべきか考える。できるだけ長期間のスパンで考えると見通しが立ちやすいでしょう。そしてそのプランを、パートナーと共有することも大切です」
心がけや目標が定まったら、自分に合った投資を見つけたいものですが、心理学的の観点から見た注意点やコツはあるのでしょうか?
慎重に、でも怖がりすぎずに。自分をみつめて選択する
「投資を始める理由のうち失敗しやすいものは、周囲の噂や流行っているからという理由で、よく知りもせず短期間に大金をつぎ込んでしまうパターン。他人事だと思うかもしれませんが、意外といるんです。しかも、その投資について後で不都合なことを知っても、私たち人間はつい『自分だけは損しない』と思いがち。当たり前ですが、投資をする時には事前にしっかりと知識を得ることが必須です」
調べもせず飛びつくのは危険。でも、「猛勉強しないと手を出せない」と思い込むと、投資から遠ざかってしまいます。
「保守的な人が多い日本では、“投資”というと、資産を持っていかれるような気分になって、頑なに拒否する人も少なくありません。でも、それも考えもの。将来にはリスクもあります。10年後20年後に、今と同じように働けているかどうかはわかりませんし、家族のことで思いもかけない出費があるかもしれない。人は『自分だけにはトラブルは起こらない』と考えがちですが、そんなことはありません。また『誰かに養ってもらえばいい』と考えている方がいるとすれば、今の時代は危険です。少しでもお金を増やす努力はしたほうがいいでしょうね」
確かに、銀行にお金を預けているだけでは増えないし、収入を増やすのも簡単ではありません。
「自分や家族の生活スタイル、将来の目標などをよく見つめた上で探せば、きっと自分に合う方法が見つかると思います。勉強するつもりで、無理のない範囲の金額から試してみるのも手だと思います」
(まとめ)
・将来、どのくらいお金を準備するか、家族で話し合う
・将来起こるリスクも考え、お金を増やす心がけをすべき
・流行に飛びつかず、慎重になりすぎず、自分に合う投資を
ついつい散財してしまう心のありようから、お金を貯めたり増やしたりするための心がけまで。お金に関する様々な場面で、心理学的なアプローチは利用できそうです。自分だけでなく家族のためにも、お金にまつわる心理学を理解しておきたいですね。
(先生プロフィール)
小高千枝
メンタルヘルスケア&マネジメントサロン代表
サロンでの臨床をはじめ、企業顧問として従事。心理学、メンタルヘルスケア・マネジメントの必要性や大切さを伝える。明確な心理分析やメンタルトレーニングは多くの女性をはじめ、著名人からの支持もあつい。
日本テレビ「ナカイの窓」などマスコミ出演多数。
主婦と生活社「心理カウンセラーが教える 本当の自分に目覚める体癖論」など著書多数。
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